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4月22日(月)~4月26日(金)の見通し


■先週の振り返り

●経済の定点観測

先週も米国にて様々な経済指標の発表がありました。

まず15日(月)に発表された3月分の小売売上高では強い結果となり、前月比にて+0.7% (予想+0.4%)、コア分野では同+1.1% (予想+0.5%) の結果が出たことにより株式市場は下で反応しました。

米国のインフレを間接的に表す10年債利回りも発表後から更なる上昇基調に転じることで株式の上値を重くしました。

売上高の中身を見ると、直近の原油高を反映してガソリンスタンドが+2.1%、建築資材及び園芸製品は+0.7%など、必需品寄りの品目がプラスとなる一方、自動車やスポーツ用品・趣味・楽器・書籍などのぜいたく品がそれぞれ-0.7%、-1.8%となるなど、足元の消費支出は堅調ながらも高額なぜいたく品を敬遠する傾向にあることが判明しました。

米国 小売売上高 (3月)
青枠は先月比 (%)
消費は堅調ながらも、ぜいたく品の勢いが鈍る

価格変動の激しい分野を除くことでより正確な数値を反映するコア小売売上高やコントロールグループ小売売上高 (自動車・食品・建材・燃料等を除いた指標) も前月比で上昇が加速しています。

コントロールグループは今週発表のコアPCE (個人消費支出) にも影響を及ぼしながら米国の中央銀行であるFRBの金融政策にも響くためこれらの結果により「間接的に利下げが遅れるのではないか」との憶測が支配的となり、米国の長期金利は上昇、株価も下落で反応したと考えられます。

上段: コア小売売上高、下段: コントロールグループ
コントロールグループは価格変動の激しい分野を除いたもの
どちらも前月比で先月から加速しており、この傾向が続くならば
利下げが遠のくかもしれない
市場によるFRB利下げの予測マップ
水平赤枠は今年末のFOMC、垂直オレンジ枠はその時の政策金利を表す
4月初旬は現在の5.25%から3回の利下げを織り込んでいた (上段)
今回の小売売上高の結果などを受け、直近は1回の利下げを織り込む (下段)

17日未明にはFRB・パウエル議長の発言として「労働市場はより良いバランスに向かいつつある」「最近のデータから更なるインフレの進展は見られない」と現在の政策金利が丁度良い塩梅であることを示唆したため株価の下落が一服しましたが、既に先週半ば時点で株価指数が短期的に下落トレンドへ片足を入れていたために現在まで弱含む状態となっています。

ところで16日、国際通貨基金 (IMF) が最新の「IMF世界経済見通し」を更新しました。
その名の通り世界経済のGDP成長率などを観測・予測する資料ですが、この中でも各国の成長率見通しが修正されたことが一部で話題となりました。

2024年の実質GDP (インフレ分を除いた) 成長率は先進国で+1.5%から+1.7%へ、新興国は+4.1%から+4.2%とそれぞれ上方修正されましたが、とりわけ先進国のGDP成長率において米国が+2.1%から+2.7%へ大幅に上方修正される一方、欧州は+0.9%から+0.7%へ下方修正されています。

IMFは米国の強さを「堅調な生産性と雇用の伸び」にあるとしながら昨年末の高成長がしばらく続くと見ており、欧州については当初の想定よりも回復力が弱いと見ているようです。

これは米国における生成AIブーム、それに伴う生産性向上も一つの要因ではありますが、世界最大の産油国である米国に比べ欧州がエネルギー価格変動の影響を受けやすいこと、そのためにインフレのコントロールが (米国に比べ) より難しいことが挙げられるでしょう。

事実、16日には英国中央銀行 (BOE) の次期副総裁であるロンバルデリ氏が「米国よりも先に欧州の金利は利下げされる可能性が高い」とし、フランス中央銀行総裁のビルロワドガロー総裁は「大きなインパクトがない限り、欧州中央銀行 (ECB) は6月に利下げするだろう」としており、米国よりも欧州が先に利下げをしなければならないほど「利下げ (金融緩和) において切羽詰まっている」と考えることもできます。

