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別れの言葉を喉元留めて10秒間

僕には留学経験がある。

留学が決まって、実際の渡航までは確か8ヶ月程度あった。

12月に決定。渡航は翌年の8月。

日本を飛び立つ、カウントダウンは止まってくれない。

僕はあるサークルに所属していた。

カウントダウンが始まってから、ある子と仲良くなった。

僕と異なる感性を持つ子。

僕が、触れないものばっか。音楽、映画、本。色々な話をした。

この曲を聴いて、僕は何を言ったのだろうか。

けれど、僕と重なるところもある。

しょうもない事を思いつき、くすくすと笑うような素敵な子。

カウントダウンは止まってくれやしない。

その子には8月から
留学をすることは伝えた上で
何度か遊びにいった。

自分の思いは、口が裂けても吐き出せない。

僕はもうお別れするのだから。

最後の日は天気が良かった。

某遊園地に二人で行くことにした。

大阪の道路で運転は怖い。だから、電車で行った。

大阪に入ったぐらいだろうか、彼女が電車で疼くまる。

体調が悪くなってしまったらしい。やったわ、僕。

今日は辞めておく?

ううん、それでも行きたい。

次の駅で、電車から降りて、駅近くのカフェで待つように言った。

僕は急いで近くのレンタカー屋に駆け込んだ。

車は、京都で返させてください。

久しぶりの車の運転だったが、カフェの前で彼女を拾った。

覚悟が決まると、人は強くなるのだろうか?

不思議と大阪の複雑な道なんて、何も怖くなかった。

彼女の体調も復活した。楽しかったな、某遊園地。

何気ない時間が全て幸せに思える。これがお別れバフ効果か。

僕達は京都に戻る。

途中で通った大阪の激安スーパー玉手のイルミネーションが
目に焼き付いて今も離れない。最後のイルミネーション。

目が痛くなるような黄色い光が、心をざわつかせる。

留学なんか辞めて、まだまだ、遊んでいたいよ。

帰京して、車を返した。

最後は彼女を家まで送り返そうと
大通りの道を左に曲がり路地裏に入った。

この道をまっすぐ歩けば、彼女の家だそうだ。

一足一足が重い。いっそのこと、路上で二人で飲みたい気分だ。

彼女もダラダラと酒も飲んでいないように千鳥足のように歩く。

家の前まで到着した。

「今までありがとう。頑張ってくるわ、また会おうね。」

それが僕のお別れの言葉だった。

けれど、何故か喉元につっかえて、言葉が出ない。

彼女も何か言いたそうであるが、魚の骨が喉につっかえているのだろうか。

黙って対面で向かいながら、お互いに喉元から何かを吐き出そうとした。

10秒間数えて、絶対にお別れしよう。

10

9

8

7

6

5

4

3

2




私さ、・・・・

1

ぼ、

先手を取られた、情けない僕。

けれど、喉元にある言葉は今にでも外に出たくて、うずうずしていた。

本当に言いたい言葉は喉元につっかえないんだな。

と思いながら、彼女の話を聴いた。

彼女の思いに涙を流しながら、海を渡る。

ある年の5月。僕は日本に帰国した。

彼女を思う気持ちは変わらない。

喉元を通っていく。0秒間留めて。







普通にフラれた。

恋愛ってのは天気みたいなもんだな。くすくす。




紹介↓


本日もとらねこさん企画で投稿しました(いつもありがとうございます)。
お題は「忘れられない10秒間」。

今日の投稿について、昨日は小っ恥ずかしいとか言いました。今日もやはり恥ずかしかった。恋愛物はとにかく恥ずかしいです。

ただ、寝かせておいても、何かモゾモゾするので、せっかくなので投稿をしてみました。そういうことを書いていたら、そういうことを思いつくというか、また変な詩のようなものも作ったので、機会があれば、投稿致します。

是非、ご覧頂ければ幸いです。

↓昨日の文章はこちら。何も恥ずかしくなかったです!



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