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【読書感想】西條奈加『大川契り』

2018/09/29 善人長屋シリーズ③ 読了。

西條奈加『大川契り』

住人全員が裏稼業を持つ長屋に、善人の加助さんが越してきてからシリーズ第三弾。8編の短編から成る1冊。終わり2編は完全にリンクした前後編みたいな話だった。

前作の『閻魔の世直し』でお縫ちゃんにモヤモヤしていたんだけど、今作ではそれが結構晴れた。というか、やはりお縫ちゃんというまだ悪に染まりきってない18の女子の進退がこの物語の核なんだと思う。3作目にしてお縫ちゃんの姉やら兄やらが出てきて、家族の秘密、家族の苦悩が明かされていく。こういうのを待ってた。待ってました!

長屋住人にあれこれと指図してきたお縫が今作では、自ら誰の力も借りずに動く。それを見届けることができてよかった。 

「子供質」という短編がこれまたよくて。痛みを感じないという先天的な体質の子供を、長屋の住人たちはどう関わり、どう育てるか。人間の闇や裏を知ってる者だから分かる事がある。とてもいい話だった。

厄介事を長屋衆で解決するスタンスは変わっていないんだけど、長屋の住人たちのバックボーンが仔細にそしてより深く描かれるようになったので、感情移入もしやすかった。

最後にとても好きな文章を引用する。お縫の父、儀右衛門が若かりし頃、妻お俊に掛けた言葉。 

「世間てのは、濁った池と同じだ。狭くて汚くて息苦しい。だがな、お俊さん、あんたはそこから頭を出して、花を咲かせることができる。真っ白で丸い、無垢な花だ」

裏稼業の人間だからこそ掛けられる言葉がある。お俊さんは救われ、私も勇気づけられた。

善人長屋シリーズはまだ続くだろうから、これからもお縫ちゃんを追っかけていこうと思う。どういう人生を選ぶのか、それとも選ばされるのか、お縫らしい選択を楽しみにしている。

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