世界の実質GDP成長率の改定幅 (2024年4月版)
以前よりも米国が大幅にプラス改定されていることが分かる
一方、同じ先進国圏の欧州はマイナス修正となり、両者の明暗が分かれる
米国の強さが想定以上であることで直近のドル高や米国の高金利も
十分に説明できるだろう

また今回、IMFは「需給ギャップ」と「インフレギャップ」を算出しています。

需給ギャップは大まかに実質GDPと潜在GDPの差、インフレギャップはインフレ予測と中央銀行の目標との差 (つまり「実際の値」と「理論値」との差) ですが、オーストラリアと米国が需給ギャップでプラス圏に達するのに対し欧州と英国はマイナス圏まで落ち込んでいます。

2024年のインフレギャップ及び需給ギャップ (IMFより)
特に需給ギャップはプラス圏にあると理想

需給ギャップがプラスであれば高成長、マイナスであれば低成長と解釈できるため、オーストラリアと米国は高成長寄り、欧州と英国は低成長に傾いていると見ることが出来るでしょう。

一方のインフレギャップは上で挙げた国の中ではすべてプラス (つまり理想とされる2%よりも多少強いインフレ) ですが、欧州と英国はインフレがプラスに対し成長がマイナスとなっており「成長率を上げるために利下げをしたいが、利下げをすればインフレが再び加速してしまう」というある種のジレンマ的状況に陥っている関係で金融政策決定の難度が格段に高くなっています。

欧州経済が弱含みやすい一方、特に米国はインフレが多少プラスながらも成長率がそれを上回る推移をしており、これらの国の中では現状最も魅力的な投資先となることは自明でしょう。
反面、米FRBが安易に利下げをすると今度はインフレギャップが大幅にプラスに傾くこととなるため、変に金利を下げたりせずに現在の高金利で維持するほうが巡り巡って米国経済にプラスになりやすいと解釈できます。

またアジア圏に目を向けると、日本はどちらも0付近で推移しており中立的な立場が求められますが、中国はここ数年の不動産不況が尾を引いており利下げなどの金融緩和が喫緊の課題となっています。

現に中国は国内の金利を下げたり消費財を買い替える際に補助金を出すなどにより国内需要を刺激、デフレから脱却しようとしていますが、「ドルに対する人民元の為替レート固定」「自由な金融政策」を偏重する中国は「海外との資本の自由な移動」を諦めざるを得ず (国際金融のトリレンマ)、国内にある資産・資金の振り分け方によってはデフレ脱却策が頓挫する可能性も十分に考えられます。

そのような意味で他国よりも複雑かつ難度の高い金融運営を行っているとも言え、中国政府が思うような成果を上げられないリスクを考えれば「今のままがベスト」である米国に資金が向かいやすいことも納得が行くでしょう。

世界経済の中期的成長に及ぼす影響 (2024年4月時点)
最も効果があるのは「不適切な配分の是正」、つまり格差是正
国ごとに格差が埋まらない現状の中、次に効果があるのはAIの採用
いち早くAIを採用し生産性を上げた米国の成長率が高いのが証拠となり得る

また「どのような要因で世界経済の成長率が上がるか?」という問いに対し最も効果があるものとして「格差是正」が挙げられましたが、各国の政策や構造問題もある中で資金などを効率よく分配することは夢物語であり、次点にある「AIの採用」が米国の例を見てもより現実的なソリューションとなりそうです。

他方で「米国偏重型」の成長はドル高という副作用を生んでいますが、ユーロやポンドも去ることながら日本円の円安が止まらない状況が続いています。

かねてから日本の鈴木財務相による口先での牽制が行われている中、先週開かれた世界銀行春季会合におけるG7財務相・中央銀行総裁会議において「外国為替市場について過度な変動や無秩序な動きは、経済や金融の安定に悪影響を与える」という事実を再確認し、更に別個で日韓米の三か国で円安・ウォン安が深刻である事実を共有するなど、円安に対抗する策を増やそうと努力している側面もあります。

