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心に巣食う心配と不安について:ある起業家のブログを読んで

ああ、むすめが元気に保育園へ行くと、原稿は進むしnoteも書ける。なにより彼女の体調を心配しなくてよい。心配する要素が1つでも少ないって、それだけでも気が楽になる。

——心配や不安は、メンタルのリソースをいちばん食う。

これ、振り返れば昔からそうだったけれど、むすめを育てる中で確信したことのひとつだ。彼女は1歳児ながらリハビリを受けていたりするので、この点において24時間体制で脳がうすーく心配し続けている状態。だから体調不良になると心配×2で余計リソースを食う。

わたしの中のイメージだけど、心配や不安は、脳のバックグラウンドで起動しているアプリだ。無意識のうちにずっとエネルギーを消費していて、心を消耗させている。ウソか本当かわからないけれど「Google mapを一度立ち上げると勝手に位置情報を追いかけるのでスマホの電池の減りがはやい」と言われていた、あれと近い感覚。

逆に言えば、生産性を存分に発揮するためには心配や不安を取り除く、もしくは意志の力で頭から追い出す必要がある。それは子どものことだけじゃなくて、キャリアやお金といった話でも一緒なんだけど。

ただ違うのは、転職やお金に関しては自分のアクションで事態が好転することは大いにあるけれど、子どもはじめ他者のことに関しては、心の持ちようしか変えられるものがないという点。

——そう、こういうとき、子どもといえど他者なんだよなあとしみじみ思う。

*  *  *

先日、こちらのブログを読んだ。起業家・小林慎和さんと、障害を持つ息子の廉之将くんの5年間を振り返った日記。結構長いので、お時間あるときにぜひ読んでみてください。

読みながら小林家の不安や心配がわたしの中で大爆発し、フレッシュネスバーガーでボロボロ泣いた。起業家が書く文章って淡々としたリズムが多いなと思うのだけど、だからこそえぐられる。

自分の努力ではどうしようもない他者のことで心配が重なり、未来への不安も色濃く、それでも自分は自分の役割を全うしなきゃいけなくて。なんというハードさ。

昔から、40歳からの10年間で、全世界を股にかけて勝負をする!その決意で生きてきました。

この「決意」の中では、子どもが障害児である可能性などこれっぽっちも考えていなかったと思う。けれども現実はそうだった。

投資額2000万円の起業2年目に0歳の子が5度入院し治療費が計1200万円かかったり(シンガポール在住のため)。日本での事業立ち上げ時に息子が意識不明になったり。6億円を調達したICOの翌日、70%の確率で身体障害・知能障害が残ると宣告されたり……。

でも立ち止まっていられない。メンタルリソースがカツカツになっても進まなきゃいけない。辞められないし、もちろん辞めたくもない。きっと鬼気迫らなければ乗り越えられない壁だっただろう。

そして思いをはせるのは小林さんの妻、つまり母親の心中だ。子どもが小さいころは覚悟したり、いや大丈夫と言い聞かせたり、ぐらんぐらんと揺れていたかもしれない。4歳になってもオムツが取れず、しかし自分で脱ぎ捨て床に排便をしたり深夜徘徊する息子と暮らすなかで、夫のように「廉もいずれは普通の子のように」と希望を持つのはむずかしかったかもしれない。

でも、妻が子育てを一手に担ったから、小林さんも歯をくいしばれた。

私はただ起業にかまけていただけでした。だからこそ、失敗は許されない。
家は留守にしがちでした。私がわがままに、起業して、仕事ができたのも、家で妻が3人の子供を育てて来てくれたためです。子供を1人育てることは、会社を1つ大きくするよりも倍は難しい。妻は3人(6社分の会社)を育てることに、奮闘してくれている。そのおかげで、私はいま働くことができている。

心配や不安を意志の力で追いやり、目の前の仕事に全力を尽くす父。
心配や不安を一手に引き受け、子どもと向き合う母。
こうして役割分担をして、そしてブログにはあまり描かれていないけれど長女と長男も何らかの役割を担い、小林家は一歩ずつ前に進んでいったんだろう。

でも、だけど。
どちらが偉いとかスゴイとかではないのは大前提として、母親の胆力にはただただ頭が下がる。だってバックグラウンドではなく四六時中、真っ正面から心配や不安と対峙し続けているんだから。

仕事と子どもとの生活は、ちょっと悩ましいときもある。

それでも、仕事があるということ——つまり心配や不安をバックグラウンドに押し込められる時間がある、もっと言えば「母」をバックグラウンドに放り込める時間があるのは、ありがたいことなのかもしれない。わたしは心配や不安をメイン画面にしてまじまじと見てしまうタイプだから、なおさらそう思うのだけど。

ああ、とりとめのないnoteになってしまった。これを書くためにブログを読みかえして、またおんおん泣いてちょっと疲れた。

でも、今夜も「母」をバックグラウンドに放り込んで、がんばらなきゃ。
いつまた保育園から、心配の種コールが来るかわからないんだから。

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