マガジンのカバー画像

うつわマガジン2020

37
運営しているクリエイター

#うつわ

内側を想ってろくろをひく 「はぐくみのうつわ」

内側を想ってろくろをひく 「はぐくみのうつわ」

うつわは内側を想ってつくる

ああいう形になあれと、ひとつひとつ内側から「願い」をこめながら土をひきます。ろくろびきのうつわは、内側をはぐくみ、内側から形を考えるオブジェクトです。外観デザインは使い勝手や景色として想いに残るものなので、内側から形を生んだら、外側にも注力します。

茶碗や鉢、土鍋の本体などは、ろくろの上で土を上げてゆき、中身を想像しながらひきますが、土鍋の蓋というのは「逆さま」です

もっとみる
ほおずきチョコと賢者

ほおずきチョコと賢者

粗末ではいけませんが「いいものをつくるぞ」と力んだり、相手に期待したり、想い描きすぎたりしてどこかにしがみついたりすると、ふと気づいた時、近視眼的でおもしろみのないものになっていることが往々にあって。

この作品を納品するころ、甘酸っぱいほおずきを頬ばるんだ。そんなちいさな想いくらいが、作品を丸く、赤く染めるのでしょう。

今年も、長野の森にたたずむギャラリー主催の公募展納品を無事に終え、いつも楽

もっとみる
かたづく土鍋

かたづく土鍋

「もう持ってる」
「しまう場所がない」

10年ちょっと前、土鍋コッチョリーノは1年間の試供期間を経て、初の舞台を踏んだ。自らの経験で分かっていたことなので、土鍋に対するネガティヴワードとして「収納」の問題が出ることは読み通り。ウェルカム!と、笑顔で「収納」についてご説明したことを昨日のように覚えている。

チャームとして愛される土鍋を世の中に出してゆくには?

まいにち使える土鍋であること

もっとみる
うごくカタログと展覧会

うごくカタログと展覧会

食べられないアイスクリームがとけてゆく。
社会の流れに開催を任せ、ただただ静かに、熱く暑く制作をする。とけないアイスクリームなんてないのだから。

8年ぶりに日本で過ごす夏は感慨深く。しっとりした梅雨も、悪知恵はたらくカラスにも、ビルディングにトリミングされた狭い夏空も、完璧なアスファルトがゆだるの道にも尊意が湧きあがる。比較でものを見るメガネはいらない。

完売御礼

写真は、初日開店前の百貨店

もっとみる
うごけカタログ! 「まいにち土鍋」

うごけカタログ! 「まいにち土鍋」

みちくさ枝折(みちくさしおり)

道に咲く花がないときも、道に生える草を探す。
そんな3ヵ月ちょっとを過ごした。
世界を震撼させるウィルスは、2月の横浜元町での個展にはじまり、5月の蓼科でのグループ展を攻撃し、もうすぐ始まる新宿高島屋での展覧会に、不気味にも道をひらいた。開催するのかされないのか、最後まで標識が見えなかった。

あなたは変わっただろうか

わたしは、正直にいうと、変わらない。
我が

もっとみる
ほんとうの気持ちと展覧会

ほんとうの気持ちと展覧会

地球の難事には、ザワッという大きな風が吹く。足が地から浮くような風です。ビューという音も聴こえて、耳をふさぐ。その一方でクリアな声が聞こえてきます。嵐の森では鳥が鳴くように。

今回の震撼は、悪いことばかりでなく、35年陶芸道を歩くわたしにグイッと背中を押す追い風が吹きました。

余談ですが、2011年の震災時もそうでした。あのときも、大きな風が吹き、二足のわらじの片方を、バサッと脱ぎ

もっとみる
ラッパの音と「おからピッツァ」

ラッパの音と「おからピッツァ」

ちょっと音調がずれたラッパが鳴ると、ボウルを持って豆腐を買いに行った。自作のうつわを持って近所のビストロやカフェにテイクアウトに行くたびに、そんなことを思いだす。

ある頃から、豆腐はプラスチックの容器に入り、ラッパの音は消えた。

我が家から3分の場所にある小さな豆腐屋で、先日も新鮮なおからを買った。もう10年以上前のことだが、子どもの学校で「大豆」を深く研究する課題があって、自宅で豆腐をつくる

もっとみる
はるのいのち(2)

はるのいのち(2)

着地と浮遊

タネは、どこかに着地して芽を出さねばと思っているけれど、浮遊して意思を散らし残したいとも思っている。自分でつくった料理も、外食でつくってもらう料理も、テイクアウトも、いただきものも、つかれた人も、かなしい人も、どこかに着地を求めながら、毎日ちがう日なんだから浮遊したいと思っている。

▶︎はるのいのち(1)

地球のかけら

当時よく登っていた山で、足元の土や手元の岩ばかり見なが

もっとみる