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建築好きなら読んでおきたい『月刊かがくのとも』10選【工学・技術編】

こんにちは! いつもムダに文章が長い たけうち(@take_housing ) です。

福音館書店からでてる『月刊かがくのとも』は、1969年4月創刊。対象年齢5~6歳の薄い冊子ながら、その内容は好奇心をくすぐる仕掛けに満ちた珠玉の絵本です。

子どもの好奇心の数だけ広がるかがくの世界子どもたちの身の回りのことすべてが「かがくのとも」のテーマ。身近な植物、動物、モノ、現象を、事実の羅列ではなくストーリー性を大切にして、子どもたちに伝えます。自然、人間と生活、遊びの3つの視点から、子どもたちの発見の喜びや驚きを応援します。(福音館書店HP)

そんな『月刊かがくのとも』の歴代ラインナップから、特に建築好きなら読んでおきたい10選を選んでみようと思いましたが、これがまた難航。そこで今回は思い切って、【工学・技術編】と銘打ち、乗り物系、発想系、工作系、実験系などなどの名作は除外。建物や機械、設備等の仕組みを探るものに絞って選んでみました。

それでは『月刊かがくのとも』【工学・技術編】10選をどうぞ!


「あなたのいえ わたしのいえ」
加古里子
(1969年6月号・第3号)

言わずと知れた加古里子の、これまた言わずと知れた科学絵本のベストセラー。住宅に求められる性能を、屋根、壁、開口部、床など段階を追って、かつ、なぜそれが必要なのかを子どもにも納得できるように語りかけています。「いえはひとがかんがえ、くふうしてつくった、おおきなくらしのどうぐです」。


「でんとうが つくまで」
加古里子
(1970年1月号・第10号)

同じく加古里子による科学絵本。我が家の電灯が灯るのは電気のおかげ。ではその電気はどうやって創られているのかを、水力と火力を例に発電所から我が家までの一筋の流れとして描きます。これは加古の名作『かわ』にも通じる構図。余談ですが、この発電を巡る絵本の出版年は大阪万博の1970年、つまり日本初の原子力発電営業運転の年です。


「どうぐ」
加古里子
(1970年11月号・第20号)

またしても加古里子による絵本。加古は『あなたのいえ わたしのいえ』で住宅を大きな暮らしの道具として捉えたように、「どうぐ」は科学技術を考える上で重要なテーマ。あらゆる生活場面に道具が役立っていることを説きます。「どうぐをつかって、ゆたかなたのしいくらしをするのが、わたしたちにんげんです」という加古のメッセージは実は重い。


「だんめんず」
加古里子
(1973年3月号・第48号)

ものの仕組みを理解する際に、断面図は大きな力を発揮します。それゆえ、加古は子どもたちへ向けて断面図をテーマにした絵本を、本作とさらに「だいこん だんめん れんこん ざんねん」(かがくのとも、1984年4月号、第181号)として描きました。断面図の利点を語った後に登場する木造住宅の平断面図・側断面図は圧巻。


「パンクのしゅうり」
百木一朗
(1986年11月号・第212号)

なにがすごいって、この絵本、主人公のけんちゃんがパンクした自転車を修理してもらう流れを淡々と、でも詳細に描写しつづけるだけの内容。でも、そこでは自転車の仕組みから、各種工具の役割、修理の手順と勘所が丹念に描かれていること。実際にこの絵本を見ながらパンクの修理ができるくらい。5歳児を子ども扱いしないクオリティです。


「おもちゃのびょういん」
かさのゆういち
(2011年2月号・第503号)

さきほどのパンクの修理に続いておもちゃの修理。おもちゃの病院を舞台にいくつかの故障したおもちゃを直していくプロセスが描かれます。なにげない描写に見えつつも、実は、不具合の原因を探りながら、発見した不具合を直してみて、正常に動作するかどうかを確認するという一連の流れは工学の基本を伝えるもので秀逸。


「サッカースタジアム」
鎌田歩
(2013年2月号・第527号)

日本最大のサッカースタジアム「埼玉スタジアム2002」を舞台に、試合終了直後から撤収するまでのヒトとモノの動きを丹念に描き込んでいます。このヒトとモノの動きを描いたことで、より具体的にスタジアムという建築物の仕組みや役割がわかるようになっていて「こういう建築の説明の仕方もあるんだなぁ」と感心させられました。


「ねじ」
角愼作
(2015年12月号・第561号)

わたしたちの暮らしを支える「ねじ」の種類と仕組みと役割を丹念に描く傑作です。うちの娘はこの絵本を読んでしばらくは、家の中でも外でもネジ探しに夢中になりました。ねじだけあっても何もできないが、ねじがなければつくれなかったものはたくさんある、という作者の言葉は私たちの観察欲にさらなる火をつけてくれます。


「エスカレーターとエレベーター」
小輪瀬護安
(2016年3月号・第564号)

子ども心にデパートにいったら夢中になるのがエスカレーターとエレベーター。そんな二大設備の仕組みを断面図解で惜しみなく見せていくのが本作の真骨頂。あと、絵のタッチや色合いがメカ感を和らげていて疲れない。エスカレーターとエレベーターの共通した利点のほか、両者の利点を対比的に説明しているのも「かがくのとも」感があって良い。

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「すいどう」
百木一朗
(2017年11月号・第584号)

山に降った雨が浄水場に集められ、水道管を介していろんな建物、そして我が家のシングルレバー水栓へと至る流れを描いた絵本。これまた加古里子『かわ』を連想させる構成です。この絵本で水道メーターを知った娘はメーター探しに夢中になり、そこから派生して、雨水枡や電気メーターなどへも関心が拡大。将来が心配です。


以上、10選でした。

あと、この他にも番外編として、文中でも触れた加古里子の「だいこん だんめん れんこん ざんねん」や、加古「どうぐ」の現代版ともいえる「これさえあれば-だれのどうぐ?-」(杉山亮、星川ひろ子、1996年5月号・第326号)もこれまたイイ。

あと、断面図ではなくレントゲン写真でものの仕組みを知る「中をそうぞうしてみよ」(佐藤雅彦+ユーフラテス、1997年11月号・第153号)、ただただ紐の結び方を図解する「むすび」(にいざかかずお、1975年9月号・第78号)もなかなかの読み応えです!

興味深いことに(というかやっぱりというか)、『月刊かがくのとも』草創期に立て続けに描かれた加古里子の科学絵本が偉大すぎる。そのせいで、以後のラインナップは加古のバリエーションやオマージュなのでは中廊下と思えてしまいます(そんな加古とて、そのバックにマリー・ノイラートなんかの科学絵本が祖型にあるのかもしれませんが)。


さて、今回は「建築好きなら読んでおきたい『月刊かがくのとも』【工学・技術編】10選」をご紹介しましたが、まだまだ『月刊かがくのとも』には建築魂をくすぐる名作が山ほどあります。

また機会を改めて、他の『月刊かがくのとも』や姉妹本『月刊こどものとも』を対象に、「建築好きなら読んでおきたい10選」をご紹介していきたいと思います。それまでしばしのお別れです。出羽出羽!

(おわり)

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竹内孝治|元・住宅営業マン

住宅産業や住宅計画、近代住宅史について教育たまに研究しています。noteにはあれこれ思いついたり考えたりしたことをメモ的に書き出しています。建築家・ハウスメーカー・工務店を対立構図ではなく、それぞれの存在意義を尊重しつつ、まずは個々の事例について考えていきたいです。

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