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歯医者が離乳食について本気出して考えてみた

6月に「離乳食に悩むすべての親へ」と言う記事を書きました。これは当時調べたことそのまま、やり方の評価はせずにまとめたものでした。そこから5ヶ月経って、自分の中でも試行錯誤とインプット&アウトプットを重ねた結果、「こう言う手順で離乳食をすすめたら良いんじゃないか」と思う方針ができましたので書いておこうと思います。

先に自身のことを少し明らかにしておきますが、わたしは1歳11ヶ月の息子を育てる歯科医師です。息子が離乳食を始める際にはここに記す知識もなく、「授乳・離乳の支援ガイド」に沿った、一般的な離乳食を進めていました。ブレンダーでガーって混ぜて、冷凍庫で保存して、10倍粥をスプーンで与えていました。しかし、息子の反応が悪かったことと、舐めてみた10倍粥がびっくりするくらい美味しくなかったことでそのアプローチに疑問を持ち、調べたりやってみたり失敗したりあの時こうすれば良かったと思ったりして、「今もう一度離乳食をやり直せるならこうしたいな」と思う方針がたったので、未来の自分や、悩んでいるどなたかのために書こうと思った次第です。今の時点で考えるベストな方法を書いていますが、自分はこの理想に沿った離乳食を実践できてきているわけではありません。でも、たくさんの失敗や「こうすればよかった」を繰り返して導き出したもので、しかも一般的な離乳食のやり方よりずっとずっと簡単なことを提案していくので、今「何か違うな」「もっとどうにかならんのかな」「楽したい」と思っている方にも参考にしてもらえるのではないかと思っています。

さて、薄々お気づきかと思いますが、今回書くものは大前提として、厚生労働省の指針「授乳・離乳の支援ガイド」とは異なるものです。このガイドは2007年に作成され、広く一般に指針として用いられているので、最近親になった人であれば一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか。大体の病院や市が行う検診などではこれに沿った指導をしますし、たまごクラブ・ひよこクラブをはじめとする雑誌、妊産婦向けのweb媒体などもこれに沿った記事になっています。国が出してる指針なんだからそりゃそうです。

ではなぜこのガイドとは違ったことを提案するのかと言うことからはじめます。


「授乳・離乳の支援ガイド」の成立背景

このガイドの成立の背景として、「障害児のための食事支援」が元となっています。自分で食べられない障害児に、どう言う手順を踏めば食事ができるようになるのか。無理なくステップアップできるようになるのかと言う研究の成果が素晴らしいものだったので、健常児にも応用しました。しかし、自分で食べものを取りにいくことができない障害児のやり方を健常児に応用してしまったところに落とし穴があったそうです。

口の発達は口だけで起こるものではなく、全身の発達の延長で起こるもの。特に目・手・口の協調運動の結果、捕食行動が確立されていくので、それを無視して形態だけにこだわった離乳食を与えることに疑問を覚えます。スプーンで口に運んでもらって、栄養を摂取することだけが食事じゃない。「目で見て→手で取って→口に持っていくと言う捕食行動」をまるっとすべて考慮した離乳食を進めていくことが、全身の発達発育から見ると自然で理にかなっていますし、何より子どもの発達を妨げません。

ペンフィールドのホムンクルスの図をご存知でしょうか。身体の部位と、それを司る脳の部位を対応させて描かれたものです。以下はネットから拝借した図なのですが、赤の部分が目・口腔を含めた顔面。青の部分が手で、全体の8割を占めていることがわかります。つまり、目・手・口を使う捕食は、脳の大部分を使う運動なのです。厚労省の提示するガイドではどうしても「スプーンで口に運んであげること」になるかと思うのですが、そのやり方で進めていくと、こうした脳の大部分を使う運動である捕食の練習をする機会が与えられません。

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また、海外の論文では、やわらかい離乳食を長く食べすぎると、形のあるものを噛み砕いて飲み込むという一連の動作がうまくできなくなり、固形物に対する過敏反応につながると示されています。実験では10ヶ月を過ぎてからようやく形のある食物を食べはじめた子は、幼児期に入ってからうまく食べられない傾向が強いそうです。

以上のようなガイドの成立背景と、発達発育の原理や研究などを鑑みて、「咀嚼嚥下を含めた捕食を獲得するまでの練習の機会を奪わないこと」を大切にしたいと思いました。これが、今回提案する離乳食の進め方の大前提になります。

