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家族鉄道999にアナウンスが流れる 

自分の居場所を探して、
地球上空を旅する列車、

「家族鉄道999」
は、

地上約9,000メートルの高さを、
マッハ2のスピードで、
ユーラシア大陸を通過していた。

列車が大陸の東に差し掛かかり、
高度を下げ、緩やかに減速を始めると、
前方のスクリーンでは、
車掌の挨拶が始まった。


その姿は、
地域による家族制度の影響がミックスされ、
性別、年齢、国籍、宗教、を織り込んだ、
まるで多様性の向こう側に住む、
宇宙人にも見えた。


車掌はこのエリアで降りる乗客に向け、
アナウンスを始めた。


わたしは車掌を務めるトッドと申します。
小さい頃は「鉄郎」と言われていましたが、
人口学や家族制度を学び、
世界の様々な現象を理解する旅を続け、
今は、このような姿になりました。

この度は
「家族鉄道999」に、
ご乗車ありがとうございます。


皆さんは、
ご自分にピッタリの家族システムを、
見つけることが、出来たでしょうか?



これより当列車は、次第に高度を下げ
「直系家族エリア」に停車いたします。


眼下に見えるのは、
このエリアで有名な富士山です。

では、エリアでの注意事項を申し上げます。
他のエリアでは、失礼に当たらなくても、
このエリアでは、あらぬ誤解を受けますので、
お気をつけ下さい。

例えば、このエリアは、
他のエリアに比べ「安全で清潔」です。
女性が一人で夜道を歩いても安心、
道にゴミなど落ちてはいません。

ただし、
信号が赤であれば、
たとえ周囲に車が無く、
交通事故の可能性が0でも、

信号が青になるまでは、
しっかり止まってください。

決して、
人間優先で判断しないでください。
ここでは「しきたり」が優先です。
あなたの気持ちや判断より、
赤信号が優先です。

直系家族システムですから。


車が無いという合理性を根拠に、
個人の意見など出してはいけません。

ここでの善悪の判断は、
合理性では無く、しきたりです。

決して勝手に赤で道を渡ってはいけません。

いいですか!
赤なら止まれです、
車がいなくても止まれです!

直系家族システムですから。



また、
エスカレーター前で、
どんなに列が長くても、
左に並んで順番を待ちましょう!

明らかに2列の方が、
輸送量が多くて早そうな状況でも、

疑問を持ってはいけません、

「人間クリーニング屋」に捕まり、

「思想洗濯機」に投入され、

「疑問漂白剤」で漂白されます。

最後は、
「みんなに好かれる香り」で、

周囲に馴染むまで、
真っ白に洗い上げられるでしょう。




さて、直系家族エリアでは、

夫婦間に生まれた初めの男子、
つまり長男が優先です。

下の兄弟姉妹たちは、
おとなしく長男に付き従うのが掟で、
次第に、意見を言わなくなります。

長男が赤と言えば、
青に見えたとしても、
そんなこと考えてはいけません。


それがどうしても嫌なら、
どうも馴染めないなら、

自由や平等や合理性が好きで、
多様性を求めるのなら、

お盆とお正月には、
決して実家には帰らず、
都会でゲームするのもいいけれど、

それよりも、
世界を知る旅に出ましょう!

単なる観光ではなく、
世界の家族システムを把握し、
その影響を理解する旅に出ましょう!


あなたが生活するエリアで、
日々起こる不思議、妙な風習の、
疑問が解けてゆくことでしょう。

なぜなら、その奥に潜む、
考え、価値観、判定基準などが、
「家族システムが産み出す人々の傾向」だと、
客観的に理解できる様になるからです。

さて、
冠婚葬祭は特に気をつけましょう!
家族や一族が一堂に集まる場であり、
家族システムが明確に現れる場面だからです。

そこには目に見えない抑圧、
自由や公平さとは無関係な暗黙のルール、
妙な掟、が歴然と存在します。

掟は、存在するだけではなく、
「空気警察」としてあなたを拘束し、
赤信号で止まれるようになるまで、
同調圧力をかけてきます。


例えば、
最後の親の葬式は長男が喪主。
というのは、
家族システムにより刷り込まれた、
不思議な判定基準です。

日頃、親切で平等に見えていた親戚も、
財産分与などでは、
様々な圧力や妙な呪文をかけてきます。



さあ間も無く、
直系家族エリアに到着です。

ここで降車したい方は、
目をつぶり、よ〜く心の声を聞いてから、
そっと手をあげてください。


さらに旅を続けたい方は、
太平洋を超えた先に横たわる次のエリア、
「絶対核家族エリア」に向かいます。


では、
あなたの馴染める家族システムを探して、

あるいは、
あなたの知らない、
あなたを内側から動かしている家族システムを知り、

これらは各個人に固有の性格ではないと知るために、

家族鉄道999で旅に出ましょう〜〜⁉️



なお、お土産のBGMもご用意しました。
あなたに勇気を与えてくれることでしょう。

松本零士先生に敬意を込めて…。

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