武濤

タケナミ | 小説・漫画原作 | Queer | 言葉にならないそれを拾い上げて文字に…

武濤

タケナミ | 小説・漫画原作 | Queer | 言葉にならないそれを拾い上げて文字にしたい | 化学物質過敏症(2017.6月発症、8月診断確定) | ぶんか社『「ただの空気」が吸えなくなりました。』原作/ジャパンマシニスト社『転校生は かがくぶっしつ かびんしょう』作など

マガジン

  • 存在を証明できない私たち 〜見えないにおいと届かない声〜

    化学物質過敏症とその周囲の人々の声を集めています やわらかくやさしい語りを目指して 不定期更新(月2回ほどを予定) 集めていますといいつつ試験運用中なので、予告なく変更・停止・廃止することもあります。個人での制作のため至らないと思われる点も多々あるかと存じますが、なにとぞあたたかい目で見ていただき、ご支援賜れましたら幸いです。

  • 化学物質過敏症

    化学物質過敏症の体験談など

  • 祝・単行本化!

    2021年9月10日に、ぶんか社より出版された『 「ただの空気」が吸えなくなりました。 〜化学物質過敏症で無職になった話〜』の制作過程や裏話など。

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自己紹介 と お仕事について

こんにちは。武濤です。 都内で家族4人+猫3匹で暮らしています。 会社員をしながら趣味の創作活動をして、コミティアなどで頒布していました。 いました——…… そう。過去形です。 ある日突然、病に倒れました。 それは化学物質過敏症といい、〝一度に多量〟あるいは〝少量でも長期に渡って〟同じ有機化合物に曝露することによって、その後ごく微量であっても多種多様な化学物質に反応して、さまざまな症状が現れるという病です。 反応する〝ナニカ〟がそこにあれば、花粉症でいえば「ずーっと2

    • 『そこに闇があるのなら』存在を証明できない私たち#04

       濱田さんとは不思議な縁で知り合った。それを説明しようとすると一章を割かねばならない。そのため、まず不思議な縁とだけ書く。  年始に彼女の事務所の方向へ用事があって連絡すると、すぐに応じてくれて国立駅で待ち合わせることになった。濱田さんは、化学物質過敏症に特化した建築家である。  時間より早く着いてしまった私を心配し、会うなり「久しぶりに降りたら雰囲気が違ったわ」と仰る。 「何年も前に再開発計画が出たんだけど」と南を向き、「あっちの方に一橋大学があって、ビルが建ったら学園

      • サポートいただきました! めっちゃ嬉しいです! がんばります!

        • 『愛ゆえに無香料』存在を証明できない私たち#03

           福山くんと出会ったのは、一次創作の同人誌即売会だった。  展示場などに机を並べ、ストーリーからキャラクターから自分たちで創造した、オリジナルの作品を展示頒布するイベントだ。  数千からのブースがひしめき合う机のひとつで、私は自費出版の漫画を並べて開場の準備を整えていた。参加年数ばかりが長い零細サークルだが、おかげさまでそれなりに常連さんも顔を見せに来てくれる。  隣は、どことなく慣れない様子だった。初々しくも社会人としての振る舞いは熟知しているふうの男性二人が、期待と不

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        • 存在を証明できない私たち 〜見えないにおいと届かない声〜
          7本
        • 化学物質過敏症
          4本
        • 祝・単行本化!
          2本

        記事

          「存在を証明できない私たち」補足

          というか、X(旧Twitter)への連続ポスト転載。 たいしたことじゃないのですが、こんな気持ちで書きはじめたんですよーという内容です。 化学物質過敏症について正しい情報や実態を伝える本等は、僭越ながら自著を含めてすでに多数存在しているものの、未だに世間の深部へ届かない印象が… そこで発症者や周囲の声をもっと広く、そして一人の作者へ集約させることで「知らない人へ伝える」モノ作りをしたい、というのが主な狙いです。 ▼ マガジントップ もちろん今までも個人やグループで体験談

          「存在を証明できない私たち」補足

          『泥中の蓮』存在を証明できない私たち#02

           寒さの残る早春だった。空には銀鼠色の雲が垂れ込め、今にも降り出しそうである。私はほんの少しの緊張と期待を抱えて、巣鴨へ向かって大またに歩いていた。  地蔵通りは、土日祝や市の立つ日に比べれば穏やかな人出だったが、それでもパン屋のタカセやとげぬき地蔵の高岩寺は賑わっていた。  今でこそ洒落た雑貨屋や高級食パン店が並んでいるが、2019年の巣鴨は赤いパンツで埋め尽くされていた。赤は活力源の色。服の下に目の覚めるような原色の赤を忍ばせて内側から元気になろうと、巣鴨に集う人々の間

          『泥中の蓮』存在を証明できない私たち#02

          『遠回りして辿り着いた場所は、旅の途中だった』存在を証明できない私たち#01

           新宿は、懐が深い。  雑多で猥雑で下卑ていて、優しい。  どんな人間が現れようともやんわりと、そのかたちのままに受け容れる気風を感じるのだ。  私はこの街が好きだ。ほとんど一方的に恋しているといってもいい。  人生のどこにも居場所がないと思い込んでいたあの頃、JR南口から甲州街道を御苑にぶつかるまで行って、北上して2丁目から3丁目と一周して伊勢丹を眺め、紀伊國屋で立ち読みをして帰った。金もなく学もなく、唯一手にしていたはずの時間さえドブに捨てていた。そんな頃から今日に至る

