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[机上計算]自転車を軽量化する前に○○に投資しろ

こんにちは、たたみすです。
最近ヒルクライムシーズンが近づいてきてレース用バイクの軽量化を開始しました。
それでふと、「軽量化したらどれくらい速くなるんだろう?」と気になって計算しました。
結論掛けた金額に対してほぼ速くならないないということがわかりました。
(それで・・・その上で結果散財したのですがそれはまたそれです)

で、いろいろまとめてたら4500文字近いクソデカnoteになりました。

自転車の軽量化で得られるメリット

漕ぎ出しと登りが速くなります。
これは間違いありません、運動エネルギーの絶対的真理です。
逆に加速済みの下りでは重い方が速度を維持しやすいのもまた真理です。
(空力に勝る場合)
また、シクロクロスや輪行で肩へのダメージを減らせます。

軽量化でヒルクライムはどれくらい速くなるのか?

ここに8kgのバイクがあるとします。
8kgです、一般的には軽量な部類に入ります。
これを7kgに1kg軽量化した場合、どれほど登りが早くなるでしょうか。
1kgの重みを見てみましょう。

ちなみに8kgのバイクを1kg軽量化しようとすると安く見積もっても30万円は掛かります

富士ヒルで計算してみた

前提条件

ペルソナを用意します。
バイク軽量化の8kg - 7kgの1kgは体重の場合(減量)でも同じ効果です。

  1. 体重65kgの人が8kgと7kgのバイクに乗る場合

  2. 体重55kgの人が8kgと7kgのバイクに乗る場合

ペルソナ体重でパワーを25W刻みに設定します。
100W 125W, 150W…325Wまで準備します。

あくまで21km 1200m upの富士ヒル換算です、以降出てくる削減パワーやコスパはレース距離が短ければ短いほど効果が薄くなると考えてください。

こんな感じの表を準備します
縦軸はFTP、横は体重kg + バイクkgのペルソナです

これらの体重とパワーを脳内サイクリングの富士ヒルにぶち込みます。
※脳内サイクリングの数字は信頼性があります。
※僕の体重とパワーを入れて実際に富士ヒルに出た結果、参考になると感じています。
※これ以降でてくる縦軸パワーはFTPではなく、走行中に出し続けるパワーです。

リングごとに色分けしました。


体重ごとに1kg削減した結果を比較する

1kg削減した場合の数字は体重ごとで比較してみます。
(例)65kgであれば65kg + 8kgと65kg + 7kgで比較します。

体重65kgの場合

傾向を見ていきます。
パワー100Wの場合、総重量73kgが72kgになったとして2分40秒も速くなりました。
ただこの2分40秒の扱いには注意してください。
そもそもの完走時間が73kgの場合で2時間42分20秒、削減できた割合で言うと1.27%程度の時間でしかありません。
FTPが高くなるにつれて1kg削減しても削減時間と割合が減っていきます。
この表はその点に注意してご覧ください。


次に、体重55kgの場合はこのようになります。

体重55kgの場合

100Wの場合を見ると体重65kgの時よりも削減割合が大きくなっています。
これは体重に10kgも差があるため、総重量における1kgの重みが違うためです。
総重量が73kgと63kgに対する1kgなので…計算する必要もありませんね。

つまり、体重が軽ければ軽いほどバイクを軽量化する恩恵を受けます。
(体重がある人は体重を減らす余地が残っているとも言えます)


ヒルクライムにおいて重量は無限に減らすべきか?

という疑問になると思います。
そりゃあバイクを5kgにしてしまえば相当な時間削減になると思います。
バイクが0kgであれば総重量で計算するPWRも相当なものです、登りが爆速になること請け合いです。
体重も減らせば減らすだけ良いと言うことになります。

ただ、これにはパワーとお財布とエアロの問題が壁になります。
今回はお財布とエアロのことは忘れて重量とパワーだけで登りがどれくらい早くなるかみていきます。

軽量化の落とし所を見つける

重量を無限に軽量化できるのであればそれで良いのですが、お財布とあなたの肉体的な限界によってそれはできません。

自分が良いと思える落とし所が必要です。

1kgは何Wなのか?

先ほどの表で時間はわかりました。
しかし、1kgで削減できたパワーは何Wなのでしょうか。
パワー250Wの場合は富士ヒルで1kg軽量化すると40秒ほど速くなる計算でした。

では、40秒速くなるためには何W必要なのか?
1kgとは何Wなのか?

これをみていきます。

総重量ごとの1kg削減した場合のパワー対照表

縦軸は出し続けるパワーで横軸は1kg軽量化したことによる削減時間です。
その呼び方では長いので表では1Wの重みと呼んでいます。

100Wの場合に総重量を73kgを72kg 1kg軽量化した場合、1分13秒削減できます。
同様に73kgで1分13秒削減するにはパワーが+1.7W、101.7W出せば1kg軽量化したのと同じ時間で完走することができます。

体重55kg + 8kgで275Wの場合は4.2Wが1kg軽量化と同等のパワーです。

グラフにすると以下のようになります。

総パワーが高いほど1kg相当のパワーが変わってくる

ここで改めて注意したいのは青線で富士ヒル完走まで100Wで走っている人は2時間40分100Wを出し続ける必要があると言うことです。
逆に青線で300W出し続けている人は1時間でゴールします。


その軽量化、コスパいいですか?

