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どうしようもなく作家映画「怪物」(是枝裕和)


たぶん、観た人の多くが何かを言いたくなるのを我慢できなくなる映画で、同時に観てない人に対してどこまで話して良いか戸惑ってしまいそうな映画。まあ、そこまで「ネタバレ」を気にする映画でもない気はしますけど。あまりSNS向きでは無さそうな映画。

粗探ししようと思えばいくらでもできそうな映画で、たぶん是枝裕和も坂元裕二もそれをわかってて作ってるような気がする。

私はあまり映画記憶力が無いので昔観た映画を細かく覚えていないことが多いです。「羅生門」と言うと大昔過ぎるので、最近だと「最後の決闘裁判」という映画に作劇が似ている気がします。決定的に違うのが「反復」みたいな作劇をしてないこと。

私が瞠目したのが、最初に「安藤サクラ視点」で永山瑛太、田中裕子をポンポンポンと見せておいて、その後の展開で「ああ、この展開だと最終的には''あの人視点"になるのかな」と思ったら、ならなかった。良い意味で予想を裏切られたと同時に、「是枝裕和監督作品だもんな」と納得しました。まあ、是枝裕和も色んな映画撮ってるし、当の本人は「是枝ワールド」みたいに言われるのを辟易してるそうですけど。

自分が好きな映画が何かの賞を取れば宣伝になるし確かに嬉しいですが、私は映画賞にそんなに過剰反応しないというか、取ったから私の何かが変わるということはないです。

という前置きで、この映画はカンヌで脚本賞とクィア・パルム賞とかいうのを受賞してます。「クィア・パルム賞」というのを実は今まで全く知らず、どういう趣旨の賞なのかもよく知りません。

「クィア」の視点で評価する賞なんだろうか?ならば、あまり気にして観る必要も無い気がします。それは、この映画のほんの一面的なものに過ぎないので。

元々ハズレが少ない監督ですが、ここ最近の是枝裕和監督作品では一番良い。

こういう題材ならいくらでも「泣かせ」にいける映画ですが、必死で泣かせようとしてくる日本映画が多い中で、「泣かせない」ところが良いです。

「好き」ということを良い年齢になって久しぶりに考えてしまった。


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