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サザン・ソウルの深み O. V. Wright と James Carr

 O. V. Wright の 2作品

O. V. Wright のアルバム『Memphis Unlimited』(1973年)と

Memphis Unlimited


『Nickel and a Nail And Ace of Spades』(1971年)は

Nickel and a Nail And Ace of Spades

Southernサザン Soulソウル のすいの中の粋だと思う。なんともみる。やばいねこれは。苦しみや悲しみを歌うのではなく、実際に苦しみ悲しむ、そんな歌だ。やばすぎてけていた事もある。のちのアルバムも悪くないけれど、BackBeat Records から出されたこの2枚がなんといってもいい。
中でも象徴的なのは『Memphis Unlimited』の「He's My Son (Just the Same)」で、その歌詞の内容には胸が詰まる。表立っては語れない現実とかなしみがそこにある。Toni Morrison の小説に通じるリアリティを感じる。

He's My Son (Just the Same)

アルバムの曲は内容も調子もさまざまですが、どれにも同様の哀切あいせつな色合いがある。O. V.オーブイ Wrightライト のしぼり出すような歌声がみているからだ。

 James Carr と O. V. Wright

Deep(深い)という手垢てあかのついた言葉を使いたくはないのだけれど、O. V. Wright のこの2作と James Carr のアルバム『You Got My Mind Messed Up』(1967年)には

他にふさわしい言葉が見つからない。性別・ジャンルを超えて多くの人にカバーされた Jamesジェイムス Carrカー の逸品「The Dark End of the Street」と O. V. Wright の「He's My Son (Just the Same) 」はエッシャーだまし絵のようによじれながらなめらかに つながっていると感じる。James Carrの力強く渋い歌声も堪らない。

The Dark End of the Street

3つのアルバムとも名曲ぞろいでアメリカ南部の Soul (魂) の深部をのぞかせている。

晩年はドラック中毒とのたたかいだったという 
O. V. Wright は41才の若さで亡くなった。[英語版Wikipedia O. V. Wright 2021.12.27] 
長年 双極性障害(Bipolar disorder)で苦しめられたという James Carr が残した録音は決して多くはない。(享年58才) 
[英語版 Wikipedia James Carr 2021.12.27)]
しかし2人が残した珠玉しゅぎょくの作品は、僕の中で色褪いろあせる事はない。

James CarrのLiveライブ映像


Deep South での人気が高かった[英語版Wikipedia O. V. Wright 2021.12.27] という O. V. Wright の活気ある Liveライブ の姿は、映像にアクセスしやすくなった現在でも見かけることはあまりない。

O. V. WrightのLive映像(1975年)


Otis Redding と2人

Memphis Soul の代名詞となった Otisオーティス Reddingレディング 
(生年1941)と 前述の O. V. Wright (生年1939)とJames Carr (生年1942)は、ほぼ同世代で、いずれも1960年代前半から Memphis を拠点に歌手活動を始めています。Otis Redding は O. V. Wright のデビュー曲「That's How Strong My Love Is」(1964年)を翌年にカバーしている。(英語版 Wikipedia「That's How Strong My Love Is」2021.12.27)

That's How Strong My Love Is / O. V. Wright


That's How Strong My Love Is / Otis Redding


レコーディングのデビューは Otis Redding の「These Arms Of Mine」(1962年)が一歩先んじているが

These Arms Of Mine /  Otis Redding


同時代の Memphis の歌手として、互いに刺激を受けていたのだろう。 とはいえ Otis Redding をはじめとする Stax Records の成功 (最初の扉を開いた William Bell、"Double Dynamite" Sam & Daveなど) が Memphis Soul を牽引けんいんしたことは確かで、同世代の中でも Otis Redding は先駆者せんくしゃと云える。そして Otis Redding とバックを務める 
Booker T. & the M.G.'s が起こす相乗作用の魅力は、また格別のものがあります。

Otis Redding Live 映像


"Double Dynamite" Sam & Dave Live 映像
最初に好きになった Southern Soul は
Sam & Daveでした。


Otis Redding ら Stax Records の成功に刺激されて、Goldwax Records は James Carr を見出していく。↓


数々の名作を残した Otis Redding は飛行機事故により、26才の若さで亡くなりました。James Carr のアルバム『You Got My Mind Messed Up』が世に出た1967年の12月に起きた事故で(英語版 Wikipedia Otis Redding 2021.12.27)、前述の O. V. Wright の2作品(1971年と1973年)を Otis Redding が耳にすることはなかった。

少し幅はありますが、前に John Lennon (生年1940) について述べた↓ごとく、3人とも幼少期に第二次世界大戦の終戦をむかえた世代です。


(以前にinstagram(philosophysflattail)に書いた記事から再構成し直し、加筆したものです。)


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