私たちは「休むために働いている」
column vol.669
「休むために働いている」
これは俳優の松坂桃李さんの一言です。
とても良い言葉だったので、そのままタイトルに使わせていただきました。
〈日経クロストレンド / 2022年5月20日〉
本日は大阪の某商業施設で子育て世代のインタビュー調査を行ったのですが、休日出勤(しかも出張)ということで、逆に「休む」をテーマにお話ししようと思いました(笑)
まずは冒頭の松坂さんの言葉を掘り下げてみます。
「仕事のために休む」との違い
松坂さんと言えば、売れっ子俳優さんです。
さまざまな作品のオファーを受け、それも主役など責任重大な役ばかり。
称賛も批判も浴びせられる立場にあり、常に頭の中は仕事のことでいっぱいなはずです。
しかし、第一線で活躍をし続ける中で、このような心境になられたそうです。
意欲的に作品に取り組みつつも、無理のないペースでやっていけるかということが、今の自分の課題だなと考えています。
無理は禁物。
仕事だけではなくプライベートもちゃんと大切にすることが大事だと思ったそうです。
そして、今までは「仕事のために休む」と捉えていたそうですが、今は「ちゃんと休むために仕事をする」という考え方に変わったそうです。
この二つの言葉の違いをこのように解説していらっしゃいます。
「仕事のために休む」ことと「休むために仕事をする」ことって言葉は似ていますけど、捉え方というか、意味は違いますよね。前者は体を休めたり、体をつくるというイメージですけど、後者は心のゆとりが出て、色々なことに目を向けられるようになるかなと思います。そんな生活の中で、新しい経験ができれば仕事に生かせるかもしれないし、新しい人との出会いが全く違うジャンルの仕事につながったりするかもしれない。だからこそ、「休むために仕事をする」という意識を持って、プライベートの時間を大事にしていきたいなと思います。
私は松坂さんのような第一線を歩んでいるわけではないですが…、この「休むために仕事をする」という考えには大変共感します。
仕事はあくまでも人生の一部。休んだ時にニュートラルな自分になり、思考がちゃんと人生に立脚するようになります。
例えば、職場での人間関係に悩んだりするとついつい頭の中でしこりのように残って気が安まらないことがありますが、趣味の仲間と酒を酌み交わしながら話していると、「まぁ、別に職場だけが人生ではない」と思うようになります。
結局は仕事において根を詰め過ぎると逆効果の時もあるということです。
先日【「脱力人生」で行こう】でも書きましたが、スポーツで体が力むとパフォーマスが落ちてしまうのと同じで、思考も力むと視野が狭くなることが多い。
松坂さんが「無理は禁物」と言うように、テレビやラジオでも活躍するプロデューサーの佐久間宣行さんも同様なことをお話しされています。
「人を責めず、仕組みをつくる」
たかが仕事、たかが会社。嫌なものや苦手なものはできるだけ避けて、“戦わずして”自分のできることをやっていく。それが最も大事なことだと思うんです。それでも悩んでしまう時は、「給料分働けば十分だ」と思うようにしてください。仕事に熱狂して、自分のすべてを懸ける人もいますけど、それは絶対的な正義ではなく、あくまでも性格や生き方の問題。仕事に対してハングリーじゃなくても、やるべきことをやり、給料分働けば、それで十分「プロ」ですから。
〈AERA.dot / 2022年5月24日〉
そして、「休むために仕事をする」ためには、自分の業務を絞らないといけません。
特に松坂さん世代である30代からは、組織のマネジメントを担っていく立場になる人が増えてきます。
そこで、今回お届けしたい業務を絞る工夫が2つあります。
一つは佐久間さんがAERAで語った「仕組みをつくる」という考えです。
部下が増えてくると、どうしても目の届かない部分も生まれてきます。
当然、トラブルも生まれてくるでしょう。
しかし、見えなかった部分を何とか根性で見ようとしても、上手くいかない場合もあります。
もちろん、そうならないように成長は促しつつも、ある程度トラブルが起こりにくい仕組みづくりをしていくことの方が建設的です。
よく、制作の現場では文字の間違いが起きないように校閲専門のスタッフを入れるようにしていますが、それも仕組みづくりです。
戦略や判断基準もそうですね。
例えば、「5W1Hで考えろ」とよく言われますが、それも思考のスリム化であり、見える化です。
ちゃんと「Who(ターゲット)」を考えられているかなど、企画のフレームワークを事前に共有しておけば、あとあと的外れなことにはならない。
仕組みの盲点になるような部分だけ気をつけていれば、マネジメントもだいぶ楽になります。
仕組みづくりを面倒くさがる方もいますが、実はここが大切なのです。
「自走する組織」をどのようにつくるか
もう一つは、いかに自走する組織をつくるかだと思います。
勝間和代さんの子育てについての持論が為になったので共有させていただきます。
〈8760 / 2022年5月21日〉
50代といえば、肉体的、精神的には大きな変化があり、加えて家庭環境の変化、親の介護など何かと穏やかではいられない時期でもある。急な環境の変化に、さらに心身の不調を訴える人も多い。
だからこそ、無理をせず、家族が自走するようにしていくことが大切だと指摘されております。
もちろん、中学生くらいまではしっかりと面倒見るすることは前提なのですが、小学校高学年からは徐々に自分でやることを増やし、高校生になったら自走できるようにする。
これはビジネスでも同じで、部下をいつまでにどこまでできるようにするかを計画し、なるべく自走できるように成長させていく。
そして、加えてお伝えしたいのが松坂さんの後輩への向き合い方です。
技術的なことは言えるのかもしれないですけど、演技に対する向き合い方みたいな、もっと大きなことでいうと、それはもう自分で経験して、自分の中で考えないと答えが出てこない仕事でもあるので。「松坂さんどうしたらいいですかね」っていう質問がきたら、「そんな簡単に答えなんて見つからないよ」と答えると思います。
これは全ての仕事に対して言えるのではないでしょうか?
私も45歳で副社長になっても、一向に道半ば感は消えずに生きているので、人間いくつになっても悩むものだし、答えなんて示せないということを伝えていくことも先達の教えなのかなと考えています。
いずれにせよ、私たちは「休むために働いている」。
そのための「仕組みづくり」と「自走するチームづくり」を改めて意識させてくださった本日の事例記事でした。
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