マガジンのカバー画像

復讐代行

12
【完結】 内容に、性的暴力や惨虐的描写を含みますので、年齢制限は十八歳以上を推奨しています。 人々が復讐したいと望んだ時、報酬が『自身の寿命』だったらどうするーー? なお、本作… もっと読む
運営しているクリエイター

#短編小説

復讐代行10

復讐代行10

チャプター10

 その男はソファにふんぞりかえるように腰掛けていた。神門穢流(みかどえる)が用意した紅茶を一気に飲み干して、

「ー…ん」

 と、空になったティーカップをシンの少し後ろで控える穢流に差し出す。

「お茶汲みさんでしょ? 早く次淹れてきて」

 ティーカップの取手に指をかけてカップを揺らす男。

「かしこまりました」

 そんな男の横柄な態度に気を留めず穢流は軽く会釈をし、侍女の

もっとみる
復讐代行9

復讐代行9

チャプター9

 ――その男性は、表立って分かるほどの復讐心を露わにしていた。

「こいつら全員に復讐したい」

 神門穢流(みかどえる)に充てがわれたソファに座るなり、二枚の写真をテーブルに並べる。

「……」
 シンは黙ってそれらを手に取り軽く目に通す。

 一枚目は男性と同世代の男三人。二枚目は少し年上の男性が二人でこの内一人はどこかの従業員なのかエプロンをしている。

 どれも全員男性で、

もっとみる
復讐代行5

復讐代行5

チャプター5

 ――その子は中学一年生で、大人しい印象とこちらの言動に身体が怯えているのが見て取れた。

「…あり…がとう、ございます……」
 目の前のテーブルにオレンジジュースの入ったグラスが置かれると消え入りそうな声で軽く頭を下げた。

 少女がジュースを一口飲むのを見計らって、シンもまた紅茶に手をつける。

 本来なら、ここで依頼者が口を開くのを待つのだが、目の前の少女からはそんな素振りが

もっとみる
復讐代行4

復讐代行4

チャプター4

「パパに、『ふくしゅう』をしてください!」

 その少女は、出されたオレンジジュースをストローで一気に吸い上げると美味しそうに『プハ〜』と一息ついて開口一番に言った。

 少女というにはまだ幼い未就学児で六歳くらいだろうか。

「……」
 そんな少女にも顔色ひとつ変えることのないシンは少女を一瞥し、
「嬢ちゃん、歳は?」

「『じょうちゃん』じゃないよ〜。みやびなの〜」
 床に届か

もっとみる
復讐代行3

復讐代行3

チャプター3

「…俺の…妻を殺してくれ……ッ」
 
 悲鳴にも似た声で頭を下げる男性に、向かいに座っていたシンとその隣に寄り添うように佇む神門穢流(みがどえる)は互いの顔を見合わせた。

 視線をすぐに前に戻したのはシンで、テーブルにある依頼者の携帯を手に取り『お借りしても?』一言告げると、男性は応答するように小さく頷く。シンが携帯の画面を見ると、そこには一人の女性の写真画像が映し出されていた。

もっとみる

復讐代行1

チャプター1

「…頼む! 俺はアイツに復讐がしたい…!」
少年はそう言う。あてがわれたソファに腰掛けながら膝に顔がつきそうになるくらい、頭を下げている。真っ黒な学生服を着込んでいるのとまだ幼い顔立ちから少年が中学生である事は容易に想像できた。

「顔を上げてくださいな」助手なのだろうか、まるで女優のような女性が少年の前に紅茶の入ったティーカップをテーブルに置いた。

「…何で『復讐』したい?」

もっとみる