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主体的な学び2.0の時代へ

MOOC(*1)のひとつであるJMOOCなどが実施した「大学のオープン化に関する調査」結果について、JMOOCがツイッター公式アカウントでツイートをしていた。

同調査によれば、学習したい分野として「経済学&金融」や「テクノロジー&デザイン」、「統計学&データ分析」等が上位になっている。また学び直しについて、その経験者に理由を尋ねたところ、「仕事では必要なかったが自己研鑽のため」や「将来のキャリアアップのためには必要と感じたから」など、積極的な学び直しがポイントを伸ばしているとのことだ。

学び直し時代における学びの変化

米国に留学する日本人の数は、2000年代初頭に50,000人弱だったものが、2015年には約20,000人となっている。米国に留学し、ビジネスパーソンが学ぶものとして人気があったもののひとつがMBA(経営学修士)だろう。しかし米国におけるMBA受験者数は4年連続で減少をするなど(「MBA applications in the US are declining」)、MBAも変化を迫られている。MBA不要論も叫ばれるが、リカレント教育の必要性とともに、MBAも新しい形へと進化しているとのことだ(「大人の「学び直し」時代、進化するMBA」)。

さらに、JMOOCなどが実施した調査では、経済学やデータ分析なども学習したい分野として上位になっている。米国では経済学者のハル・ヴァリアン氏が作り上げたオークション理論を活用して、グーグルが大きく成長してきたことも有名だ。また、ハル・ヴァリアン氏は2009年、"I keep saying SEXY job in the next ten years will be statisticians."(これからの10年でもっともセクシーな職業は、統計家だろうって言い続けているんだ。)と述べている。さらに、ハブソン大学の教授を務めるトーマス・ダベンポート氏は、「データサイエンティストとは、高度な数学的素養を持ち、プログラミングに長けていて、好奇心旺盛で企業の経営にも興味を持つ、スーパースターである」と述べている。

データ分析がブームとなって10年近くが経ち、モデリング(機械学習・統計学)やプログラミングなど、データ分析のスキルの本質的な部分は変わらなくなってきたという話もある。たとえば、「HUNTER×HUNTERの念能力6系統で喩えるデータ分析スキル」が参考になるだろう。

人生100年時代においては、社会人としての共通能力であるOS、業界等の特性に応じた能力であるアプリを、学び直しを通じてアップデートしていくことが重要になる。

学び直しについてのデータ分析

厚生労働省『能力開発基本調査』および総務省『労働力調査』のデータを基に、2007年から2017年までの「自己啓発実施率」と「完全失業率」の関係を分析してみた。

まず、(1)「正社員・男性」、(2)「正社員以外・男性」、(3)「正社員・女性」、(4)「正社員以外・女性」に分類した。そして、被説明変数を「自己啓発実施率」、説明変数を「(男性および女性の)完全失業率」として、単回帰分析をした。

その分析結果が下図のとおりである。

まず、「正社員・男性」「正社員以外・男性」「正社員・女性」は、自己啓発実施率と完全失業率の間に「負の相関関係」がみられた(失業率が高くなると自己啓発実施率が低下する)。一方、「正社員以外・女性」は、自己啓発実施率と完全失業率の間に「正の相関関係」がみられた(失業率が高くなると自己啓発実施率が高くなる)。

(いずれもP値が0.05を大幅に超えるため統計的には有意でない。たとえば「正社員・男性」のP値は0.743。また完全失業率の決定係数も非常に低いが)次のような仮説を立てることもできるのではないだろうか。

すなわち、「正社員・男性」などは、失業率が高くなると長時間労働をすることで企業への忠誠心を示すことも考えられるだろう。もっとも、失業率が高いことは景気が後退している時期でもあり、長時間労働をすることにより企業の業績を向上させることが目標になっていることなども要因として大きいだろう。一方、「正社員以外・女性」は失業率が高くなると自己啓発実施率が高くなる傾向があるが、正社員以外の女性が自己啓発を実施する理由として、たとえば求職活動のためと仮説を立てることもできるだろう。しかし、正社員以外の女性は自己の職業について積極的なキャリアアップなどは考えておらず、消極的な自己啓発に留まっていると仮説を立てることもできるだろう。そのため、正社員以外の女性等がキャリアアップするための仕組みを構築することなども課題かもしれない。

まとめ

JMOOCなどが実施した調査結果によれば、積極的な学び直しが進んでいるとのことだ。変化が早く、複雑化した現代では、仕事で良いアウトプットをするために、学びによるインプットを増やすことがより重要になる。現在はMOOCなど、学びの方法も増えている。さらに、いくつかの失敗をしたとしてもやり直せる「やり直し」が、学び直しとともにできる社会になればよいと考える。

今後、受動的な時代から主体的な時代への変化が進むことも予想されるため、学び2.0とアップデートすることも大切だろう。


(*1)MOOCとはMassive Open Online Courseの略で、インターネット上で誰もが受講できる大規模公開オンライン講義のことをいう。

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