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道の駅『はなかがり』(ショートショート)

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桜の咲き乱れる道の駅のショートショートです。たまにショートショート以外もあります。 一部の桜に関するショートショート類も入っています。
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固定された記事

桜咲く道の駅(ショートショート)

 その場所は、高速道路のインターチェンジを下りてすぐにあった。  どうやってそこに辿り着…

たけなが
2か月前
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春光ケトル(ショートショート)

 春の朝というのはどうしてか、すぐに起きることができない。  布団の中の温度があまりに心…

たけなが
3か月前
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春(雑記)

 春の後ろで歯車が回転している音が聞こえる。  春は小さなお菓子の箱の中に入っていて、金…

たけなが
3か月前
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春風毒についての記述(雑記)

 春風毒とは、春風に乗って濃縮されていく毒のことだ。  成分は春に生まれる、人間の様々な…

たけなが
3か月前
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春の瓶詰(雑記)

 春が無くなった世界で重宝されているものがある。  春の瓶詰だ。  名前の通り、瓶の中に春…

たけなが
2か月前
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桜象牙の万年筆(ショートショート)

「桜象牙、ですか?」  とある万年筆専門店で、私はそれを見つけた。 「はい、桜象牙の万年筆…

たけなが
3か月前
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春の色について(雑記)

 彼にとっての春は青色だった。  世間一般での春のイメージは、淡いピンク色で、柔らかく、暖かなものといった具合だろうけれど、彼にとってはもっと暗いものだった。  空気は鋭い棘のようで、ガラス片に似た光の含み方をしている。  そのくせ、どこか知らない場所の、あたたかな感情、喜びや高揚といったものに収束していく。  自分という存在には無慈悲に突き刺さり、その身体からエネルギーという形で質量を奪い去るものだった。  そのせいか、彼の身体はどこか華奢で、近寄りがたく、飄々とした気配

道の駅(ショートストーリー)

 自分の居場所がないと思った時。それから、今は居場所が欲しくないと思った時。  私はどこ…

たけなが
2か月前
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春霞餅(ショートショート)

 道の駅の中にあるカフェ。おどろくほど静かで、けれど不思議と心が落ち着く。  調理場から…

たけなが
2か月前
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はなかがり(イラスト)

たけなが
2か月前
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向かう先(ショートショート)

 高校を卒業して、四月からは就職。  微かな憧れを抱いていた大学進学の夢も、いつの間にか…

たけなが
2か月前
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旅桜の方位磁針(雑記)

 世界中を自由に旅した桜の花びらには、意思が宿るらしい。  様々なものを見聞きし、経験を…

たけなが
2か月前
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セイレーンの桜花漬け(雑記)

 セイレーンの歌声が染み込んだ海水から作られた塩。  それを使って漬けられた桜花漬けがあ…

たけなが
2か月前
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シオリザクラの髪留め(ショートショート)

 久しぶりに遠出した際に立ち寄った道の駅。桜の咲き乱れる、とても綺麗な場所だ。その中にあるお土産売り場を回っている時、ふと、気になる商品があったので、店員さんに声を掛けてみた。 「シオリザクラという名前の桜があるんですよ」  カウンター越しに店員さんはそう切り出した。 「シオリザクラ、ですか? あの六月に花を咲かせる……」  シオリザクラ。別の呼び名で、シウリザクラともいう、白い花を咲かせる植物。 「よくご存じですね。けれど、今話した桜はまた別のものです」  そんなふうに前置