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『ドリームプラン』見た直後の雑記

新宿バルト9でウィル・スミス主演『ドリームプラン』を見てきました。

テニス史上初のアフリカ系アメリカ人の世界チャンピオン姉妹かプロになる直前・直後の話で、テニス素人父ちゃんリチャードと、これに健気についていくビーナスとセレーナの姉妹の親子の挑戦。

スポーツで猛烈父ちゃんと娘・息子のストーリーって、漫画なら「巨人の星」、実在なら亀田親子、アニマル浜口・浜口京子などわりとあったりするが、そのいずれもが「親も元選手」というパターンが大半だが、ウィル・スミスが演じたリチャードは経験がない素人。そのリチャードが独自のプランで二人の娘をテニスの世界チャンピオンにしてしまった、というもの。

「巨人の星」よろしくなスポ根要素よりも、父ちゃんが二人のマネージャーになってコーチ探しや練習環境、選手権の手配をする、いわゆる“ステージママ”ならぬ“ステージパパ”を見る様子で展開。その点ではリチャードは星一徹というより亀田史郎に近い。

その娘らの方針に「ん?」と思うものがあるが、これに1980年代から1990年代前半の人種差別やアメリカ南部のゲットーの治安の悪さなどといった時代背景が盛り込まれていて、単なる親子スポ根に社会派の要素が加味されている。

加えて、この映画の構造は「シンデレラ」、『マイ・フェア・レディ』、『プリティ・ウーマン』や『ロッキー』のようなオーソドックスな成り上がりものとして楽しめる。実際に「シンデレラ」に例えるシーンや家族でディズニーアニメの「シンデレラ」を見るシーンがある。それと、終盤の試合は『ロッキー』のアポロVSロッキーに近く、奇しくも黒人・白人が逆になっている。

何しろアメリカ人は「アメリカン・ドリーム」が好きである。70年代から80年代に活躍したNWA世界チャンピオンにダスティ・ローデスというレスラーがかつていた。彼のニックネームは「アメリカン・ドリーム」で、決め台詞に「俺は配管工の息子から成り上がったんだ」がある。『ドリームプラン』の親子の物語はその「アメリカン・ドリーム」を地でいっている。夜間の警備員の親父と看護師の母親が二人三脚で娘たちを育てる。それも「巨人の星」の鬼のような厳しさよりも、ウィル・スミスが演じていることもあって、どこか楽しげ。

しかしながら、やはりビーナス・ウィリアムズとセレーナ・ウィリアムズがその後テニス界で歴史的な記録を次々に作ったスーパースター、レジェンドであるからこその映画というのはある。

この映画、起承転結で言うところの“起”が完全に抜けている。どういう風に「ドリームプラン」を作ったのか、という部分がなく、且つ、ビーナスもセレーナもいきなり才能があるテニス少女で始まってて、父ちゃんによる教えも終盤な感じ。敢えて、起承転結の“起”の部分を抜いたスマートな演出、と前向きに見ることは出来るが、ならばビーナスとセレーナの実際の基礎情報を押さえてから見た方がいい。

1990年代風味のテニス版アメリカン・ドリームとしてそこそこかな。

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