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「魅力的な商品」に潜む “落とし穴”

column vol.950

先日、【加速する「クリエーターエコノミー」】という記事を投稿したところ

毎投稿コメントをくださるスギオカカズキさんから、このような貴重なお言葉を頂戴いたしました。

Web3系統のクリエイティブ活動が活発になると、年配の方ほど置いていかれてしまう可能性があるので、そこをなんとかしたいと思っている昨今です 😊
「やさしいメタバースが、いいな」と。

スギオカさんは普段、メタバースの普及に尽力されております。

テクノロジーの進化によって、逆にネガティブな状況に陥らないように配慮されていらっしゃるのですが、私が専門とする小売業でも最近、こういった視点がますます重要視されていますので、本日は「抵抗」について語りたいと思っております。

魅力を伝える前に「すべき」こと

まず考慮しておきたいのが、人間は新しいことにワクワクする一方、「変化(分からないこと)を嫌う」という側面もあります。

しかし、魅力的な商品、サービス、システムなど、新たに開発した提供者側は、それが「とても良いものだ」と確信するほど、「変化への抵抗感」を忘れがちになってしまいます。

そのことを取り上げた素晴らしい記事がありますので共有させていただきます。

東洋経済オンライン【魅力的でも買われない商品を変える必要な視点】です。

〈東洋経済オンライン / 2023年3月9日〉

魅力的なはずのアイデア、製品、サービスが相手に受け入れられない場合がある…

それは魅力が足りないからでもなく、説明が足りないからでもなく、相手が受け入れたくない理由=「抵抗」がある可能性が高い。

そんなことを教えてくださる記事です。

1つの面白い事例が紹介されています。

ある「世界に1つだけのフルカスタマイズの家具(主にソファ)」と謳うスタートアップ企業があるのですが、その会社の商品は他のオーダーメイド家具会社よりも約75%も安く作ることができるそうです…(驚)

まず、価格面では申し分なく魅力的です。

さらには、サービス力も高く、デザイン性も自分好みのものに仕上げることができるとのこと。

しかし、ECサイトでは問い合わせ(購入の意思)はあるものの、なかなかソファの注文が入らない

一体全体…、どうしてだか分かりますでしょうか…?

ちなみに、ターゲットは「初めて「大人」の家具を購入しようとする都会暮らしの若い世代」です。

「抵抗」は魅力を簡単に凌駕する

正解は「今、家にあるソファをどう捨てて良いか分からない若者が多かったから」です。

ソファを買ったことはあっても、捨てたことはない

「ゴミ収集車は古いソファを持って行ってくれるのだろうか?」
「持って行かないとしたら、誰に頼めばよいのだろうか?」
「頼めたとしてもその人はソファを自力で運び出せるだろうか?」
「運び出せないとしたら、誰が手伝ってくれるのだろうか?」

そういった疑問点があったことで、注文のボタンがなかなか押せなかったわけです。

つまり、この場合ですと、「ソファをどう捨てて良いか分からない」という抵抗をまずは解消しないといけないわけです。

魅力的な商品ほど、その魅力を打ち出すことに意識を向けてしまう心理を「魅力の法則」というそうです。

ここに落とし穴があるというわけですね。

他にも、あるNPOによる興味深い実験があるので共有させていただきます。

入院している子供たちを応援する手紙、『ヒーローカード』を送ってもらうよう働きかけを行っている団体なのですが、カードを書いてくれる人の数を増やしたいと思ったそうです。

現状、書いてくれる人は、依頼された人の18%

そして、協力者の数を増やすために出てきたアイデアが2つあります。

①カードがどれほど子供たちのためになっているかを説明する
②ヒーローカードを書いてくれた人に謝礼を支払う

これにもう1つ

③ヒーローカードを書きやすくするために、ひな形をいくつか提供

を加えて、それぞれどれが効果的かを実験したのです。

どれが一番効果的だったのか?

答えは、もうお分かりですね?

そうです、「③」でございます。

①②にほとんど変化が見られなかったのに対し、③は60%も上昇したのです。

「抵抗」を1つ1つ洗い出し、解消する

会議中に「これ以上ない名案」が思い浮かび、発言したら、空気が「キーン」となった経験はありませんか…?

そういう時は、聞き手が

「えっ、良い案かもしれないけど、大変かも…」

と、不安に思っているか、もしくは…

「何だアイツ、良い案出しやがって!

と、嫉妬されている可能性が高いかもしれません…(笑)

いずれにせよ、良いアイデアが浮かんだ時こそ、「抵抗の洗い出し」「解消」に目を向けないと、せっかくの良案がもったいことになる可能性があるのです…

小売業の現場でも、利益率を高めるためのDXがどんどん推進されている一方、気をつけないといけないことが山積みです。

例えば、コロナ禍「非接触ニーズ」「効率化(お客さまも含む)」のため無人レジが一気に導入されましたが、その際、お客さまによっては使い方が分からず「恐怖すら感じた」という方もいらっしゃいました。

ここでは、例えば、機械が苦手な方でもスタッフがサポートしてくれるなど安心して利用できる「初心者レジ」など、変化にストレスを感じていらっしゃる方への丁寧な対応が必要だったのです。

昨今のイノベーション時代において、次々と新しいものが生まれていることは良しとしつつも、その分、「抵抗」の落とし穴が潜んでいる可能性は高い…(汗)

「…おっ、何か思ったよりも、上手くいかないぞ…」と思った時は、「取り残されようとしている方々」、つまり「抵抗」に目を向けると、光明が見えてくるかもしれません。

私はそんなことを意識しながら、日々マーケティング活動に取り組んでいきたいと思います。

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