しかし19日に発表された日本の消費者物価指数 (CPI) を参照すると、変動の激しい食料及びエネルギー価格を除く総合CPIは前年比+2.2% (先月は同+2.5%)、サービス価格は同+2.1% (先月は同+2.2%) と物価上昇率が思うように上がらないために日銀が緩和的な姿勢を続けざるを得ないこと日本の貿易・サービス収支がトータルで赤字のために円安に偏りがちであることも円安に拍車をかけています。

日本 貿易・サービス収支
海外からの旅行によるドル獲得もほとんど打ち消すほどサービス収支の赤字は大きい
例えば何らかのサブスクを契約すれば、それもデジタルサービスの赤字になる
出典: 第一生命経済研究所

これらを合わせて考えれば日本の円安が早急に解決する確率は低く円高に戻すことによる副作用 (日本株の失速など) が相対的に多くなるため、今回の会合はあくまで「円安 (とウォン安) が苦しいということはわかりました」との認識に留まり、効果的な円高策が採られるまで至らなかった点には注意したいところです。


●イスラエルによるイランへの攻撃

19日(金)朝方、イスラエルによりイランへ軍事作戦が行われたことが報道され、日本株や米国株が一時的に軒並みリスクオフ (下落) の動きを見せました。

この報道がなされる前の18日(木)、イスラエルは米国政府に対し「24~48時間以内にイランに対し攻撃を行う、ただし核施設は標的としない」と通告していましたが、実際に攻撃を行ったことが一種のサプライズとなり株価は現在まで大きく弱含んでいます。

実際の攻撃はイランの首都・テヘランから南に340kmほど離れたイスファハーンの近郊にある空軍基地を標的に行われたと見られ、数回の爆発の後に防空システムが作動、ドローン3機を迎撃したと報道されています。

今回の攻撃があったイラン・イスファハーン (中央部赤丸)
首都のテヘランから300キロ以上離れており、かつ核があるとされる
ナタンズ核施設からも離れている
攻撃を受けたイランは被害がほとんどないとしており
事を大きくしたくない意図が見て取れる

この件の前より米国はイスラエルに対し自制を求めており、今回の報復攻撃も含めいかなる攻撃にも参加しないと立場を明確にしていました。

イラン外相は18日夜に「イスラエル政権が再び過ちを犯すなら、我が国 (イラン) からの次なる対応は即時かつ最大レベルのものになる」と警告していましたが今回の攻撃後にイラン軍の上級司令官は「被害はない」「防空システムが不審な物体に反応した」とし、またイスファハーンの住民が穏やかに過ごす風景をテレビで放映するなどしており、公に反発して更なる報復を行う雰囲気は現状出ていません。

イラン国営テレビは今回の件をある種デリケートに扱っているようであり、例えばイスラエル当局者の話を直接引用せずに「イスラエルの情報源からイスラエルが攻撃に関与したとされる外国メディアの報道●●●●●●●●●」に触れるなど、なるべく今回のことをスルーするように努めている印象がうかがえます。

またイスラエルと米国はこの件についてコメントを拒否していることから、当事者国間でも事を大きくするつもりはないようです。

加えてイスラエルと仲の良いアラブ諸国はイランの攻撃が更なる報復に繋がる可能性があると懸念しつつも非難まではしておらず (中立寄りの立場)米国の「報復攻撃への不支持・不参加」などと含めれば現状でイラン・イスラエル二国間の応酬に留まると考えられます。

肝心のイスファハーン近くにある空軍基地の被害自体も大きくなく、何よりイラン政府自体から「事を大きくしたくない」という意図が読み取れることから市場も冷静になり、一時急騰した原油は急騰前の水準まで戻っています。

以上を鑑みれば「攻撃に対し事前に警告したイランとしては被害が限られているため事を荒げたくなく、またイスラエルも国内などの世論にとりあえず対応するため『イランからの報復に対する報復』を行い、これ以上はお互いに攻撃する理由も見当たらない」ことと解釈出来るでしょう。

なおイスラエルはガザ地区を掌握するイスラム組織「ハマス」への対応もしなければならず、18日にはラファ地区 (ガザ地区南端) への侵攻を延期しイランへの対応に注力してきました。
イランとの応酬が終了した現在は再びラファ地区への侵攻を開始する可能性もありますが、この材料自体は特段目新しいものではなく相場への影響も少ないと考えられます。

