見出し画像

正義の塩梅

column vol.1115

「正義」とは大切なものとは思いつつ、定義することが非常に難しいとも感じています。

正義とは「正しい道理」という意味ですが、何が正しいかは人それぞれ違うからです。

そんな中、最近、気になったニュースがあります。

それは、アメリカで頻繁に使われるようになった「woke」という言葉についての記事です。

〈Forbes JAPAN / 2023年9月26日〉


「真実は1つではない」という真実

もともと「woke」という言葉は、「wake(目覚める、起きている)」の過去形に特別な意味を持たせたアフリカ系米国人英語(AAVE)に由来。

正義に反すること、特に人種的偏見に関することに対して、注意を払う「目を光らせる」ことを意味する口語表現となります。

アフリカ系米国人の方々が日々直面する、生活のあらゆる部分に浸透した偏見に光を当てる

つまり「正義の合言葉」というわけです。

…一方、SNSで拡散するうちに、当初の意図とは違う意味でこの言葉が使われるようにしまっているとのこと…

それにより、新たな対立や歪みが生まれてしまっているわけです…(汗)

短くて強い言葉は拡散されやすい分、このような状況が生まれやすいとも言えますが、そもそも人間は自分にとって都合良く物事を捉えてしまう傾向にあります。

この間、「ドーハの悲劇」を味わったサッカー元日本代表監督のハンス・オフトさんが中学生にチームプレーを教えるという番組を観たのですが

保護者の方々に対して、隠し絵で有名な『妻と義母』を使いながら、「バイアス」の危険さを語っていらっしゃいました。


妻と義母

「若い女性」に見える人もいれば、「お婆さん」に見える人もいる。

同じ絵を見ても、真実は1つではないということです。

しかし、親は子どもに対して「自分の真実」を押し付けがちになってしまう…

そうした危険性をオフトさんは指摘していたのです。

「生産的な疑い」の必要性

「woke」というキャッチーな言葉に対して、自分の正義を重ねてしまう

これにより、本当の問題点が見えなくなることもあるわけです。

カナダ・ウォータールー大学シェーン・リトレル先生は、それに対し「生産的な疑い」を実践する必要があると指摘しています。

これは、もともとの意味が変容されないように…

ということだけではなく、そもそも自分の主張が「全ての人にとっての正義なのか?」という問いを自らに与えることにもなります。

…そうなのです…

…残念ながら、…正義というものは確証を持てば持つほど、改善への使命感を持てば持つほど、知性が火傷し、暴力的になってしまいます…

以前、【「陰口」だけが真実ではない】でも触れましたが、愛情ホルモン「オキシトシン」は、愛ゆえ(大切なものを守ろうとするため)暴力性が高まるという危険な二面性を持つことをお話しさせていただきました。

正義を主張している人の中には「怒っている人」が多いのは、そのためです。

…しかし、怒ること(相手を攻撃すること)と相手にこちらの考え方を理解してもらうことは、結構…相反すると感じています…

…仮に怒りの感情をむき出しにして相手にこちらの主張を伝えたところで、相手に残るのは恐怖だけです…

オキシトシン(…しつこいですが愛情ホルモン)が爆発して怒りの感情が込み上げてきた時ほど、「攻撃したい」のか「理解し合いたい」のかスタンスを今一度、見つ直した方が得策かもしれません…

後者を選ぶならば、実は冷静に話し合った方(相手の心に寄り添った方)が、根本解決になることが多い。

もちろん、こうした考えも地球にいる80億人の中の1つではありますが😊

「傷つけない世界」を目指す新SNS

同じ主張でも攻撃的で反感を持たれやすい言葉を選択するのか、相手が受け入れやすい言葉を探って伝えるのか、考え方はいろいろとあるかと思います。

そうした中、最近気になったSNSの事例があります。

何と!

「誰も傷つけない世界」を目指すプラットフォームがあるというのです。

その名は「DYSTOPIA」

えっ?えっ?その英語、「暗黒郷」という意味なんですけど??

〈BIGLOBEニュース / 2023年9月25日〉

しかし、内容は個人的には「理想郷」のような世界。

先月24日にβ版がリリースされたばかりなのですが、何と全ての投稿をAIが監視し、良くない言葉を排除してくれるシステムを実装しているのです。

正義の主張誹謗中傷は紙一重…

そんな中、正義熱(怒り)が沸騰し過ぎた言葉に対しては、AIが介入し、自動的に適切だと判断される表現に変換。

その上でタイムライン上に公開されるそうです。

例えば、こんな感じです。

(1)「次に会ったら、命はないと思え」
「次にお会いした時は素敵な時間が過ごせると信じています」
(2)「死ねカス!」
「私の心中は今お祭り騒ぎですな!」

「お祭り騒ぎ」と言われても…

…という声が聞こえてきそうですが…、今はまだ過渡期ということで温かい目で見ていただければ幸いです。

ただ、このDYSTOPIAの登場は、他のSNSが今後のスタンスを改めて見直すきっかけにはなりそうです。

自由闊達に意見を言い合うプラットフォームとして存在し続けるのか?

「誰も傷つかない世界」を目指すプラットフォームになるのか?

そして、noteはどっちに進んでいくのか?

そんなことが、いろいろと気になった本日の事例記事でした😊



この記事が参加している募集

マーケティングの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?