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「文化人類学×演劇」脚本シリーズNo.0『INO相談室』解説

こんにちは、TELL/てるです。
今回は、前回の記事・「文化人類学×演劇」脚本シリーズNo.0『INO相談室』について、解説していきます。
『INO相談室』のどのへんに、私が発信したいテーマである「人類学×演劇」があるのか…

『INO相談室』を書くにあたって、物語の軸にした人類学の概念は、"サピア=ウォーフの仮説”です。

サピア=ウォーフの仮説とは、ざっくりいうと「使用している言語は、その話者の考え方に影響を与えている」という仮説です。
この仮説は、アメリカの人類学・言語学者、エドワード・サピア(Edward Sapir)と同じくアメリカの言語学者、ベンジャミン・リー・ウォーフ(Benjamin Lee Whorf)によって立てられました。
このサピア・ウォーフの仮説の具体例こそ、『INO相談室』で展開された「色」の話なのです。
と、言われても…と思うはずなので、詳しく解説していきましょう。

まず、サピア・ウォーフの仮説である「使用している言語は、その話者の考え方に影響を与えている」とはどういうことか。
これは、言葉をちょっと置き換えると、「言語によって、モノの見え方や分類の仕方が異なる」ということです。その例が、虹です。
日本では、一般的に虹は7色(赤・橙・黄色・緑・青・藍色・紫)と考えられています。
しかし、ドイツやフランスでは、一般的に虹は5色(赤・橙・黄色・緑・青)と考えられています。
同じものを見ているのに、違うものが見えている…スゴイ(※個人の感想です)。

ここまで、簡単にまとめると、
〇サピア・ウォーフの仮説とは、「使用している言語は、その話者の考え方に影響を与えている」という仮説。使用している言語によって、モノの見え方や分類が異なるということ。
 例:虹
   使用している言語が、日本語→虹は7色
   使用している言語が、フランス語→虹は5色
という感じです。

では、「虹は5色」と認識している人は、「虹は7色」と認識することができるのでしょうか。この答えは、できます!です。
私が大学で人類学を学んだ際、先生が例として挙げたのは、カヤン人というインドネシアの民族でした。
カヤン人にとって、「虹は3色(確か、赤・緑・青)」です。
しかし、先生がフィールドワークをした際、カヤン人に「赤の下にさ、オレンジジュースみたいな色が見えない?」と聞くと、彼らは「見える、見える」と答えたそうです。

このように、”見え方が変わる・分類が異なる”ことに気づけるということ、逆に言えば、”違う見方がある・異なる分類がある”ことに気づけるということは、母国語の概念や自文化から自由になれるということでもあります。

話を『INO相談室』に戻すと、この「見え方が変わっちゃったな…違う見方があることに気づいちゃったな…」を表現した部分が、キジと桃太郎の虹の見方の違いのくだりと、「鬼は悪者じゃないかもしれない」という桃太郎のお悩みなのです。

ここまで、サピア・ウォーフの仮説や、その概念が『INO相談室』のどんなシーンに見え隠れしているのか、少しでもホウホウと思ってくだすったら、やったーっというところです。
一先ず、ここまでご覧いただきありがとうございました。

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