ただしすでにイスラエルによるガザ地区侵攻は織り込み済みの材料ですが、「中東地区における複数国による、規模の大きい戦争」まで市場が想定しているかは疑わしいでしょう。
仮に今後も何度かイスラエル・イラン間 (または関係諸国) で断続的な攻撃が発生する場合、その頻度や規模が大きいほど市場がネガティブに反応する可能性が高いと見られます。

今回の件でイスラエル・イラン間の攻撃は収まったと見られますが、いずれにせよ中東情勢をしばらくウォッチすることが重要となりそうです。


■今週の見通し

来週に米国の政策金利を決定するFOMCを控える中、今週は日銀による金融政策を決める「金融政策決定会合」が週末に控えています。

前回の会合では長年にわたって根幹となったマイナス金利を撤廃、その他様々な変更を加えることで金融緩和の看板を下ろすことに成功しました。

ちょうど昨年から日本でもインフレが目立つようになりましたが、このまま「インフレ率 (物価) 上昇 + 金融緩和」を行えば過度な円安とインフレを招いてしまう点、万が一再びインフレからデフレへ転落した場合に金融緩和の弾をすぐに用意できない点を考慮すれば、日銀がある程度先回りして緩和から引締めの姿勢へ転換することで現状の日本経済に上手く合致する金融政策を行うことが出来ます。

そこで日銀は前回の会合にて緩和をストップしたことを発表しましたが、中身を見れば会合前と大きく変わらず、さらに日銀の植田総裁が「当面は緩和的な状況が続く」としたこともあり円安に弾みがついてしまいました。

今回の会合で目立つような変更が為される可能性は低いですが、日銀が今後の日本経済でどのように利上げをするのか (今年何回するのか?の頻度について、どれだけ利上げするのか?の利上げ幅についてなど) について発表されるか、注目が集まりそうです。

4月22日~26日までの主要各国経済指標
特に金曜、日銀会合後の為替・日本株変動に注意

米国企業の決算も本格化しています。
先週は銀行をメインに決算が発表されてきましたが、今週からはヒルトンなどのレジャー・航空会社の決算、グーグルやアマゾン、メタなどハイテク企業、シェブロンやエクソンなどのエネルギー企業の決算も控えています。

またFOMC前のブラックアウト期間 (FOMC関係者による発言が封じられる期間) が20日から始まっており、5月1日のFOMCまで関係者から金融政策に関する発言は一切流れなくなります。

先週大きく売られたことを考えれば好決算による買いを期待したいですが、利確売りの材料とされ更なる株価下落になる可能性も十分あるため、読みづらい相場であることに留意したいです。


◆ナスダック100 (NDQ)

以前のnoteにて「4月は夏から秋にかけての調整前の移行期間」と申し上げましたが、先週半ばからすでに短期的な下落トレンドに突入しており新規の買いを入れにくい状況となっています。

ナスダック100

想定より早い調整が来ていますが、現在は昨年12月の高値である16970付近のサポートにちょうど触れて反発するかどうかの瀬戸際にいることが分かります。
また直近での下落ペースが早いこともあり、月曜からの反発があってもおかしくないと考えられます。

ただしショートで勝負するのは上級者向けであり、非推奨ですがもし売りを行うならば多少戻った17400~17500あたりから行うとリスクが少ないと見られます。

月曜から更なる下落が見られる場合、日足の200移動平均線近くである16300ほどで買いを入れると勝率が高まると思われます。

想定レンジ: 16300~17800


◆S&P 500 (SPX)

こちらもすでに短期的な下落トレンドに突入していますが、図中〇部 (91MA) にて支えられており、週明け早々からの反発も期待できるかもしれません。

S&P 500

こちらもここからショートは上級者向けであり非推奨ですが、もし行うなら5100ほどまで戻ってから売りで入ると大やけどを避けることが出来そうです。

それよりも週明けから更なる下落でスタートする場合、4800付近での買い (図中、水平線) は非常にリスクリワードの良い場所となるでしょう。
売りで入るよりも買いで待ち構えるほうが楽だと考えられます。

