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クリエイティブの力で、世の中をポジティブに 砥川直大さん

ミイナ:本日のゲスト、「The Breakthrough Company GO」のクリエイティブディレクター、砥川直大さんです。よろしくお願いします。

砥川:よろしくお願いします。

ミイナ:ちょっと発音良く行きすぎましたかね?

砥川:ですね。カッコよかったです(笑)

ミイナ:簡単に自己紹介お願いしてもいいですか?

砥川:GOという会社でクリエイティブディレクターをやっています。砥川と申します。

宅配ピザや、途上国を支援する財団法人、ゲームアプリなど、幅広いジャンルのプロモーションを手がけ、広告業界の第一線で活躍するクリエイティブディレクターの砥川直大さんが今回のゲストです。

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砥川:GOという会社が変化と挑戦を応援している会社で、企業の新規事業の立ち上げだったりとか、スタートアップの支援なんかをやっています。具体的に言うとブランディングだったりとか、事業プランを作ったりですとか、あとは広告表現とかプロモーションとかをやっていたりします。

ミイナ:普通の広告会社とはちょっと違うっていうことなんですよね?

砥川:そうですね。もう少しコンサルティング的な要素も入ってたりですとか、ただ単純にその表現作るっていうところだけじゃなくて、もうちょっと「川上」のところから一緒に、伴走していって作っていくっていうとこをやっています。

ミイナ:例えばなんですけど、こちら(上の写真)をご覧いただけますか?一瞬、ユニクロの折り込みチラシかな?と思ったんですけど。

砥川:これは最近やった仕事で、メルカリさんの仕事なんですけれども。メルカリっていういうとどうしても“フリマアプリ”っていう風に思われがちなんですけど、ただ月間のユーザーが1千100万人以上いて、どちらかと言うともはや社会的なインフラになっていて・・・もうちょっとユーザーを広めていきたい、ってなったときに何ができるかっていうので提案したのが“チラシ”。で、チラシって言うとすごくアナログなイメージではあるんですけど、僕の母親なんかもそうですけど、毎週ちゃんと見ていて、そうすると価格が変わったりするのが分かるんですね。「今日これお得だな」って気付くじゃないですか・・・

ってことは、すごくエンゲージメント率が高いんですよね、毎週見てるから。そうするといつもと違う物が入ってきたりすると、それに反応したりとか。っていう意味で今までメルカリに触れたことがない人でもチラシを見ることによって、何か「ちょっと違うな」っていうので気づいてもらって。で、普段見ている物よりも安いものがあったりとかってすることによって興味を持ってもらえないかなっていうので作りましたね。

ミイナ:実際エンゲージメントはどうだったんですか?

砥川:すごく反応が良くて。ネットなんかでよく言われていたのは、「Webのサービスなのに紙のチラシ」っていう所の意外性で話題になっていたり。実際見た人の中でも、それきっかけで家族の会話が増えたりとか。メルカリとか多分ご覧になったりしたことあると思うんですけど・・・

ミイナ:もちろん、もちろん。

砥川:見るとすごく楽しいじゃないですか、アイテムがいっぱいあるっていう。ただ、まずそれをやったことない人たちもたくさんいるので、そのアプリ内で出来る楽しさの体験を紙にレイアウトを違う形で見せてあげる。で、一覧にしてあげることによって「あ、こんな物まで売ってるんだ」って。洋服だけでなくこんな物まで売ってるんだっていうのが見せられると面白いなっていうので、そこで話題にはなっていましたね。

ミイナ:確かにちょっと「ダウン買おうかな」っていう時にメルカリで買おうってパっと思いつかないので、あーいうチラシがあるといいですよね。

砥川:そうですね。実際出品されている物もすごく面白くて、牛乳パックの空き箱とか、トイレットペーパーの芯とか。

ミイナ:え??? そんなの欲しい人いるんですか?

砥川:て思うじゃないですか?保育園の先生とかが何か子どもたちで作りものしないといけないって時に、昔であれば多分「1家庭=1個牛乳パック持ってきてください」、とか言えたはずなんですよね。だけど、今で言うと「いや、うち牛乳飲まないんで」とか・・・。っていうのもめんどくさくなるので、先生たちが集めなきゃいけないんですけど。じゃあ先生たちが牛乳たくさん飲むかっていうと、そういうわけじゃないので、意外と牛乳空き箱20個、30個みたいのが(メルカリで)やり取りされてたりとか・・・

ミイナ:逆に言えばほかにどこに行っても手に入らない物が・・・

砥川:手に入らない物がそこにあるっていう。アパレルだけじゃなくて、意外とそのマイクロニーズに答えられるプラットフォームで、どんどんそういった形で浸透していくといいなとは思ってます。

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ミイナ:(下の写真を見て)これは大きな買い物かごに見えるんですけど。