小児口腔機能発達不全症との関連

上に「咀嚼嚥下を含めた捕食の獲得」と書きましたが、捕食を獲得できないということはどういうことでしょうか。一つには、「食事の丸のみ」が挙げられます。

2015年の厚労省の「乳幼児栄養調査」では、0〜2歳の母親の約3割が「子どもが離乳食を丸のみする」と回答しています。この数字を多いと見るか少ないと見るかですが、わたしはかなり多いのではないかと思っています。調査に回答する、気づいている親だけで3割なので、潜在的にはもっと多くの子が丸のみしているのではないかとも思います。この子たちはその後、咀嚼を獲得できたのでしょうか。食物摂取のために咀嚼は必要不可欠で、生命活動に直結する行為を獲得できていないと言うことは、生命の存在および存続そのものが脅かされると言うことです。この原因のすべてがガイドに沿った離乳食の進め方と言うつもりは毛頭ないのですが、少なくとも3割の子どもが咀嚼を獲得できない状況は異常だと言わざるを得ません。

この調査の3年後の2018年に、歯科の領域では「小児口腔機能発達不全症」が保険病名になりました。口腔機能発達不全症は咀嚼や嚥下が正常にできているかどうか、構音障害はないか、口呼吸がないかで診断されますが、これらはすべて正常な口腔機能を獲得できなかった場合に起こり得ることです。2015年の調査結果から保険病名が導き出されたのかどうかは定かではないですが、少なくとも歯科保険制度(を規定している厚労省)とわたしたち歯科医師は咀嚼を獲得できなかった子どもたちへの手立ての一つとして、できることを模索しています。

できれば成長の段階で正常な口腔機能を獲得して欲しいけれど、もし間に合わなかったとしても、歯科にできることはまだあります。なので、離乳食期を終えたお子さんがいる方も気を落とさず、気になることがあれば歯科に相談して欲しいと思います。

食事の原則は三つ

さて、本題に入ります。「自力で捕食を獲得するまでの練習の機会を奪わない」ために、どういった形で離乳食を進めていけば良いのでしょうか。食事を考えるときの基準は以下の三つなので、それぞれについて考えていきたいと思います。

①どう食べるか
②何を食べるか
③どれほど食べるか

離乳食の場合、「①どう」は食べる時間、回数、食べさせ方になります。「②何を」は食事の内容、形態。③については量の話になるのですが、これは個人差が大きい部分になりますので、今回は①と②にしぼってお伝えしようと思います。

結論から言います。

①どう食べるのかについては「子どもの目・手・口の協調運動を妨害しないこと」
②何を食べるかについては「親や周りの大人と同じものを一緒に食べること」

歯科からの介入を想定して、この二つを軸にしました。以下に詳しく書きます。

①「子どもの目・手・口の協調運動を妨害しない」

ガイドの成り立ちの項でも説明しましたが、全身の発達発育の延長に口腔機能の発達発育があるので、まずは重力に負けない身体づくりをすること。羊水の海に浮かんでいた赤ちゃんが重力に抗って筋肉をつけていくことが、全身の発達発育です。ずり這い、ハイハイをしっかりすることで、顎や首の周りの筋肉が鍛えられ、嚥下ができる身体が作られる。バンホや歩行器の使用が悪いわけではないのですが、這うことで咀嚼嚥下の機能の基礎が作られていくため、できるだけこの時期の粗大運動をさせてあげてください。早く立てたり、歩けたりすることは親にとってはとっても嬉しいことで、わたしも息子に歩行器を使っていた時期もあるのですが、今は「するべき時期にするべきことをする」ことの必要性と重要性を感じています。

そして、食べるときに手を押さえないこと。食物をスプーンで口に運ぶべき時期もありますが(後述)、汚れるから、汚すからといった理由で手を押さえつけて、口だけ開けさせて食べさせることは、前述の「目・手・口の協調運動」を妨げることになります。手を伸ばしたら、その気持ちを尊重してあげてください。汚れたとしても、汚したとしても、その行為によって赤ちゃんは目も手も口も脳も使い、様々なことを学んでいます。(しかしこの境地に至るには親側の余裕が必要なので、余裕が作れる「1mmも頑張らない離乳食」については後述します。)