また長期投資用の株式を無理して売る必要はなく、引き続きホールドしつつ適切な買い場を探すことに徹すると良いと考えられます。

※繰り返しますが株式のショートはベア相場でもない限り非常に難しく、下がったところを適切に買い向かうほうが良い結果に終わることが多いです。

想定レンジ: 4800~5100


◆米国10年債利回り (US10Y)

米国10年債利回りは引き続き上昇と見られ、今年2月から形成された「上昇トライアングル」の幅を当てれば当面の目標値がおよそ4.85%あたりと予測されます。

米国10年債利回り

直近のイスラエル・イラン間の攻撃はリスクオフとして利回りも下落する要因でしたが、いよいよ中東が静かになれば再び利回りも上昇すると考えられます。

これに加えて企業の好業績が続々と発表されれば利回りの上昇を後押ししますが、すでに昨年5.02%までの金利上昇を経験した市場からすれば、金利上昇による株価下落を心配する必要性は薄いと見られます。

株価が下落する場合は金利以外の何かしらの要素である可能性が高く、むしろTLTなどの「債券購入ETF」には (金利上昇 = 債券価格下落であるため) 逆風が吹き続けることに注意が必要でしょう。

想定以上の米国経済の強さを考慮すれば、少なくとも債券を購入するなら5%近くまで引き付けてから買うと (利幅が少なくオススメはしませんが) 勝率は高まると考えられます。

想定レンジ: 4.42%~4.85%


◆香港ハンセン指数 (HSI)

ハンセン指数は引き続き材料不足の状態が続いており、以前と同じく14600~17200の横ばい相場になる可能性が高いでしょう。

香港ハンセン指数

香港と連動性の高い中国市場では不動産に端を発する不況から脱しようと様々な政策を打ち出しています。

例えば4月には中国人民銀行と国家金融監督管理総局 (それぞれ日銀と財務省に相当) が自動車ローンの比率規制を変更し、それまで商用車でない自家用車を購入する際に頭金が20%必要だったものを全額ローンで組めるようにすることで消費を活性化させようとしています。

またEVで世界のシェアを大きく伸ばす中国のBYDは政府からの補助金により海外へ輸出する際に各国で掛けられる関税をある程度相殺できるようになっており、自動車で世界的なシェアを掴むことで国内経済を復活させたい意向が見て取れます。

ただしこの補助金施策は米国などから「意図的に価格を下げさせ、世界中にデフレを輸出している」と非難されており、また仮にトランプ氏が米国の大統領に当選すれば中国からの輸入EVに対しより高額な関税をかける可能性が高く、国内の需要喚起も含めて金融緩和としての持続性があるかどうかはいまいち疑わしい部分もあるのが現状です。

想定レンジ: 14600~17200


◆米ドル円 (USDJPY)

ドル円も米10年債金利と同じように上昇トライアングルを以前まで形成しており、152円の節目を上抜けてから再び円安傾向が目立っています。

ドル円

これよりも少し前に「ドル円は152円を超えれば為替介入が行われるのではないか?」との憶測が市場に漂っていた時期がありました。

およそ半月ほど前に152円ギリギリに張り付いた時、為替介入の決定を担う財務省から「急速な円安には対処するが、ある水準を超えたら必ず行うというものではない」とし、152円超えでの為替介入が無いものであると踏んだ市場が一気に154円まで押し上げた経緯がありました。

今日まで為替介入が無いことにより、市場に対しある種の円安への自信を付けてしまったこと、以前のチャートの形から計算するに一旦の目標値が164円ほどであること、また為替介入の回数にも限度があることから今後も継続的な円安に傾く可能性が高いと見られます。

今週の日銀会合では大きな政策変更は無いと予想されていますが、日銀の植田総裁による「円安けん制発言」があるかどうか、なにより近頃散々市場から無視されたそのけん制発言が実際に効くのかどうかも含め、会合結果の出る金曜までにはドル円のポジションを軽くするのも一つの手かもしれません。

想定レンジ: 152.0~157.0


◆日経225 (NI225)

