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闘病中の人に「頑張れ」と言うこと

中国リハビリ日記 7月21日(火)

本日、この本を読んでいた。ガン闘病中でありながら、cakesに人生相談の連載を持っている幡野さんの著書。

僕もそうだけど、入院・闘病中の人が親戚・友人・知人から「頑張れ!」とよく言われる。

これ、幡野さんの本の中にも書いてあるけど、言われる方としては結構シンドイことも多いのかもしれない。いや、恐らく結構シンドイはず。

僕の場合はそう言われてそれほど悪い気はしないのだけど、それは恐らく僕が比較的マシな患者で、先々の見通しも立てやすいタダの恵まれた患者だからだろう。これでも完全復活には1年ほどを要するし、半年後にもう一度全身麻酔の手術を受ける必要はあるし、まだまだ道のりは長いのだけど。

では、「頑張れ」と言われて何がシンドイのだろう?

入院患者って、それだけで実は結構頑張っている。というより、頑張らざるを得ない。というのも、自分がそれまで日常的に普通にできていたことが、かなり頑張らないと出来なくなってしまっていることが大半なので。

・ベッドから起き上がろうとすること
・ベッドから降りて歩くこと
・歩いてトイレに行くこと
・大小便を排泄すること
・自分で排泄することが難しいときは親族やヘルパー・看護師にお願いしなければならないこと
・首を横に向けること
・少しでもラクな姿勢を取ること
・少しでも口を開けて何かを話そうとすること
・少しでも口を開いて何かを食べようとすること
・咳をしようとすること

などなど、こんな簡単なことするのにも全て努力と強い意志、工夫が必要になってしまう。これが僕が入院中・闘病中の状態だった。

入院中はこうした努力を日常的にしていたし、退院してからも

・医師のアドバイスに従って日々薬を服用し
・歩くのが大変なときでも歩く努力をし
・歩きすぎると良くないから歩けるようになってからも歩数をセーブし
・食べたいものはたくさんあるけど欲を抑えるように、日々座禅・瞑想で欲をコントロールできるよう精神を整えている
・仕事に復帰しやすくするには今から出来ることは何かを考え続けている
・中国語のレベルが落ちないようにラジオに耳を傾ける

などなど、こうした努力の日々である。

入院前も色々努力はしていたけど、事故や病気の前の、日常的なことは普通にこなせる上で加える努力と、日常最低限のことをこなすことに必要な努力、どちらの方がエネルギーが必要かといえば、後者の「日常最低限のことをこなすために必要な努力」の方がエネルギーがいる。

だから、入院中・闘病中の人たちって、既に相当頑張っている人たち。

故に、こうした人たちが親族・知人・友人に「頑張れ」って言われると、「これ以上、何をどう頑張ればいいのか?」と戸惑うのは十分理解できる。

逆に、親族・知人・友人が、今闘病中の人に「頑張れ」と言いたくなる気持ちも理解できる。「頑張れ」というのは、こうしたときの、いわば「定型句」でもあるし、他に言うべきことなどなかなか見つからない。

そういう意味ではフェイスブックの「いいね」機能などは便利ではあるけど、受け取る側からしたら、下手な言葉をかけられるよりも「いいね」はうれしいのだけど、もっと他にないのかよ!とか我儘に思ったりもする。

人というのは困った生き物だ。

では、既に頑張っている患者に、どんな言葉をかけてあげれば良いのだろう?

これは、その都度、自分自身でたくさん考えなければならないでしょう。SNSに書かれた投稿を読んで、かけるべき言葉を毎回熱心に考える必要がある。

ちなみに、私は今回の事故後に多くのコメントを知人・友人から頂きました。僕の場合、特に言われて困ったものはほとんどなかったものの、こうしたときは、、、

「アイ・メッセージ」に基づく言葉がけはとても無難でしょう。「アイ・メッセージ」とは、あくまで「私はこう思っています」という自分の考えを述べるメッセージ。例を出すと「一日でも早い復帰をお祈りしています」のような”自身の祈り”を伝えるタイプ。

それに対して「頑張れ」というのは「ユー・メッセージ」。これは「あなたはこうすべき」という要求を伝えるタイプのメッセージ。受け取った方が素直に受け取りづらいのは、どちらかというとこのタイプが多い。親子・会社の上下関係・恋人間のコミュニケーションで、言った相手から反抗されがちなのもこの手のやり取り。

そして一番やってはいけない最悪なのは、素人からの勝手な治療法アドバイス。闘病中の人に、自然療法や高額な薬、宗教などを、患者サイドから尋ねられたわけでもないのに薦めてくるがいる。

求められてもいないのに勝手なアドバイスを闘病中の人間に送るのは御法度と思っていただきたい。それは親切でも何でもなく、人を害する行為であることは肝に銘じていてほしい。

だから、闘病中・入院中の親族・知人・友人に何かコメントを送るときは、自分自身でいつも以上に相手の心情を想像しながら、何かを残すように心がけていきたいと、自分自身も心がけていきます。


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