トップ人財が “競争しない” ワケ
column vol.1143
マーケティングコンサルタントをしていて思うのは、優秀な方(クライアント)ほど “良い意味で” 下手に出るのが上手いということです。
と、私に様々な課題を話し、意見を促す。
そう期待されると、こちらもあれこれアドバイスしたくなり、解決策を提示すると、それはそれは子どものようなキラキラした目で「うん、うん」と頷きながら聞いてくだるわけです。
あまりの気持ち良さに、気がつくと多分にサービスしてしまっている自分がいる…(笑)
まさに「乗せ上手」なのです。
そして、頼り上手な人ほど、成果を出し、出世している。
このような方は、きっと「競争の呪縛」から抜け出せているのでしょう。
優秀な人ほど「競争しない」
「競争の呪縛」とは何か?
立正大学客員教授で心理学者の内藤誼人先生は、会社でトップの成績を残す「優秀な社員」ほど「競争していない」と仰っています。
〈現代ビジネス / 2023年12月27日〉
なぜ、競争しないのか?
内藤先生が挙げていらっしゃる理由は2点で、最初の1点が「その方が仕事の楽しい部分」を見つけられるからです。
つまり、働きがいですね。
その根拠として、アメリカにあるロチェスター大学のエドワード・デシ先生が実施したパズルの実験を例に挙げていらっしゃいます。
こちらは、男女40名ずつの参加者を集め、パズルのピースを組んでもらうというもの。
同性のアシスタントとペアで作業をするのですが
半分のペア(A群)には
と伝え、残りの半分のペア(B群)には
とだけ伝えています。
すると、実験終了後に変化が見られたのです。
男女とも、競争していないB群のペアの方が終わった後も長くパズルを楽しんでいたという結果に。
これは、「競争に勝つ」という条件がなかった分、パズルの楽しさに向き合えたことを意味しています。
そうした人の心理があるのです。
「評価」と「成果」の優先順位は?
という意見もあるかと思います。
確かに、それはその通りですね😊
そこで聞いていただきたいのが、内藤先生が挙げたもう1つの理由です。
こちらは、ハーバード・ビジネス・スクールのボリス・グロイスバーグ先生が行った調査に基づいて、そう仰っています。
グロイスバーグ先生は、62の投資銀行のアナリストについて、『インスティチューショナル・インベスター』という雑誌でそれぞれのアナリストのランクを調べる一方で、同僚たちとの関係も調査。
その結果、トップランクのアナリストほど、同僚たちの関係が「非常に良好」だったというのです。
それは、アメリカの科学系シンクタンクであるベル研究所の調査でも同様の結果になっています。
花形研究員上位15%を調べたところ、その他の研究員よりも「ネットワークづくりに積極的」だったのです。
内藤先生は、こうしたトップ人財の方はいつでも「ちょっと助けて欲しいんだ」と頼める環境をつくり出すため、「競争するよりも共創(協調)する」傾向にあることを強調。
なのです。
「凡人」への認識が「プロ」を育む
では、なぜ「助けてもらうこと」が前提なのか?
まず、優秀な人の中には客観的に自分を見る力に長けている人が多いということが言えるでしょう。
その気持ちを後押ししてくれるのが、音楽プロデューサーのつんく♂さんの考え方です。
つんく♂さんは私からすれば「天才」だと思うのですが
とご自身を捉えていらっしゃいます。
〈東洋経済オンライン / 2023年10月19日〉
その上で「天才ではなくプロである」と仰っています。
プロとは「(曲を)完成させる人」であること。
もう少し噛み砕くと、「ファンが喜び」、「セールスを生み出せる」楽曲を完成することができる人を指します。
プロは成果を上げ続けないといけません。
一方、どんなに才能があっても、一人の力だけで毎回大ヒットを生み出すのは至難の業。
しかも、上には上がいるわけです。
だからこそ、いかに優秀なサポートメンバーを集めるかが重要になります。
人が協力し合って生み出す「集合知」は一人の天才をも凌駕する。
一般の仕事もそうですね。
たとえ凡人でも、人を巻き込むことができれば、自分が想像し得なかったような偉業を成し遂げることもある。
トップ人財は成果を出すこと(お客さんや関係者を喜ばせること)を目を向けいるからこそ、味方を得ることを優先できるのでしょう。
「評価」は後から付いてくる
まずは自分個人の評価よりも、成果を出すことを優先する。
だからこそ変なプライドを捨てて人を頼れるわけです。
そうして、コンスタントに成果を出せるから、後から評価も付いてくる。
これは、「良い仕事をすれば、お金は後から付いてくる」という話に通じますね。
この評価より成果を優先するのは結構ポイントのような気がします。
サイゼリヤ元社長の堀埜一成さんは『サイゼリヤ元社長がおすすめする図々しさ リミティングビリーフ 自分の限界を破壊する』の中で、商談の際、マウンティングを取るため知識をひけらかす相手に対して
と思うそうです。
〈DIAMOND online / 2024年2月14日〉
普通は「下に見られたくない」と対抗意識が芽生えてしまうものですが、それを「成果が出しやすくなるチャンス」と捉えるわけです。
他にも、丸亀製麺の海外進出や淡路島の新人気エリア「西海岸」の開発、経済産業省のスタートアップ育成、大阪・関西万博などなど、数々のビックプロジェクトを手掛ける事業開発の専門家、山中哲男さんは
しているそうです。
〈Forbes JAPAN / 2024年2月10日〉
3つの相談を仕事に活かしていらっしゃいます。
(3)の「種まき相談」をもう少し解説すると、たまたま出席した会食で、隣に座っている人に
と自分の取り組む課題を話しておく。
そうすると、何かのタイミングで味方になってくれたり、味方になりそうな人を引き合わせてくれたりするわけです。
相談力は、大成果を生み出すための強力な武器になるのです。
〜ということで、トップ人財が「なぜ競争しないのか?」ということを感じていただけたでしょうか?
こうした思考を持つ人こそ、偉業を成し遂げつつ、愛される人になっていくのでしょう😊
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