          『遠回りして辿り着いた場所は、旅の途中だった』存在を証明できない私たち#01

          新連載「存在を証明できない私たち 〜見えないにおいと届かない声〜」はじめに

           小春日和に新宿を急いでいた。  平日といえども靖国通りの歩道はまるで大河のようで、四谷方面へ向かって悠然と流れている。先を焦って前へ肩を入れようとすると押し返されるので、身を任せるしかない。私の歩調は人より少々せっかちなので、こういうときはじれったくなるのだが、都心の川の泳ぎ方はじゅうぶん理解しているつもりだった。  用事というのはTOHOシネマズにあったのだが、私はあのゴジラが怖い。  その存在に畏怖の念を抱いているという意味ではなく(それもあるかもしれないが)不意

          新連載「存在を証明できない私たち 〜見えないにおいと届かない声〜」はじめに

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          そよ風クリニックの思い出、或いは決意表明

          今年の締めくくりに、惜しまれつつも閉院となった化学物質過敏症外来「そよ風クリニック」について。といっても、個人的な思い出話です。 初診は2017年。 発症してすぐに予約を取り付けたのを覚えています。 化学物質過敏症は、その名前に辿り着くまでも険しい道のりで、「どの科を受診しても異常なし、そうこうする間にひどく悪化」ということもあるのですが、発症の経緯や症状で検索したところ結果の上位に出てきたことが幸いして、早期から疑わしく考えていました。 とはいえ素人判断はいけません。

          そよ風クリニックの思い出、或いは決意表明

          祝・2巻配信! 「ただの空気」が吸えなくなりました。 〜化学物質過敏症で無職になった話〜

          遅ればせながら2巻が配信されました! どのくらい遅ればせたかって、配信日が9/14なので、3ヶ月ほどの大遅刻! 今更な感じもありますが、3ヶ月経っての所感も含めて、ゆっくり紹介していきますね。 ↓1巻はこちら(紙の本もあります!) 2巻は電子のみです どんな話? 前巻のラストで実家に戻ることになった金子ユリさん。 これで、ひと安心、めでたしめでたし、ではありません。 家族といえども……家族だからこそ……なかなかうまくいかないこともある。 「ちょっとくらい、いいわ

          祝・2巻配信! 「ただの空気」が吸えなくなりました。 〜化学物質過敏症で無職になった話〜

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          映画 『[窓]MADO』もう一度見た

          昨年の池袋から2回目の鑑賞。 渋谷ユーロスペースの最終日に滑り込んできた。 前回感想はコチラ↓↓ 今回は5年の付き合いになる化学物質過敏症の友人と一緒。 彼女は元喫煙者で発症者でもある。 友人曰く、鑑賞前から ・過敏症として感情移入すると辛くなるだろうから俯瞰で見よう ・映画はフィクション。本当の訴訟とは別物 ・これは『化学物質過敏症を紹介する映画』ではない という心構えだったとのこと。 こういうところが、この人と友達になれてよかったなぁと思う部分のひとつ。 感想、第

          映画 『[窓]MADO』もう一度見た

          映画 『[窓]MADO』 長文感想

          12/17(土)昼の回、舞台挨拶付きで鑑賞してきました。 休日の池袋、満員の映画館では難しいかと思いますが、私と同じ化学物質過敏症の人はいらっしゃったでしょうか。 さて、これは実際に起きた横浜副流煙裁判を基にした映画で、なんと訴えられてしまった方のご子息が脚本監督です。 ともすると家族を擁護する内容になるのかと思いきや、主人公は原告側。 つまり、あなたの家のせいで病気になったと訴えられた人の息子さんが、訴えた人の側に立って映画を作ったということで、俄然興味が湧きました。

          映画 『[窓]MADO』 長文感想

          化学物質過敏症とヘアケア・スキンケア

          シャンプーなどはなにを使っていますか? というコメントをいただいたそうで、ありがとうございます。 この際なので、自分が使っている日用品をいろいろご紹介します。 ヘアケア編 シャンプー ・石けん百貨 液体せっけん(液体石鹸) 普段はこれひとつ。ガラスボトルに詰め替えて使っています。 ・コープ 素材そのまま化粧せっけん(固形石鹸) 6個入りで700円程度。コープはおすすめですが、原材料がなるべく石鹸素地のみのシンプルなものなら、どこの石鹸でも使いやすいと思います。液体石鹸より

          化学物質過敏症とヘアケア・スキンケア

          祝・単行本化! 「ただの空気」が吸えなくなりました。 〜化学物質過敏症で無職になった話〜

          2020年9月10日、ぶんか社様より、原作を担当した漫画が発売されます! 電子コミック雑誌で連載していたもので、いったん電子版のみで単行本化していたのですが、今回はなんと…紙の単行本になります! あらすじという、実話に基づいたコミックエッセイです。 実録闘病記としての正確さ掲載誌の性格や漫画という媒体上エンターテイメントでもあることから、実際に起きた出来事をそのまま描いていない部分もあります。 制作陣の体験を混ぜたり仮名を使うことで、個人が特定されたりしないよう、注意し

          祝・単行本化! 「ただの空気」が吸えなくなりました。 〜化学物質過敏症で無職になった話〜