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サラダ記念日(俵万智、1987年刊行) 読書感想文

サラダ記念日(著:俵万智、河出文庫)



「今」を一所懸命に生きた痕がこの本には書かれている。

つくる食べ物はよくあるそこらの物。

恋愛に悩み、時には傷つきオロオロと。時には一念発起しクールに。その脆さ、危うさ、そして力強さ。

そしてよく歌を聴く。

短歌というたった三十一文字の世界に等身大の女子の生きる様が刻まれている。

思うに短歌は、自分の感じたありのままのことを書けばいいだけで、小難しく考え、こねくりまわし、ひねったものを書けば良いというものではない気がする。
例えば、あまりに有名な歌の、

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

も、ありのままを書いている。それだけ。ただこれがただの散文ではなく短歌になっているところがすごいのだ。

同時に時代を映す鏡となっているところもこの本に収められた歌たちの魅力の一つだろう。
「ホテルカリフォルニア」「受話器」「ダウンタウンボーイ」「TOKIO」
これらの今となっては古い言葉(あるいは物、趣味)たちだが、そこに古臭さはなく、みずみずしく「今」を捉え続けている。

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