日経225は米国の株価軟調、とりわけ半導体銘柄の崩れに釣られて下落幅を拡大しています。

日経225

一旦のサポートラインであった38100を下に割ったために上昇相場は否定されていますが、図中白〇部は「今年1月の高値」及び「91日平均線」(≒100日移動平均線) が重なる場所であり、米国株が急速に売られた関係で今週月曜のスタートから反発する|チャンス《●●●●》 (確定ではない) も期待出来そうです。

逆に下落が加速した場合、200日移動平均線がある34500付近が意識されるサポート帯となりそうです。

ところで日経225は通常「円安 + 株高」または「円高 + 株安」となるパターンが多いですが、今回は珍しく「円安 + 株安」というダブル安の現象が見られています。

これは進む円安に対し日銀が追加で利上げを行うことを嫌気しているため株が売られる、という説明も考えられますが、オランダの半導体製造装置企業であるASMLの決算が想定より悪かったこと、それに伴い日経の少なくない部分を占める半導体銘柄が軒並み下落したことにより、38100というサポートラインを割ったことで明確に「上昇相場は一服した」と市場にメッセージが放たれた部分が大きいと考えられます。

また金曜はイスラエルによるイラン攻撃も合わさった地政学のリスクオフであり、「過剰評価された半導体銘柄のバリュエーションが一時的にはく落し、イスラエルによる攻撃が良い売りの口実として使われた」と解釈するのが自然だと考えられます。

想定レンジ: 35000~39300 (値幅が広い分、予測がしづらいです)


◆原油 (CL1!)・ゴールド (GOLD)

【原油】は引き続き緩やかな上昇と見られます。
今回のイスラエルによるイランへの攻撃で一時的に急騰するも事態が想定より進展しないことから急落していますが、中東情勢の変化により「急騰→急落」の激しい展開がこれからも時折見られる可能性があります。

以前より紅海の不通による物流の滞りが指摘されていましたが、中東を経ずにアフリカの喜望峰を回る「遠回りルート」での輸送量が代わりに増加しているため、親イランのフーシ派による紅海ルートへの攻撃による原油価格上昇は限定的と考えられます。

一方、イランとUAE、オマーン間にあるホルムズ海峡は原油タンカーの要所とも言われていますが、ホルムズ海峡の閉鎖が原油価格の急騰を招く懸念も一部広がっています。

今回のイラン・イスラエル間の攻撃が同海峡の閉鎖に繋がる可能性も考えられますが、むしろイラン側 (イラン革命防衛隊など) は大きな騒ぎにはせず、周りの諸国も中立の立場を保つことから海峡閉鎖のリスクは低いと見られます。

これとは別に些細な要因ではありますが、米国のサマーシーズンにおける需要の旺盛に対しガソリン価格が上昇する傾向もあるため、しばらく需要と供給のバランスが取れながら原油価格がじりじりと上昇していく展開を予想しています。

想定レンジ: 80.0~90.0


【ゴールド】は引き続き、2011年から続いた強気のパターンから上に飛び出したことで上昇トレンドが続く見込みです。

ここ最近は米ドルが強く、通常であれば反比例し弱くなるはずのゴールドが強い理由として、

① 10年以上も上値を抑えられた分、以前の新高値である2080ドルを超えるとスルスルと上昇しやすい
② 2022年に発生したエネルギー価格高騰は世界的なインフレをもたらしたが、副作用として高金利に偏りやすいこの環境は今後も10年ほど続くと見られ、その分商品市場 (原油やゴールド、金属など) が恩恵を受けやすい

という点が挙げられます。

これらを鑑みれば既に米ドルの日々の動きはあまり重要とは言えず、また古典的ではありますが「質への逃避」の観点から見ても追い風を受けやすいと思われます。

想定レンジ: 2270~2550


※当記事はファンダメンタルズにおいて事実の正確さを満たすために尽力していますが、万一事実と異なる点等ございましたらお気軽にご教示ください。
また本稿では分かりやすさを優先するため、金融用語を厳密に使い分けないこともございます。

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主要指数はすべて現物取引のチャートを用いています。
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