自分でおもちゃに手を伸ばすようになったら(生後6〜7ヶ月くらい)、おしゃぶりとして固茹でのゴボウやにんじん、セロリ、昆布、きゅうりなどを持たせるのも効果的です。(※必ず監視下で行ってください)この咀嚼の予行演習が側頭筋を刺激し、二足歩行にむけて頭蓋骨のリモデリングをしてくれます。

4ヶ月ごろ:味覚の窓に対するアプローチ

では、食べものを持たせるだけで良いのか?最初から手づかみ食べさせれば良いのか?というところですが、離乳食に入る前のステップとして「味覚の窓に対するアプローチ」をしていって欲しいと思っています。

味覚の窓とは、生後4〜7ヶ月に存在する、色々な味覚を積極的に受けいれられる時期のことです。この時に野菜や出汁の旨味などを体験させることで、その後の好き嫌いの芽を摘むことができるというボーナスタイムなので、これを逃さずにいきましょう。食事というよりかは味覚へのアプローチといった視点で、重湯や野菜を煮たスープ、出汁などをスプーンで舐めさせる程度に体験させます。(※固形物は与えない)食事ではないので、ペッと出しても飲み込まなくてもOKで、体験そのものを重視していくと、食べてくれなかった時の親側の精神的にも良いと思います。

時期としてはうつ伏せにした状態で両手をつき、頭を高くあげられるようになったのを見計って行います。これができないと嚥下が上手にできないためです。頭を高くあげられることは絶対条件ですが、他の目安としては口をもぐもぐさせたり、よだれを出し始めることが挙げられます。ぜひ、甘味以外の色々な味を経験させてあげてください。

個人的な経験談としては、味覚の窓に対するアプローチは本当に有効なんじゃないかと思っていて、この時期にいろいろ試してもらった息子は味覚のレンジが広めだと思います。1歳11ヶ月ですが野菜だけでなく、酢の物や牡蠣の内臓、梅干し、牛すじの八角煮なども食べるので、もはや窓全開です。網戸くらいは閉めた方がいいのでは?

6ヶ月ごろ:ずり這いができるようになったら

ずり這いができるようになったら、野菜ペーストなど少し粘度のあるものを与えていきます。これと並行して、野菜スティックや昆布などを持たせて、咀嚼の練習も行います。(※必ず監視下で行ってください)しばらくすると、自分で食べものに手を伸ばそうとします。ここから少しづつ手づかみ食べに移行していきます。ただし、最初のうちはうまく口に持っていけなかったり、持ってもすぐに落としてしまったりするので、この場合には口まで軽く誘導してあげたり、落としたものを拾って渡してあげたりなど、最低限の補助をします。

9ヶ月ごろ:「自分で」という気持ちを尊重する

そのうち親指と人差し指でものがつまめるようになり、「自分で」という気持ちが育ってくるので、あとはその気持ちを尊重し、自分で食べようとするその姿勢を見守ってあげてください。

1歳〜1歳半ごろ:一口量を覚える時期

前歯でかじりとり、一口量を覚えていく時期です。食材のサイズをわざと大きめにしたりするなど、練習できるような形態のものを用意してあげると良いと思います。息子も輪切りにしたふかし芋をたくさん口に含み、飲み込めなくて吐き出していました。こういう時に喉につまらせないように注意して見ることは必要ですが、危険を回避させようと小さく切って与えるだけだと、一口量がいつまでも覚えられません。わたしたちにできることは、小さな失敗を重ねていくことで得られる力があることを心の隅に置き、一口量を覚える日を待つだけです。

2歳半〜3歳ごろ:乳歯列完成

スプーンやフォークなども使えだしますが、まだ手も出ます。手で食べて全然OKです。ちょっと話はそれますが、この時期までのおやつは補食ですので、スナック菓子や甘いものではなく捕食としての役割を意識したおにぎりやふかし芋などにしていくと良いです。

※補食とは1日3回のご飯では摂取しきれないエネルギーを摂るための食事。1日のエネルギー量の10〜20%とされています。食事の補助なので砂糖が使われた甘いものではなく、食事の延長でおにぎりや芋などがオススメです。うちでは季節によってトウモロコシや栗なども出してます。