1kgの軽量化本当に必要ですか?
FTPを数Wあげる、本番でたった3W高い数字を出す、それだけで1kgの軽量化と同等かそれ以上の効果を得られます。
もちろんハルヒルの後半激坂のような斜度10%が続くような場合は軽量化の効果は大きいでしょう。
しかし、それでも自分のFTPを上げたほうがコスパ、良くないですか?

例えば8kgのハイエンドロードバイクを7kgにする場合、いくらかかりますか?
僕は最低でも30万円は下らないと思います。

金属パーツが多用された完成車10kgのアルミロード、これであれば9kgにするのに15万円はかからないでしょう。
それでも相当な出費です。

もちろん軽量化は速攻性があります。
しかし、かけた金額に対するリターン…
その軽量化、コスパはあなたが思っていた通りでしょうか?



まずは自分の身体に投資しろ

FTPを5W上げることは不可能ですか?
いいえ、そんなことはありません。
あなたがPWR5.5倍で、FTPが300Wを超えていて、1年でFTPも10Wも伸びない、最後の足掻きで…
こんな場合は1kgの軽量化は効果があるでしょう。
しかしこんなトップアマは僕は国内で片手で数えられるほどしか知りません。

肉体への投資

まずはトレーニングや生活リズムで身体に投資しましょう。
バイク1kg分の15万円を身体に投資したらどうなるか?
大量の高品質な食事とジム、スマートトレーナーにZwift1年契約。
更に医薬品やサプリメント、睡眠の質を上げたりリラックス時間も買えるかもしれません。
まずはこの辺りに課金してFTPを10W、20Wあげたほうが遥かにヒルクライムが速くなるはずです。
もしかしたら体重が5kg近く落ちてバイクの1kgが誤差になるかもしれません。

でもバイクの軽量化は効果があるんだ

もちろん軽量化に効果はあります。
例えばハンドル周りやサドルを軽量化すると振りやすくなります。
これはスプリントやダンシングがやりやすくなります(直接速くなるわけではない)
ホイールはフィーリングがよくなるかもしれません。
輪行が楽になったりシクロクロスでバイク担ぎが楽になるかもしれません。

軽量化は無駄ではありません。
ただ、軽量化に大量の札束を投入した結果、身体への投資する原資がなくなってレース結果を残せない、速くならない。
これが一番悲しいです。

もちろんお財布に余裕がある方は両方やれば倍々効果です。
経済も回るので是非お願いします。


絞りすぎるな

トップアマのような体重でパワーが出せても1kgでは4W程度
逆に考えると体重を減らしすぎる必要がないと言うことです。
1kg減らしてパワーが5W下がったとあっては元も子もありません。
そもそもパワーは正義です。
斜度が緩むほど平坦区間は体重があってパワーがある選手が圧倒的に速いので、無理な減量をせず、自分が最もパワーを出せる体重を目指すべきです。
その辺はご自分の感覚を信じてください。

絞らなくても1分集団内で休むだけで4Wくらい簡単に削減できます。

終始激坂ヒルクライムのレース以外は軽量化を気にしすぎなくていいです。
集団のポジション、タイヤの路面抵抗、エアロフォーム。
この辺りで簡単に10W以上稼げます。

初心者とトップガチ勢ほど軽量化の恩恵を受ける

初心者の場合

初心者の場合はミドルグレードのバイクに乗っている可能性が高いです。
これは先に挙げた通りコスパ良く軽量化の恩恵を受けられます。
また、レースやイベントの走行時間が長い傾向にあるので、少しでもバイクトップ(ハンドルやサドル)が軽くできるほうがバイクを扱いやすくなるのでストレスを減らせます。
ストレス面ではガチ勢よりも恩恵を受けるでしょう。

ガチ勢

先の表とは矛盾しますが・・・ガチ勢にも効果があると思います。

真のガチ勢はタイムよりも着順を気にしています。
それは最後のスプリントに命がかかっていると言うことです。
1gでも軽く1Wでも楽に、他の選手より0.01秒でも前に。
こんな場合はたとえ50gでも貪欲に削りたいでしょう。
ヒルクライム以外でもエンデューロやクリテなどは1Wでも削りたいはずです。
そういう意味ではたとえ100gであっても効果があると言えるかもしれません。
もはや迷信じみてますが。

ただ、これを気にするのはJBCF E1 E2やヒルクラ選抜表彰台狙いの選手くらいでしょう。

コスパが悪くてもいい

軽量化、そこにはロマンがあります。
速く走りたい人ばかりではないことは重々承知です。
もちろんその方々はバイクチューニングを思う存分楽しむべきです。
僕もやれ50g軽量化しただのあのパーツ外しただので重量計に載せた時にロマンを感じます。
軽量化職人もいるのでそれが楽しければ思う存分やるべきです。
実際パーツ談義をしていると楽しいです。

こいつ矛盾したことばっかりいってんな。


最後に

僕はこの4月に15万円かけてレースバイクを300g軽量化しました。
富士ヒル換算10秒です。
どう考えてもコスパ最悪の高い買い物ですが、考え方次第です。
僕はあの選手とあの選手に勝ちたい、でもパワーで負けている………….
クライムスプリントで0.1秒勝てるかもしれない………….
そんな思いで軽量化しました
.

軽量化
そこにはロマンがあり、実利がある。
強くなりたいけどお財布が限らいる人は先に身体に投資すべき。
そんなお話でした。

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