「自信を失くすと自分を見失い、一気に途方にくれる」

僕がその感覚に初めて滑り落ちたのは十四歳の頃だった。

中学生活も二年目になり難易度が苛烈する勉強の反動だろうか。教室内では横行するイジメまでがつられて苛烈していたし、先生たちはやたらと怒りっぽかった。

そんな学校を面白いとは思えなかった。
僕自身はイジメの被害者でも加害者でもなかったが、友達はいなかったので、基本的には学校は眠る場所になっていた。

教室は見たくもないものが氾濫し、その残忍さは日に日にエスカレートしていた。「捕まえといた方がいいんじゃない？」と言いたくなる人間が溢れかえり、もはや目を閉じている方が楽だった。

僕は来る日も来る日も眠っていた。毎日ウイスキーを飲んで眠っていた。成長期の飲酒が未だに僕を呪っている気がする。

眠りまくる僕を気に留めるクラスメイトもいなかった。誰とも言葉を交わさずに一日が終了することがザラだった。

教室の扉が自動ドアなら開かないのではないかと思う程に、僕は教室で認識されていなかった。そんな仲間も敵もいない教室で眠り続け、一人苦しんでいた。

悪だと分かっているイジメに対しては何も出来なかった。そして人と関わることもしなかった。僕は自分がこの世に存在している必要性を見いだせなかった。

思春期特有！と言えばそれまでだが、本人にとって苦しいものは苦しい。十四歳の僕は確実に苦悩し、葛藤していた。

そんな中、意外にも僕は野球をやっていた。チームプレイが大切なスポーツだ。そんなものをやる人格ではないにも関わらず、バットを握っていたのだ。

小さい頃は本当に野球が好きだった。

地元神戸には将来、大リーグ史上に残る大記録を打ち立てるイチローさんがいた。神戸では皆がイチローに憧れては野球を始めた。

しかし中学生の部活動と化した野球はひどくつまらないものだった。

好きなものがつまらなくなる時はいつもゆるやかだ。決定的な理由があって嫌になるわけではない。細かいことが積み重なり、段々と全てが嫌になるのだ。

ダウンスイング信者だった指導者の教員はホームランを打った生徒よりも、自分の提唱するスイングでサードゴロを打つ生徒を可愛がっていた。