①どう食べるかまとめ

味覚の窓に対するアプローチ→手づかみ食べ+補助→手づかみ食べ

こういう流れを意識してもらえたら良いのではないかと思います。このやり方は「さくら・さくらんぼ保育園」で実際にされている離乳食のやり方を参考にさせてもらっています。
味覚の窓に対するアプローチがあること、完全な手づかみ食べではなく最低限の補助を行っていくこと、補助がいらなくなったら子どもの意思を尊重していくことなど、最近の研究の結果を踏まえた上で発達発育の延長線上に咀嚼嚥下の獲得を置いているので、バランスが良いなと思っています。離乳食のやり方に唯一絶対の方法はないので、一つの見解に固執せずいろいろ鑑みた上で、こういった離乳食を実践されておられるのが素晴らしいなと思っています。

詳細に関しては「子どもの手づかみ食べはなぜ良いのか?」という本に詳しく載っていて、保育所と家庭との環境の違いはありますが、方法論の参考になると思うので、気になる方は読んでみてください。

②「親や周りの大人と同じものを一緒に食べること」〜1mmも頑張らない離乳食〜

何を食べるかについては、「家族で同じものを一緒に食べること」に限ります。赤ちゃんだけ「味の薄いもの」や「身体にいいもの」にしたとしても、家庭の味がそうでなければあまり意味はないです。すぐに家庭の味に慣れるし。「同じものを食べる」を意識してもらうことで、医療者側にとっては家族単位への継続的な提案が可能になります。

親が健康的なものを食べて、それを取り分けるだけでいいので楽。めちゃ楽。離乳食、作らなくて良いのです。しかも家族単位で健康を考えるきっかけにもなります。具体的には、油分と脂肪分の少ない和食。と言っても、魚に小鉢に鍋に…とたくさん用意する必要はなくて、一汁一菜で大丈夫です。味噌汁は本当に万能で、何でも入れられるので肉でも魚でも野菜もきのこも入れて煮ればそれだけでおかずになります。発酵食品なので身体にも良いし。「同じものを」と書きましたが、月齢や年齢が小さいうちはさすがに大人と同じ味付けの味噌汁は濃いので、作りたてのお味噌汁をすこし水で薄めてやってください。そうすることで冷ます手間も省けて同じタイミングで食べることができるし、塩分量も調整できます。

うちでは毎週金土曜日を「一汁一菜日」にしていて、しらす丼と味噌汁とか、ふりかけご飯に豚汁とかになります。味噌汁には冷蔵庫の余り野菜やわかめ春雨切り干し大根などの乾物を手当たり次第になんでも入れて。冷蔵庫の掃除にもなるし、1mmも頑張らないので余裕が持て、その分子どもと遊べたりするし、作る時間だけでなく片付ける時間も必要ないので、寝かしつけた後一人時間でリラックスしたりと良いことばっかり最高。みんなも全然頑張らなくて良いよ。日本のお母さんは頑張り過ぎている。うちでは週5日はお弁当用のおかずを作るついでにご飯のおかずも作るスタイルなので一汁一菜日は週1〜2ですが、ベースを一汁一菜にして、準備できる余裕があるときだけ肉や魚を焼いたっていいと思うんです。

話を戻しますが、オススメに「砂糖と脂肪分が少ない和食」と書いた理由は、子どもの糖尿病や脂質異常が増えてきており、この理由が「油分と脂肪分の多い西洋風の食事」が増えてきたためと言われているからです。以下の新聞記事は香川県で行われている小学4年生全員の血液検査の結果についてのものですが、小学4年生の1割が糖尿病、同じく1割が脂質異常という結果になっています。飲み会もない、スイーツを買うのもお小遣いの範囲内の小学4年生の1割が糖尿病、脂質異常。日常的に砂糖と脂肪分を摂取していないと、このような結果にはなりません。

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例えば、ごはんとパンで比べてみましょう。ごはんは炊く時に水しか入れないので、米と水のみでできていますが、パンは作る過程で砂糖や油をたくさん使います。なので、主食をパンにすることで、ごはんの時よりもたくさんの砂糖、脂肪分を摂取してしまうことになります。付け合わせも「パンに味噌汁、焼き魚」とはなかなかならず、「パンにサラダ(ドレッシング←主に油)とオムレツ(ケチャップ←結構油が含まれている)」などになることで、ドレッシングやケチャップなどの付け合わせからも脂肪分を摂取することになります。これがごはん食だと、「ごはんと味噌汁と焼き魚」「ごはんと漬物と生姜焼き」など、付け合わせもヘルシーなものを選べる確率が高くなります。なので主食をごはんにしていく、ごはんをベースに献立を考えていくことが一番簡単で、ヘルシーな食事が作れる方法だと考えています。

