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ジャーナリスト、翻訳家。大学在学中から海外メディアを中心に活動開始。大学卒業後、通信社…

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ジャーナリスト、翻訳家。大学在学中から海外メディアを中心に活動開始。大学卒業後、通信社とテレビ局を経てフリーに。オリンピックの現地取材の他、政治家、ノーベル賞受賞者、社会活動家、経営者などにインタビュー。ライフワークとして女性への暴力、紛争下での性暴力の問題に取り組む。一児の母。

最近の記事

老家

朝の公園で、どこからか童謡の「ふるさと」が聞こえてきた。 コーラスの先には、ジャージを着た10人ほどの女性たちがいて、凛とした歌声が少しひんやりとした空気の中を漂っていく。木々の間から陽が差し込む。 歌声が途絶えると、休むことなく、 女性たちのおしゃべりが始まった。 異国の響きに一瞬混乱した後、 その美しさが胸を突き抜けた。

    • アフガニスタン初の女性オリンピアン、フリバ・ラザイーは闘い続ける

      #私の作品紹介

      • 一期一会について

        何を書くべきか、どう書くべきか悩んでなかなか筆が進まなかったのですが、私の大切な人について書こうと思います。 2019年の2月、私はちょうど2カ月になったばかりの娘を抱いて新宿のレス トランにいました。生後間もなくまだ首もすわっていない娘を連れて、おそ らく乳児にとって最適な環境ではない場所に外出することは母としては良く ない決断だったかもしれません。ただ、どうしても彼女に会いたくて、柔ら かくふわふわとした娘にしがみつくようにしてレストランに向かったのを覚 えています。

        • 未来に悲観的だった私に娘が教えてくれたこと

          2016年11月、私はテレビ局のニュースルームにいた。アメリカ大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利を伝える速報原稿を送り出し、アドレナリンがまだ残る頭の中で、「トランプ大統領」というつい数時間前までは想像もしていなかった言葉をゆっくりと反芻していた。繰り返すごとにぼんやりとしていた言葉の輪郭がはっきりしていく。大学生活を過ごし、愛着のあったアメリカ。自由と寛容性がある国だと思っていたけれど、変わってしまったのだろうか。いや、そもそも私の洞察力が足りなかったのか。 「もう世

          晴れ、時々育児ノイローゼ

          育児をしていると、ダークサイドに落ちることがよくある。 きっかけはなかなかおっぱいが出ないことだったり、何をしても泣き続ける娘だったり、せっかく作った離乳食が入ったお椀が娘に投げられて飛んでいく様子がスローモーションに見えた瞬間だったり。ただ単に、生理前の鬱が強めに出てしまって、娘の世話が思うようにできなくて、申し訳なくて涙が止まらない時もある。 布団の中に隠れて、おそるおそる「育児ノイローゼ」という言葉を、インターネットで検索する。自分がどういう状態なのか知りたいけれど

          晴れ、時々育児ノイローゼ

          ケツ力の暴走

          出産後、どこまでも伸びるレギンスばかりはいている。 でも、今日は陽気な太陽と夏の気配に誘われて、一回り大きくなったおしりをタイトなジーンズにねじ込んでみた。 そして、おしりのポケットにスマホを押し込んで、出掛けたのである。 それが惨劇の始まりとは知らずに。 ボリュームとともに圧力を増した私のおしりは、知らぬ間に大暴れした。 まず、Spotifyでこっそり聞いていた私のお気に入りリストを世の中に大音量で発表。 次に、仕事関係者もいるFacebookでnoteの投稿を「あ

          ケツ力の暴走

          明るい闇との付き合い方

          この記事を読んでから、私はぼんやりと考え続けている。 どうしたら、自分を今まで苦しめ続けてきて、最後には心から愛していたものさえも奪っていくような奴を「いい相棒」と呼べるのだろうか。 もちろん、安美錦関が体だけでなく、心も長年鍛えてきたからこその言葉で、私のような凡人がこの境地に至るまでには、あと三回は人生の修行を積まねばならなさそうだ。 でも、少しだけ見習うことができるなら、私もこういう風に付き合っていけるようになりたい、という気持ちをこの言葉は与えてくれた。 私には

          明るい闇との付き合い方

          眠れない夜は

          ある金曜日、私は教習所でハンドルを握っていた。 「はい、ハンドルは少しだけ回して。急に回す必要はないですよ。曲がったら、はい、遠くを見ましょう。」 20キロにも満たないスピードでノロノロと進む。ぎこちなくハンドルを回す。 「はい、急ブレーキ、急ハンドルは必要ないですからね。遠くを見ましょう。」 あと数時間で夜が来る。大嫌いだった金曜日の夜が。 やっと眠りに落ちた娘が目を覚まさないように、ゆっくりとソファに腰を下ろして、身を固くする。 静かな薄暗い部屋で、聞こえるのは娘の寝息

