これが私の

❝第②話❞「共感させてくれないドラマ」中野区、女性、36歳、会社員の方の体験談。

前回の記事がこちら

中野区、女性、36歳、会社員の方がタクシーに乗って体験したお話の続きです。

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円満とは言えない転職が続いた運転手のおじちゃん。
誰も逆らえない上司を殴りクビになった一度目、
前職で上司を殴ったことにより結束した同僚と会社を立ち上げるも裏切られた二度目、
それによって一回目のタクシー運転手の職に辿りついた。
このころは親も高齢で仕事に邁進したわけではなかったという話を聞いて、ますます興味を持ってしまった。

なぜなら、運転手さんのその時の年齢が今の私と同じ頃、
そして、親の介護の問題も今の私を悩ますことの一つ。
話を聞くことで、私の人生にもプラスになれば良いなと軽い気持ちだった。

私「妹さん家族が一緒に住んでいたってことは、ほとんど介護は必要なかったということですか?」
運「まあそうだね~、俺はほとんど何もしなかったからよく分かんなかったんだけど」
私「あ~なるほど~」
運「その結果さ~、妹家族とはだんだん仲が悪くなっていくのよ」
私「介護が原因でですか?」
運「まあそれが原因っていうのもあるんだろうけど、でもうちの親は最後まで元気で、晩年に倒れて入院するまではほとんど介護が要らないくらいだったんだよ」
私「はい」
運「それもあって、特に何も話合わずに、妹に押し付けてしまっていた形になっていたのが悪かったんじゃないかな~。介護がどうのこうので揉めることはなかったけど、次第に疎遠になって妹家族たちと協力していくことはなくなったね」
私「今はどうされてるんですか?」
運「妹家族と?」
私「はい」
運「今も疎遠だね、家族の行事で同じ場所に居合わせてもほとんど会話はしないし」
私「へ~・・・」

私が運転手さんを責める立場でもないし、特に話す言葉がなくなった。
でも、運転手さんはそのことに後悔している様子で私の質問に答えてくれた。

私「あの~、私もいま、親の介護の問題で頭を悩ますようになってきているんですけど、どうすれば一番良い終え方というのを迎えられるんですかね」運「ん~。どの方法が正解なんて分からないけどさ、コミュニケーションを取らずにいることは確実に悪い方向に進むよね。
きっとお互い良い方向に進みたいはずだから、僕の場合は妹家族ときちんと話し合えばよかったな~なんて思うよ」
私「そうですよね」
運「そうだよ、どれだけ避けても避けれれないのがこの問題だと思うから、大変だろうけど向き合っていくほうがいいんじゃない」
私「はい」
運「これがどうなったからって、お客様の人生が一生悪くなるってことはないから、これも転職と同じようにチャレンジの一つだよね」
私「そうですね、ありがとうございます」
運「あ、でも一つだけ言えるのは、僕の話は参考にならないと思うよ」
私「どういうことですか?」
運「俺と妹はね~、父親が違うんだよ」
私「は~」
運「俺が幼いころに、本当の親父はいなくなってさ。それで新しいお父さんのところにいったんだけど、その後に生まれたのが妹。
それで、介護の話も育ての親父のことだからどこかに生みの親じゃないからって無責任になる部分があったんだと思う」
私「へ~、、、」
運「生みの親でもあり育ての親でもあるおふくろは25くらいの時に亡くなってるから、介護はしてないんだよね」
私「そうだったんですね」

運転手さん、どこまで共感させてくれないんですか。
介護のお話の前に、生みの父親がいなくなっていて、新しい父親との子が妹さんで、お母さまはすでに他界されている。
介護どうのこうのの前に、転職どうのこうのの前に、そもそも生い立ちが違い過ぎる。
そして、それを感じさせないほど朗らかな雰囲気を持っている。
心の奥にはどんなものを抱えているんだろう。
私はますます運転手さんのお話を聞きたい。
酔いなんてとっくに醒めた。疲れなんて吹っ飛んでいる。偶然乗ったタクシーで聞く話が、テレビで流れるドラマなんかより面白くて、壮絶で、
共感は出来ないけど引き込まれていく。

私「ちなみに、そのころのタクシー運転手のお仕事はどんな感じだったんですか?」

運転手が朗らかな様子でいる分、気まずい空気は一切流れていないが、
私は私でどうにか次の話にいかないとこの感情が持たない。
連続ドラマの3話、物語が動き、理解も深まってきたところで3話の終わりを迎える。3話で好きな人と結ばれそう、気になる人と不倫してしまう、ピンチに追い込まれる、そんな少し心を打つお話だったら尚更はやく4話を見て、この止まった状態の物語を進めたい。

運「それなりに楽しんでましたよ。まあ、悪く見られることもあるけど世間には言えない話を聞けたり、それ言っちゃダメじゃないの?っていうお話をしてくれるお客様がいたりしたからね」
私「へ~」

聞かせてもらうじゃないの。
ジャーナリストさながら、運転手さんのお話を探りだすことに夢中になっていく私。
この運転手さんとの出会いが、その後の私に大きな影響を与えていくことに、この時は知る由もない。
たった一夜の偶然の出会いが私を変えていくことに。

運「お客様が女性だからあんまり大きくは言えないけど、女性のお客さんと関係を持つことも結構あったね~」
私「え!?ヤッちゃう・・てきな?」
運「ちょっと~、こっちがオブラートに包んだのに~」
私「ああ、すみません」

目的地まではあと5分ほど。
聞けてあと1エピソードくらいの時間が残っているまま、車の通らない道をタクシーが進んでいく。
アクセルを踏むことでシートへ押しあてられる感覚は心地よく、
このままで居たいと思わせてくれていた。


続く



(フィクションです)



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~東京の道図鑑~
玉川通り
千代田区の内堀通り、三宅坂から始まり静岡県沼津市で終わる国道246において、渋谷区明治通り交点(渋谷署前交差点)から都県境多摩川(新二子橋)の区間の通称。
この通りの地下は東急田園都市線が走り、上は首都高3号線が走る。
渋谷から三宿、三軒茶屋、駒澤大学、桜新町(サザエさんの町)、二子玉川まで沿線は商業地域が多い。
江戸時代、相模国大山にある大山阿夫利神社への参詣者のために盛んに利用され、賑わっていた。
大山阿夫利神社は日本神話に登場する大山祇大神を本社で祀る。
(Wikipedia情報)
玉川通り起点の渋谷警察署前交差点にかかる歩道橋はマンモス歩道橋と呼ばれている。
(ヨナシロ情報)


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本日は『琉球物語』という記事を更新。

「どうすればタクシーを、面白く出来るだろう?」

そんな疑問を解いていくこの活動の進展を書いていくコンテンツです。(無料のFacebook非公開グループ)
“挑戦、失敗の記録”
“絵本、漫画等のストーリーや制作秘話”
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タクシーをエンタメにしていくためのアレコレを現在進行形でお伝えしています。
また、
「今後エンタメを届ける上で必要な四角形の話」
「世の中にエンタメを組み込む」
「ヒーロになる」

といった、考察メモのような内容も書いており、
何もない今の状態からタクシーをエンタメすることを目指す奮闘の記録です。

いつか一緒に、何かを創れたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。

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