砥川:ショッピングカート。

ミイナ:ショッピングカート・・・

砥川:自分の「志事(しごと)」、志と書いて「志事」としてクリエイティブの力で世の中をポジティブにできるといいなっていうことを思っていて、そう思ったきっかけは色々あるんですけど、震災があったころとかに自分も何かしなきゃいけないなと思っていて、その時ちょうどクリエイティブ10年ぐらいやっていて、やっぱり自分が会社で会得したものが世の中にどれぐらい役に立つんだろうなっていう興味もあって、その時にプロボノ(専門家が職業上持っているスキルや知識を活かして社会貢献するボランティア活動)っていう形でNPO団体の支援なんかをすることになって、池袋にあるホームレス支援団体のお手伝いとか、マタニティハラスメントネットワークっていうとろこのホームページを作ったりみたいなことに参加したんですね。

ミイナ:へぇ・・・プロボノっていうことは基本的にはボランティアで?

砥川:ボランティアですね

ミイナ:知恵を貸してあげるというような?

砥川:そうですね。そうするとやっぱり僕らが広告会社で伝えるとか広める、情報を整理するっていうようなことって、すごく世の中には役立つんだなっていうことに気付いて、どんどんそういうことをやっていきたいと思い・・・と同時にそのタイミングぐらいで、それなりに評価もされるようになったりして、海外の広告祭で審査員なんかをやる機会なんかもあったりして・・・海外だと大きなチェンジ、変化を生んでるものがすごくたくさんあって、それがすごくカッコよくて・・・そういうことを自分でもしたいなっていう風に思うようになって。たまたま2015年、カンヌ広告祭っていう世界で一番大きい広告の祭典があるんですけど、そこに行って、大体そういう所に行くとみんなすごく感化されて、その時一緒にいた仲間と「じゃあ帰ったら何かやろう!」と。

日本に帰ってからどんなネタがいいかなって探してる時に、たまたま僕の大学の先輩がFacebookでシェアしていた問題があって、それが何かっていうと、つくば市の総合運動公園を建設するっていう問題があって、305億円かけて運動競技場を作ろうっていう計画を市長が提案して。元々そのつくば市では「運動競技場が欲しい」っていう要望がずっとあったので、その要望に応えて作るんですっていう理由だったんですけど、でも実際問題、運動競技場は10億円もしないし、なんだったら4億、5億でも作れる・・・けれども市長は305億円かけて、ものすごい施設を作って、なんだったらラグビーワールドカップで使ってもらいたいし、オリンピックの練習にも使ってほしいみたいな・・・

ミイナ:つくば市、お金持ちですねー。

砥川:お金持ちですよね・・・。そういう計画に僕の先輩が声を上げていて、反対をしていたので・・・。それをタイムラインで見て、「あ、これ何か始まるかもしれないな」と思って連絡を取って「今どんな状況なんですか?」って聞いたら、すごく市民にとっては大事な問題だけれど、意外とみんな知らないと・・・。

ミイナ:知らない・・・

砥川:関心がないっていう話をして。でもそれって結構当然で。僕らもそうだと思うんですけど、意外と地元のことって知らないんですよね。

ミイナ:うーん。

砥川:結局、Webでニュース見てても地元のこと出てこないし、新聞はまず見ないし。仮に見てたとしても地方の所まで行かないし。じゃあ・・・ってことでそういう団体の人たちがビラ配りとかを駅前でするじゃないですか?で、そういうのは面倒くさいからもらわないじゃないですか?

ミイナ:うーん、ちょっと無視しがちですよね。

砥川:無視しがちですよね?・・・ってなるとやっぱり自分の住んでる場所のことって結構知らなくて、それだけの税金が投下される大きな問題なんだけれども、知る人が少ないっていう状況があったので、じゃあそれをもうちょっと広める、知ってもらう施策を何かできないかっていう相談を受けて作ったのがあのショッピングカートです。

ミイナ:あのショッピングカートは何を表現してるんですか?

砥川:305億円って、大きい額ではあるんですけど、それが適切な額なのかどうかが僕らにはちょっと分からないじゃないですか。運動競技場って言われたらそれぐらいかかるのかな?って。

ミイナ:パっと、305億円って数字だけ見ても・・・

砥川:現実味がないじゃないですか。その時って新国立競技場の建設で騒がれてる時で、あの競技場が2500億円ぐらいするって言われてたんですね。で、それですごく高いって言われてたので。で、国の施設で2500億なので、つくば市の施設だったら300億ぐらいはちょうどいいのかな?って人が思ってしまうというか、「額が大きすぎてわからない」っていうのもあって、僕らが可視化したかったなっていう風に思って作ったのがあのショッピングカート。要は305億円の競技場っていうのは、この市にとってこれぐらいバカでかいものなんですよっていうのを伝えるために通常のショッピングカート、適切なサイズはこれだけど、あなたたちが必要だって言ってるのはこれぐらい大きなものですからね・・・っていうのを分かりやすい形で可視化して、それでシェアされるような形にできないかなと思って作りました。

