新著『物語と画作りで人を魅了する 最高の一枚を写し出す写真術』の序章を全文公開します!

1月11日発売の新著『物語と画作りで人を魅了する 最高の一枚を写し出す写真術』の冒頭の序章を公開します。noteは、文章を読んでくれる方が多いと思って、一番文字数の多い、本の一番根幹にあたる前説部分を公開することにしました。

発売後にももう一度、本論のどこかのチャプターを公開しますが、その前にぜひともこの「序章」を読んでみてください。「写真」における「物語」の定位を目指して書いた文章で、この二年ほど考えてきたことをできるだけ短くまとめたものです。そして「おっ、なんか面白いぞ」と思ってくださった方がいたら、ぜひぜひ下記リンクよりご予約お願いします!

ではここから、序章の全文公開です!

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あなただけの「物語」を伝えよう

「ストーリーを感じる写真」というものがあります。 しかし、ここでいう「物語」は、単純なストーリーのことではありません。 写真を撮った人を取り巻く様々な物事が、網の目のように絡まって、 大きな流れとして感じられる、そんな壮大なバックグラウンドのことを「物語」と定義しています。本書を読み進む上での基礎となるので、 じっくりと読み進んでください。

こ の 本 は 、自 分 の 写 真 に
「 物 語 」を 宿 す た め の 本 で す。

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はじめにお伝えしたいこと。 
この本の「物語」とは何か。

 最初にいちばん大事なことをお伝えしておきたいと思います。 本書で言う「物語」とは、「ストーリー」ということではありません。もちろん「ストーリーを感じさせる写真」もまた「物語」の一端を成すのですが、そういう個別のストー リーのことではありません。この本の「物語」とは、写真家がある写真を撮ったとき、 その写真に至ったさまざまな軌跡を束ねた、1本の太い芯のようなものです。ときに「一貫性」とか、「テーマ」と呼ばれます。そんな風に考えるのは、僕が文学研究をしてきた人間だからです。文学研究者が皆そうだとは言いませんが、概ね僕が知っている文学研究の人々は、世界を「物語の束」で捉えようとする人が多く、僕もまたその典型です。つまりこの本は、文字ばかりの世界を生きてきた写真家が、写真を物語的に捉えてみようという試みです。こうしたものの見方が、全ての写真を撮る人にとって、 自分の写真の「芯」を見つける一助となればと思います。

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写真技術の解説本なら、
達人の本を読むことをおすすめします。


 普通の技術解説本なら、今や世の中には多くの素晴らしい本があります。技術を学ぶなら、そういう本を読んでいただくほうがいいと思っています。写真家としての自己評価は、僕はせいぜい「中の下」か「下の上」くらい。世間には本当にすごい技術を持っている人たちがいて、その人達の技術本は、もう「文学」の領域にあると思っています。僕がそのような本を書ければ最高だったのですが、残念ながら僕の腕ではそのような本は作れません。LightroomもPhotoshopもある程度しか使えないし、 カメラのこともまだまだわからないことが多い。「ではこの本で何をするつもり?」と思われるでしょう。ひと言でまとめるなら、普通はあまりにも当たり前すぎて多くの人が気にもせずに通り過ぎていることに、改めて足を止めてみる、ということに尽きます。それが「物語」です。

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世界は物語で溢れすぎているから、 
撮るときに意識をしません。

 ではなぜ、普段は「物語」に気づかないか。その理由は、難しかったり、見えにくいからではなく、逆なんです。世界は「物語」に溢れすぎている。大小様々な物語を受け取りながら、僕らは日々を生きています。心臓が酸素を必要とするように、どんな状況でも、心は何らかの「物語」を必要としています。しかし「酸素」のことを意識しないように、「物語」のことを普段は意識しません。そして写真もまた、世界の中に流れる大きな大きな物語を構成する一部なのですが、そのことを意識して撮っている人はほとんどいないように感じています。なぜなら、そんなものを意識しなくても、写真は撮れるから。ある程度の光を読む経験、構図を作る意識、現像で仕上げる技術があれば、写真は作品として完成します。でも、少し足をとめて、その「物語」を覗くことで、もしかしたら写真世界はもっと豊かになるかもしれない。本書が意図しているのは、「写真の世界」を、より広く、より楽しく、よりいろんな形で楽しみ、 そして自分の作品世界を広げるための「異なる視点」を提供することです。

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「よい物語」をもつものは
あらゆる分野で人の心をつかむ

 一見「物語」なんてものとは無縁に見える政治や経済、経営などにも、実は「物語」 があります。この「物語」とは「情報の網の目」のようなものと考えてください。様々な情報が絡み合って、それが気持ちよく流れている状態が「よい物語」です。たとえば巧みな政治家や、何世代も続く会社の経営者などは、この「よい物語」を上手く作り上げて人々の心をつかんでいます。いずれも個々の専門的な分野は技術的でとても複雑ですが、それらを統括して誰もが共有できる「物語」にすることで、「全体」として回り始めます。外から見ている人たちの目に見える部分は、その「全体像」だけ、 つまりは「物語」だけが見える。逆に言えば、対象を深く知り、内部に深く入ってしまうと目に見えづらくなりがちです。ときに大学の研究者が、自分の専門以外のことに対して驚くほどに無知だったりすることがありますが、それは研究者はあまりにも深いところに入り込んでしまいがちなので、一番見えやすいところが見えにくくなってしまうことに起因します。