この辺の話は管理栄養士である幕内秀夫先生の講演会でお聞きした話がベースになっているのですが、幕内先生の著書「子どもをじょうぶにする食事は、時間もお金も手間もかからない」にも詳しく載っているので、興味があれば読んでみられると良いかと思います。

②何を食べるかまとめ

家族全員が健康なものを食べて、それを赤ちゃんや子どもにも分け合うこと。栄養学的なことについて上述しましたが、それだけでなく、最近問題になっている「孤食(一人で晩ご飯を食べること。栄養が偏ることに加え、コミュニケーション不足、社会性の欠如が問題点として指摘されている)」も防げ、同じ味を共有することで一体感や家庭の味の記憶も生まれます。また、子どもは大人が食べるのを見て、真似をします。大人が正しい姿勢できちんと噛み、なんでも食べる姿を見せることで、良い姿をモデリング(模倣)していけます。

食を営む力=生きる力

食に対する姿勢は生きる意欲やスタンスをあらわすように思います。どういう意欲でもスタンスでも良いと思うのですが、子どもに良いものを渡していきたいと考えた時に、なんでもやってあげようとするのではなく、子どもの生まれ持った能力や生きる力を信じ続けること、そして子ども単位でなく、家族単位で見ていくことが大切なのではないかと思います。子どもだけの問題じゃないし、子どもも家族の一員だから。
頑張らなくて良い食事で大丈夫、そしてそれこそが生きる力を育むものだということが、今悩んでいるひとや、無理して頑張ってしまっているひとに届きますように。さらにその先で、咀嚼を正しく獲得できる子どもが増えたら良いなと思っています。

追記〜親が余裕を持つということ〜


「頑張らない離乳食」については厚生労働省も指針として表明していて、わたしが提案する方法とは全然違うのですが、2019年改訂版の授乳離乳の支援ガイドでは「ベビーフードで親の負担が減るなら利用してね」と書いてあります。ベビーフードはわたしも使ったことがあり、滅菌されているので夏場の旅行などには手作りのものより安全だし、味の参考になるものもあるので、便利で良いものだと思います。でも、総じて柔らかい。たいてい月齢で表記してあるので、発達の遅い子に合わせて標準的なかたさよりも柔らかく作っているのだと思いますが、1歳過ぎのものでもドロドロしています。

厚労省がわざわざベビーフード使ってねと記載した背景には、核家族化の増加と女性の就労率の増加、そして虐待の増加があげられるのではないかと推察します。核家族化により子育てが周りの大人に頼りにくくなったこと、女性の就労率の増加で(主に母親のみが)仕事と育児の両立に対して負担を感じていることは大きな問題であると認識されていて、法律や制度改正で男性の育休取得の推進が図られてきましたが、取得率は未だ10%以下に留まっています。言うて育休取ったらええという問題じゃないし、育休の間だけじゃなくてその後も大変なんやけどね。このへんは今後の男女共同社会参画に期待です。

さて、親がしんどくなったとき、つまり様々な余裕が失われたときにに起こりやすいのが虐待です。虐待は年々増加の一途をたどり、昨年は19万件を越しました。この件数の増加には虐待の意識が日本全体で高まってきていること、今までは虐待とみなされていなかった面前DV(子どもの前で配偶者を殴ること)なども虐待とみなされるようになったからですが、警察からの通報(つまり外から観測できるタイプの虐待)も増えており、日本ではいま1週間に1人の子どもが虐待によって亡くなっています。

親に余裕があれば虐待は起こらないかと言われればそういうわけではないのですが、余裕がないときに犠牲になるのは必ず弱者です。家庭の場合だと、どうしても子どもにその歪みが生じてしまいやすい。なので親が余裕を作れるよう、もっと言えば余裕を持つことで虐待を防げるよう、厚労省はベビーフードを提案している(のであろう)し、わたしは一汁一菜を提案しています。金銭的、精神的、時間的、体力的余裕は子育てには絶対に必要で、このどれもを満たすための前提となるものが「健康」であるとわたしは確信しています。健康でなかったら、色んな余裕ってなかなか生まれません。そしてその健康は持続的であったほうが良いなとも思っています。

家族全員が今日も明日も健康でいることを、離乳食をきっかけにして、考えてもらえたら幸いです。

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