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短編小説

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何も考えていない? そんなことありません。これまでに書いた短編小説をまとめています。
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記事一覧

【短編小説】「人生劇場」最終話

 タクシー運転手の小門政明は、「とりあえず出してください」と男に言われた通り、交差点を右…

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【短編小説】「人生劇場」第4話(全5話)

 ビルの壁のパネルに、休憩90分3000円~、120分3500円~、と書かれていたホテル…

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【短編小説】「人生劇場」第3話(全5話)

 6月20日。午前11時。  昨日の夜9時から深夜の1時過ぎまで、景子は1時間おきに、夫…

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【短編小説】「人生劇場」第2話(全5話)

 森野由梨こと、本名矢井田茜は、SNSの闇バイトで知り合った鏑木という男から、今日の午前…

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連載【短編小説】「わたしの『片腕』」最終話

 携帯電話がなかった当時、顔を知らない相手と会うためには、待ち合わせ場所は文字通りピンポ…

灰かぶりの猫
3週間前
13

連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第三話

 先ほどお話したように、わたしの肩の付け根の傷跡については、母にいくら訊ねても、梨のつぶ…

灰かぶりの猫
1か月前
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連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第二話

 突然、席を外してしまって申し訳ありません。  さて、わたしが川端康成さんの『片腕』という短編小説に出会った時のお話でしたね。続きをお話します。   陰翳礼讃とばかりに、三和土のある玄関は薄暗く、ウナギの寝床のように奥に長く伸びる廊下は、薄墨を刷いたかのようです。本当にこのまま、足を踏み入れてしまっても良いものでしょうか。行きはよいよい、帰りは怖いとはこのこと、振り返った時に玄関が無くなっているなどということだけは勘弁願います。    抜き足差し足で思わず、ひっ、と声を上げ

連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第一話

 「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。  という書き出しではじまる、川端康成…

灰かぶりの猫
1か月前
38

連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」最終話

登場人物 三守琥珀  わたし。二十歳の大学生。PSYさんと向き合うことで、ふたをしていた…

灰かぶりの猫
1か月前
10

連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」第五話

登場人物 三守琥珀  わたし。二十歳の大学生。蜜柑への親友以上の感情を自覚している中、P…

灰かぶりの猫
1か月前
8

連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」第四話

登場人物 三守琥珀  わたし。二十歳の大学生。蜜柑への親友以上の感情を自覚している中、PS…

灰かぶりの猫
1か月前
10

連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」第三話

登場人物 三守琥珀  わたし。二十歳の大学生。初めて会ったPSYさんに対し、複雑な感情を…

灰かぶりの猫
1か月前
14

連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」(第二話)

登場人物 三守琥珀  わたし。二十歳の大学生。 円谷蜜柑  わたしの親友。学年は一つ上。と…

灰かぶりの猫
2か月前
11

連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」(第一話)

 花の色は   うつりにけりな   いたづらに  わが身世にふる   ながめせしまに          小野小町『古今集』より  大切なひとの肩に、そっと手を置くような、柔らかな春の雨に濡れた歩道のアスファルトが、薄墨を含み、色の濃さを増してく。キャップを被っているとはいえ、雨に濡れることも構わず、わたしが持つ灰色の相合傘から離れ、くるくると円舞曲を踊りながらおしゃべりを続ける蜜柑は、人生における不幸を、何一つ知らないように見える。     彼女の心のアルバムを開いたことが