          眠れない夜は

          明日の晩御飯

          「明日の晩御飯、何がいい?」ときくと、 「うーん、お刺身定食」と返されるのは、今週2回目。 うーん、複雑。

          明日の晩御飯

          テロリストのlullaby

          2016年、私はブラジルのリオデジャネイロにいた。オリンピックを取材するためだ。 オリンピック取材は競技以外もテーマになる。リオの場合は、治安がオリンピックに与える影響やジカ熱の流行など。そして、どのオリンピックにもあてはまることだけれど、テロへの警戒。 ある日、私は競技会場にいた。そして、テロリストに出会った。 すらりと背の高いそのテロリストは、オリンピック関係者の公式ユニホームを着ていた。でも、私はすぐに彼の正体を見抜いた。 だって、 書いてあったから。 ふくらは

          テロリストのlullaby

          離乳食でのラーニング

          女王(娘)の離乳食が始まって、およそ2カ月。食べられるものが少しずつ増えてきた。ここで一度、これまでに学んだことをまとめておこう。 ① 世の中のものは大概なんでもすりつぶせる 今まで生きてきて、すりつぶすものなんて、大根かとろろくらい。なのに、離乳食は、基本何でもすべてすりつぶす、粉々にする、ドロドロにする。容赦なきクラッシャーの気分。おかゆ、鯛、ヒラメ、しらす、ブロッコリー、白菜、にんじん。。。なんという儚さよ。 ② 好き嫌いは一口目からはっきり 女王はかぼちゃ、白菜が

          離乳食でのラーニング

          一人旅はもうできないけれど

          一人旅が好きだった。 身軽に見たことがない場所に旅に出る。ハプニングもむしろ大歓迎。そんな旅が好きだった。 それが今や、私の旅の最少催行人員は二人。 小さなあなたとの旅はいつも大荷物。大きなリュックの中には、おむつにミルクにおくるみ。暑い時のために日傘、雨が降った時のために傘。いつも笑顔でいてほしいからお気に入りのおもちゃも忘れずに。 パッセンジャーベルトをぎゅっと締めて、小さなあなたの体が私のお腹にピタッとくっつく。それから、ぱんぱんに膨らんだリュックを背負って、あ

          一人旅はもうできないけれど

          社会人1年目の私へ

          社会人1年目の私。就職おめでとう。 やっと大好きな仕事をすることができるようになって、毎日が楽しくてしょうがないでしょ?浮かれているし、少し調子に乗っているかもしれない。 そんなあなたに少し未来の話をさせてください。 今後9年間の間に、大好きな仕事はあなたにたくさんの経験をくれます。 良いものも、悪いものも。たくさんの笑顔と、それと同じぐらいの涙も。 そして、結論から言ってしまうと、9年後、あなたはその大好きな仕事を失っています。 大好きな仕事だから、あなたは頑張りまし

          社会人1年目の私へ

          ヨーグルトのはなし。

          我が家のヨーグルトは食卓に並ばない。 冷蔵庫を開けて、ヨーグルトを取り出す。 蓋を歯で噛んで、ぺりっとはがしながら、右手で引き出しからスプーンを引っ張り出す。 キッチンから歩きながらパクパクと食べ、リビングに着くころにはもう食べきっている。 リビングでは、寝返りを覚えたばかりの娘がプレイマットの端で転がりそうになっている。 さっき、真ん中に置いたばかりなのに。 急いでキッチンに戻り、スプーンをシンクに、ヨーグルトのカップをごみ箱へ。 そのまま娘のもとへ戻り、抱っこする。 「

          ヨーグルトのはなし。

          遅れてやってきた「保育園落ちた日本死ね」③

          臨月に入りました。生まれてくる赤ちゃんを「保育園にどうやって入れようか」という悩みは、結局、0歳クラスの4月からの入園に挑戦するという選択は見送ることにしました。 すでに子育てをしている友人や、子供を育てながらバリバリ働いている先輩、母や夫など家族の意見を聞いたり、インターネットでいろいろな方々がブログなどでシェアされている体験談を参考にしながら、検討していました。悩みましたが、結局、この結論にたどりついたのは、この理由が大きいと思います。 「どこでも(どんな保育園でも)

          遅れてやってきた「保育園落ちた日本死ね」③

          遅れてやってきた「保育園落ちた日本死ね」②

          ※①はこちらから のんきに構えていた妊婦を襲った「保育園どうする?」問題。 とりあえず、インターネットでいろいろ検索することから始めてみた。 そしたら、自治体の公式なものから、先輩のママさん方の魂の叫びなど情報がわんさかでてきた。 今まで、「保育園」なんて検索したことなかったから知らなかったけど、これはもう一大事である。 こんなにもたくさんの人が関心を持っていたことなのに、私は妊娠するまで全く無関心であったことを反省した。 いろいろ調べてみた結果、一番印象に残ったこと。

          遅れてやってきた「保育園落ちた日本死ね」②