自主制作映画の最高峰「ジャッカル」

今から二十年近く前。
かつて、インターネット上で極めて局所的に流行った自主制作映画がありました。

それは「ジャッカル」

知っている人はいますでしょうか?
まだYoutubeも無い時代、誰が作っているのか、なぜ放流されているのかもわからない謎の映画。
一本、数分程度の作品が無数に作られ、それらはタイトルを偽装して流されていました。

当時のインターネットは今より遥かに無法地帯で、例えばお宝映像のタイトルを付けて、海外のグロ動画などがアップされ、拡散されることが平然と行われているような頃でした。
「ジャッカル」はその手法で、拡散されていきました。危険なタイトルが付いた映像、興味本位でダウンロードし再生したら流れ始める謎の自主制作映画。

当時はSNSも無かった時代。ネットの一部掲示板などで徐々に話題になり、アングラ系の雑誌に取り上げられたりもしました。

どのようなものかは観てもらった方が早いと思います。

こちらはその映画の噂を聞き、私が初めてダウンロードした「ジャッカル」


続いて、今のポリコレ社会だと凄まじい批判にさらされそうな精神病院三部作。


初めてこれを見た瞬間、私は謎の魅力にとりつかれました。低予算とかそういうレベルではない、映画と言うよりごっこ遊びに近い、しかしコミカルで面白い、かつブラックとかそういうレベルではないひどい内容。
何度もリピートし、ネットに上がった映像をダウンロードし続けました。

この映画に魅了された人々は他にもいました。
インターネットの掲示板で交流し、感想を語り合う。
そんな中、ジャッカルと同じように低予算で映画を撮る人たちが現れました。
それはジャッカルチルドレンと言われ、インターネット上で交流などをしていました。

そのジャッカルチルドレンの一人が……私だ。

「月光戦士シルバームーン」というタイトルで短編動画を撮ってアップしていました。私が人生で初めて制作し、公開した映画でした。
掲示板で感想を貰ったり、同じジャッカルチルドレンのクリエイターの方とオンラインで交流したりしました。
今、あの人たちはどこで何をしているのでしょうか?

それから映画の学校に進学し、自主映画を撮ったり映像会社に就職したり、独立起業したりと色々あるわけですが。
この時のジャッカルチルドレンとしての経験は、遊びのようで大きな意味のあるものでした。

一つは映像を撮る、編集する、公開する、感想を貰うというプロセスを体験できたこと。
自主映画に関わらず、クリエイターの世界に関わっていると、わかると思いますが、まず多くのクリエイター志望はそれすらできない人が多いです。
なんとなく映画が好きで映画を撮ってみたい、と思っている人の中で実際に撮って公開する人は一割もいないと思います。
企画倒れ、それ以前にネタ出しして盛り上がって終わり、いつの間にか立ち消えになった企画のどれほど多いことよ。

映画に限らず漫画家志望とか、あと同人ゲームとか演劇とか音楽でも多いですが。
どれだけくだらない内容でも最初の一本を作って公開するというのがどれだけ重要か、ある程度、アマチュアクリエイター志望の世界を見てきた人ならわかると思います。

さらに継続して、短いスパンで公開し続けるという経験ができたこと。
制作し、それを継続するというのはより高い難易度です。
この世の中、開設されたけど数個の投稿で停止しているブログやYoutubeチャンネルは星の数ほどあるでしょう?

「ジャッカル」を見てくだらないと思った者どもよ、その中でもし企画倒れとか、継続できない何かを抱えた経験がある者がいるなら、貴君らに馬鹿にする権利はないぞ!

上記、二つの経験は、後の活動において大きな礎になったと思っています。

ちなみに私は、映画における高尚さや芸術性が優れているという考え方が嫌いです。色々な経験がありますが、地味に映画系のコミュニティで「ジャッカル」が馬鹿にされたり否定されたりしてたからってのが大きいです。

「くだらない」「映画を馬鹿にしている」「見てて腹が立つ」「こんな連中に映画を撮らないで欲しい」

ふざけやがってぇぇえっ! お前らの中でジャッカルよりおもしろい映画撮れるやつどれだけいるんだよよぉっ! 

などと怒りに震えてしまいました。当時はわたくしも若ぅございましたので……。

今でも「ジャッカル」は自分の中で自主映画の最高峰です。

技術や高尚さではなく純粋に楽しんで撮る、馬鹿馬鹿しさを恐れずエンターテイメントする、子どもの様な気持ちではっちゃける。
「ジャッカル」に宿った精神は、創作において大切なことだと思います。

大人になると忘れがちな精神、ジャッカルイズム。胸の奥に刻んでおきたいです。

「戦いは人間のクズのやることだ……死ねぇぇぇえっっ!」




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