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『実務でつかむ! ティール組織』(吉原 史郎 著) 〜成果も人も大切にする"次世代型組織へのアプローチ〜

『実務でつかむ! ティール組織』(吉原 史郎 著)

【どんな内容の本?】フレデリック・ラルー氏の「ティール組織」がちょっと読みづらいと思った方へ、事例も踏まえわかりやすく 

チーム作りにあたって「ティール組織」というキーワードがなんとなく気になっていたものの、本家と紹介されたフレデリック・ラルー氏の「ティール組織」は内容も量もちょっと重く感じていたところ、知り合いがFacebookで紹介していて読みやすそうに感じたため手にとって見た一冊。

著者である吉原 史郎氏は、リゾートホテルの総支配人として事業再生業務に従事したり、三菱UFJリサーチ&コンサルティング社にて大企業向けの調査プロジェクトやM&Aアドバイザリーなどの実績を多く積み、2017年にNatural Organizations Labを設立し、経営の進化の実行支援や事業再生の専門家として"成果につながる取り組み"の経験が豊富な方です。
本書では実際の事例や「ティール」以外の様々な組織の状態を色わけしながら解説されていて押し付けではない組織論が展開されています。

【目次】

第1章 ティール組織とは何か?
第2章 組織モデルを実務的に捉える
第3章 次世代型組織の3つの土台づくり
第4章 次世代型組織の事例 〜ザッポス社〜
第5章 次世代型組織の土台作りにつながる事例
 1.株式会社ネットプロテクションズ
 2.九州電力株式会社
 3.アデコ株式会社
 4.NPO法人場とつながりラボ「home's vi(ホームズビー)」

【読んでみて刺さった言葉】

・「社長や上司が業務を管理するために介入をしなくても、組織の目的実現に向けてメンバーが進むことができるような独自の仕組みや工夫に溢れている組織」
これは本書の冒頭で「ティール組織とはなにか?」を著者が一言でまとめていった文です。この本、私は実は電子書籍で読んだのですが、購入前に買うかどうか検討しようと実店舗で手にとってみました。その冒頭でこのように言い放たれており、正直半信半疑でした。そんな組織できるのだろうかと。

さらには、ティール組織の要点として以下のように続けられています。
 1.進化する目的
 2.自主経営が可能となる仕組みや工夫を有していること
 3. 個人としての全体性の発揮

自分の経験ではいわゆる「自走している社員」「自律しているメンバー」は組織の一部であり、よく言われる「2割のメンバーが8割の業績を上げている」という状態がほとんどでした。はたしてそのような組織ができるのか、という疑問から本書を読み進めることにしました。


・「自分の心の奥底の想いや大切にしていることを実現するために、決して無理はせずに、半歩でもいいので、「わたし」から少しずつ取り組むことが大切」
この文は上記要点3の「個人としての全体性の発揮」を解説する中で、読者に向けて語りかけるような形で記されています。「個人としての全体性」という言葉も今ひとつ伝わりづらいかもしれません。著者はこれを紐解き「個人が組織において、多様な能力や感情を発揮すること」とも記しています。
自分を顧みて、少なくとも「感情」を発揮できていない、「やりたい」ではなく「やらなきゃ」という想いに終始してはいないだろうかと感じ入りました。もう一度「自分の心の奥底の想い」「大切にしていること」を見つめ直して、自分がやるべきことを考え直すきっかけになりました。

総評:組織論の本なのだけれど、深く個人のあり方を問うてくる

組織づくり、チーム作りのヒントと思って手にとった書籍でしたが、想像以上に自分に向き合わされる内容でした。それと同時に、チームのメンバーも同様の想いや目的をもって同じ職場や組織に所属しているわけであり、それを理解しサポートし合うような関係性を築きたい。そのためにはもっともっと相手(社内も社外も)のことを知り、自身から相手のためにできることから取り組んでいくことだと感じ入りました。

この書評には書籍前半の概論的な内容から主にピックアップしましたが、本誌にはもっと多くの実例をもとに様々な側面から組織作り、人間関係づくり、組織と個人の関連性の持たせ方などが紹介されています。チーム力をあげたいと思うようなリーダーポジションの方はもちろん、なんとなく会社組織や現職でうまく力を出せていないと感じているような方にはヒントが見つかる書籍かもしれません。

『実務でつかむ! ティール組織』(吉原 史郎 著)

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