そのショッピングカートきっかけで、夕方のニュース番組とかに「これはもう一つの競技場問題」っていう形で取り上げられたりなんかもして・・・で、そうすると、つくば市の人も全国区のニュースになるので、自分たちの民度が問われるようになってきて。で、そこで少しずつ問題が広まっていったっていう状況がありました。

ミイナ:まさにクリエイティブの力で世の中に影響を及ぼしていますね。

砥川:住民投票で反対派が勝って、計画が白紙撤回されたので、それはすごくいい事例だったなとは思うんですけど、ただあれをやったから白紙撤回になったとは思ってはなくて、そもそもおかしな計画だったので、住民投票をやったらどうしても反対派が勝ってたと思うんですね。だけど、その時に僕も初めて知ったんですけど、住民投票って実は法的拘束力がなくて、仮に51対49だった場合、市長が「負けましたけど、地道に説明をしていってもうちょっと理解を得ようと思います」っていう答えも出せるんですよ。

ミイナ:あー、じゃあ参考情報にしかならない

砥川:ならないんですよ。だけどそれが6対4でもなく、7対3でもなく、最終的に8対2で反対派が勝って・・・ってことはこれだけの人が反対してるっていうことになって、「白紙撤回」ってなったので。僕らはその数字、その影響力を持たせる数字までもっていくことに寄与できたかな・・・という風には思いました。

ミイナ:「クリエイティブで世の中を変えたい」っていう発想って一番最初はどんなところから出てきたんですか?

砥川:幼少期にアメリカに住んでたことがあって、なので若干そのアメリカの無駄な正義感というか・・・

ミイナ:無駄な・・・(笑)

砥川:強いものが弱いものを守るとか、持つ者が持たざる者を救うみたいな考え方が多分ベースにあって、やっぱり自分がただ自分の為に何かをするんじゃなくて、自分がやることが誰かを喜ばせられるとか、笑顔にできるっていうことはすごく嬉しいことだと思うので。

で、料理なんかもいい例えで、僕は料理するのが好きで、それは別に自分が食べることが好きなわけじゃなくて、若干プラモデルぐらいな感じで何かモノを作るっていう行為なんですよね。

砥川さんが作った料理・・・美味しそう


ミイナ:あー、そういう感じなんですね。

砥川:そういう感じです。それを作って食べてもらって「おいしい」って言われればすごく嬉しいというか、自分が作りたいものを作って、それが人が喜んでくれるってすごくハッピーだなと思って。で、今やってる仕事がクリエイティブなので、それで誰かが喜んでくれる。それでポジティブな変化が生まれるっていうのはすごく目指してるところではあります。

人の意識を変えたりとか行動を変えるとかってすごく難しいことではあると思うんですけれども、ちょっとしたきっかけでそれって変われたりするので・・・

何年か前のパリマラソンでの事例なんですけど、アフリカの女性が頭の上の水を抱えて、水を乗せて、42.195キロ歩くんですよ・・・。で、ここにプラカードがあって、「アフリカではきれいな水を得るために毎日この距離を歩いてます」って書いてあるんですよ。

僕らの日常の尺度において、どれぐらい大変かっていうのを可視化してあげることによって、これはすごく大変だねっていう風に気付くようになって、一瞬で何億っていう寄付金が集まるっていう・・・。でも実際かかってる費用はその女性をアフリカから連れてくる渡航費とこのプラカードの印刷費だけなので、数万プラスすごいアイディアで何億も集まって、その結果アフリカで本当にきれいな水が届けれるっていう。それってアイディアの力としてすごいなと思うので、そういうことをやっぱりやりたいし、クリエイティブにはそういう可能性があるんだなっていう風に思ってます。

ミイナ:面白いですねー。そういえばわたしも友達がFacebookで「私の誕生日プレゼントはみなさんからのドネーションがいいです」っていうのでアフリカのお水に困ってる女性に届けるためのドネーションを募ってました。だから誕生日プレゼントに誰かの笑顔を選ぶっていう選択肢はとっても素敵だなと思います。

砥川:バレンタインとかで嫌々、義理チョコあげるくらいだったら、例えばその義理チョコが寄付になる・・・みたいなものがあれば、要するにあなたの名義で寄付になってますってなったら、何かそれにもちょっと意味があったりとか。だからそういう商品があったらいいなとか。

ミイナ:まだまだやっぱりそういうアイディアたくさん出したいですよね。

砥川:全然あると思います。

*****Dooo*****


(後編につづく)