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写真に備わった「物語」を
読み解いていこう。

 そう、写真もそうなんです。1枚の写真は、それぞれの技術によって成り立っています。光の読み方、構図の切り取り方から始まり、レタッチにおける各数値の意味合いや、適正の配分、現在の流行や新しい手法まで、固有の要素があります。ときに写真家は、それらの「技術のみ」に目を注いでしまいがちです。しかし1枚の写真が、 強力な力を持って人々を揺り動かす作品になるとき、そこには必ず「物語」が備わっています。この本は、写真というものを一連の「情報の網の目」=「物語」として考え、 その流れを1つ1つのケーススタディとして見ることで、新しい物語=作品を生む手助けとしていただくための本です。1枚の写真が世界的に注目されるとき、その写真は撮影した写真家と、その写真家が生きた世界、社会、文化、思想のすべてが注ぎ込まれたものとして存在します。そんな複合的な写真の成り立ちを、本書では「物語」と呼びます。そう、大切なのは、写真を「読み解く」ことなのです。

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物語を読む目を培うには
写真をたくさん見ること。

 多くの写真家に会って気づいたことがあります。写真が上手い人の大半(全員と は言わないけれど)は、自分の写真に対して、その人固有の「物語」があるということです。ときにそれは「言葉」でさえない直感的なものだけれど、その「物語」があるために写真全体に一貫性が与えられます。つまり、ただの「写真を上手に撮る人」から「写真家」へと至るとき、その写真は「物語」を宿すものになるということです。 逆に言えば、そういう「物語」を読む目こそが、「将来の写真家」を培うのだと思っています。それは常々言われていることで、多くの写真家が口をそろえて言うのは、「できるだけたくさんの写真を見たほうがいい」ということ。僕も写真を始めた頃は大量の写真を見ました。ただ、その「写真を見る経験」は、当時はあまりにも大雑把でした。 いい写真と悪い写真、よくできたものとそれほどではないものがごたまぜで、その優劣がわからないまま、ただ大量に見ていました。決して効率がよいとは言えません。 それが現在は劇的に状況が変わりました。Twitterが登場し、Instagramが写真世界のあり方を変え、「よい写真」「ウケる写真」というものが、すごい勢いで集積されました。 同時に「撮り方」や「撮る場所」もまた、情報共有されるようになりました。

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「上手い写真」から
「自分だけの写真」へ。

 そういう世界になり、若い人がまたたく間に写真が上手くなる時代になっています。 ただ、「上手い写真を撮る」から「すごい写真を撮る」の間には、未だにまだ距離があるように感じています。1年に数人、「この人はすごい」と思えるような新しい写真家が出現しますが、やはり「数人」から「十数人」というところです。ここまで「上手い写真」が溢れているにもかかわらず、です。そしてその理由こそが「物語」に気づく人が少ないからではないかと思っています。 これまで、その部分に着目した本はあまりありませんでした。気づいてはいても、それが一体何なのか意識的に解説した本もなかったように思います。幸い筆者は、「文学研究者」であり、「言語」と「物語」を解析し、解釈することに慣れています。物語の成り立ちを見ていくことで、「上手い写真」から「自分だけの写真」へと転換するきっかけを作りたいと思い、本書をまとめました。具体的には、写真の物語の「読み方」を示しながら、それを自分の写真を「物語る」ときのケーススタディとして役立ててほしいのです。そのため、この本では「物語の成立の仕方」、つまり写真を撮るまでのプロセスを大事にしていきます。

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ただの写真を撮る人から、
表現者になるための道を歩きましょう。

 本書では、ときにはテーマであったり、個人的な思いであったり、色であったり構図であったり、その写真を成立させている中心の要素が一体何なのかを、できる限り言葉で伝えていきます。たとえば現像がその写真が成立するうえでもっとも大切な要素なら、現像の技術を大きくピックアップしていきます。技術をクローズアップすることで、各写真に必要な細部が、物語を駆動させる鍵として機能していることが明らかになるはずです。つまりこの本の目的は、「自分の物語」を意識することで、「表現者」としての写真家になる道を踏み分け、「獣道」を作ることにあります。まだあまり多くの人が歩いていない道だけに、整備された高速道路を作るところまでには至らないと思いますが、少なくともかつてここを歩いた人たちの足跡を、辿っていくことくらいはできるのではないかと思っています。ぜひ一緒に歩いてみてください。

(イラスト:のがみもゆこ@mogaminoyuko

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以上、新刊の序文でした!

こんなややこしくて写真にほとんど関係ない序文が書かれた写真技術本はこれまでなかったはずです。ここに示したロードマップを元にして、第二章からは「ケーススタディ」が始まります。ぐっと具体的な話になるので、写真技術系のお話をご希望の方にも満足いただけるのではないかなと思っています。

最後に、写真系の本としてはあまり前例のない発売前の内容公開に対して快くオーケーを出してくださった出版元のインプレスの皆さんには心から感謝を。ほぼ丸々一年、僕のわがままに付き合ってくださってありがとうございました。


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