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のびるのこびり・・野草考2

全てが平安でありますように。
震災と原発事故から今日で12年。朝日の中、静かに祈りました。

  つりお君が庭に植えてくれたのびる。
春の野草の代表格と言えるでしょう。田んぼのあぜ道、川べりの土手、街中の公園では桜の木の下と目立たないけれどあちこちに生えています。とても身近で生命力いっぱいの野草です。

  東日本大震災の時に、あるおばあちゃんが野草を料理して食べ物に困っていた人たちにふるまったというニュースが広まったそうです。それを知った人たちが、野草料理に関心を持ちあちこちで野草を学ぶ教室が開かれるようになったと野草の研究をしている薬学博士の先生から聞いたことがあります。

  震災をきっかけに野草料理は広まっていきました。
身近な草が食べ物になるという驚き。しかし、昔の人にとってはあたりまえのことだったのでしょうね。

  のびるはネギやニラの仲間です。しかし人が体への負担を少なくし食べやすくするために品種改良を重ねてきた栽培種のネギ類とは違い野草ですからアクが強いです。のびるを普通の野菜と同じようにいきなり炒めたり、生のまま刻んで薬味に使ったりするのは気づかないうちに胃腸を痛めますから昔の人はあくぬきを大切にしてきたそうです。


若者が教えてくれた若杉ばあちゃん(若杉友子さん)のこと

  以前、つりお君と私がやっていた小さな店に学生スタッフとして来てくれていたNちゃんが、「若杉ばあちゃんのこと知っていますか?私は『体温を上げる料理教室』という本を読んで、おばあちゃんはスゴーイと思いました」と教えてくれました。

  大学卒業後、彼女は出身地でよもぎ蒸しの仕事を始めていました。お客さんたちの身体が冷えていることを知ってどうにかしたいと情報のアンテナを張り巡らせていた時に出合ったのが若杉ばあちゃんの本だったそうです。  食養の世界にいた私たちですが、若杉ばあちゃんのことは全く知りませんでした。情報アンテナの方向が違っていたみたい。

  それから私たちはおばあちゃんが出版していた本を(当時すでに10冊くらいあった)読み、つりお君はおばあちゃんの講演会へ行きました。地元の自然農の生産者さんがおばあちゃんの熱烈なファンになって勉強会講演会を企画してくれたのが強烈な追い風になり、私たちは野草を食養に取り入れた生き方を模索し始めました。

野草料理の基本は三度のあく抜き

  野草は天ぷら(高温でアクは飛んでしまう)以外に使う時は、基本の「三度のあく抜き」でアクをシッカリとった後、調理しましょう。・・・
ということを私は若杉ばあちゃんから教えていただきました。食料事情が厳しい非常時には和え物など揚げない料理が必要ですものね。

まず、摘んできた野草は枯れ葉などを取ってきれいに洗います。
第一のあく抜き 塩水でゆでる
第二のあく抜き 水に20分ほどさらす
第三のあく抜き 醤油:水=3:7くらいの醤油水に
   第二の処理をした野草を20分ほど漬ける。
   これは「醤油洗い」と言います。
   「アクの出た醤油水は捨てなさいよ。もったいないと言って
    使う人がいるけど、アクは悪。体に良くないからやめなさいよー」
     と若杉ばあちゃんは料理教室で毎回注意喚起します。

  三度のあく抜きをした野草を若杉ばあちゃんは「陰陽調和」といって陰の力が強い野草を、陽の力が強い味噌や醤油といった伝統的な調味料を使って様々な和え物にします。時には少量の圧搾ごま油で炒めた料理を作ってくれます。その際、野草と組み合わせる海藻、季節の野菜、乾物も絶妙なバランス。おばあちゃんの料理教室に参加するたび私は感銘するのでした。

  若杉ばあちゃんは震災のずっと以前に街から京都綾部に移住し、田畑を耕し野草を日々の食生活に取り入れる自給自足的な生活を始めました。綾部を拠点に全国各地で食養をベースとした野草料理教室をしてきました。86歳の現在も日本各地で講演会・お話会や料理教室をしています。著書も多数。

  震災の年に出版された「野草の力をいただいて」は美しいカラー写真でおばあちゃんの綾部での生活と野草料理、震災と原発事故後の世界を生き抜くための力強いメッセージが掲載されています。私のお気に入りの本です。

のびるのこびり(おやつ)


のびる我が家の庭

  のびるはこんな感じでモサモサと生えています。根元にはわらみたいに見える枯れた葉でいっぱいです。この枯れ葉が冬の寒さからのびるの球根を守っているのでしょう。のびるを掘り上げたらまずはこの枯れ葉を丁寧に取り除いた後、洗います。

 のびるの球根は、コロンと丸くて白く光っています。大きい球根は調理しないで再び土に戻すと、そこからまたたくさん生えてきます。おばあちゃんは大きい球根があると「いる人は持って帰って庭に植えなさいよ~」と言いました。そんなわけで当時料理教室に来ていた人の庭には、今年ものびるがふさふさ生えていることでしょう。

  おばあちゃんが教えてくれたのびるの料理は、すみそ和えや炒め物。おばあちゃんのアイディアで、これがあののびる?と思うほど美味しかったです。

  今、米粉を食生活に取り入れている私は米粉を使ったお団子的なものを作ってみようと思いました。お団子つくりは、私にとって二年ぶりにのびるの力を頂戴する儀式みたい。

のびる団子できあがり 形は素朴に自由に
のびる団子の中身はのびる味噌 少量を延ばします。

  ざっくりした作り方
*材料*

三度のあく抜きをしたのびるを数本
味噌
米粉 100g
塩 少々
ごま油 小さじ1
水  米粉がべとつかずに
    まとまるくらい

*のびる味噌を作る*
精の強い野草なので食べるのはあくまでも少量に。卵やお肉を食べることが多かった人の身体のバランスを取ってくれるそうです。

のびるを小口切りにします。さらにそれを叩くように切ります(一見ペースト状に見えるくらい)。そこにお好みの味噌を混ぜてよく練り「のびる味噌」にします。胃の弱い人(tancho)は球根は使わないほうが良いです。その場合は球根部を炒め物などに使い胃が丈夫な人(つりお君)に食べてもらいましょう~。

*生地つくり*
米粉は塩少々を入れ、水とごま油を加えて練ります。
まるめたとき手にべとべとした生地がつかないくらいが目安です。
それを3つくらいに分け平たくして湯気の上がった蒸し器で10~15分くらい蒸します。
蒸しあがったらピンポン玉くらいにちぎり丸めたものを手のひらで平たくつぶし、それを指で伸ばして薄めの円形にします。それを二枚作ります。たぶん直径5センチくらいかな?

一枚の生地の上に平たく薄めに「のびる味噌」を伸ばします。その上にもう一枚生地をのせふちを指で押さえてまとめます。サンド状態というか薄い団子状態といいましょうか?それを湯気の上がった蒸し器で数分蒸します。

暖かいうちに召し上がれ~。
ポン酢をかけても美味しい。
農作業で汗を流して帰ったつりお君にうけたごびり(おやつ)です。

すごく手間のように思えますが、一人分二人分ならあっという間にできます。たくさん作るとどうなのかしら?作ったことないけど・・・

**今朝の朝日浴味噌汁**
アサリの味噌汁はごちそうだ 
アサリ
わかめ、小ねぎの小口切り
昆布だし(あさりから良いお出汁がでるので昆布出汁だけでオッケー)
    アサリだけでも美味しいけれど昆布を加えると料亭並?のお味に
友達の作った米味噌、八丁味噌







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