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『ファイト・クラブ』読んだ。

おれを力いっぱい殴ってくれ、とタイラーは言った。事の始まりはぼくの慢性不眠症だ。ちっぽけな仕事と欲しくもない家具の収集に人生を奪われかけていたからだ。ぼくらはファイト・クラブで体を殴り合い、命の痛みを確かめる。タイラーは社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織はやがて巨大な騒乱計画へと驀進する――人が生きることの病いを高らかに哄笑し、アメリカ中を熱狂させた二十世紀最強のカルト・ロマンス

出典:ハヤカワ文庫HP

映画を見てからの読書だったので、物語の輪郭は把握した上で読み始めた。最初は、この原作を良く映画にできたなぁと感心していたけれど、読了したらまた違った感慨に襲われた。

とにかく、ヤバい小説なので軽い酩酊状態で少しずつ読むことにした。仕事帰りの安酒場で読んでた。

一旦その世界に入れば、勝手に映像が浮かび上がって来るので酔ってるくらいがちょうどいい。いやいや、私などは正気では読めない。

一人の人間の多様な側面に次から次へと乗り移る感覚。ひとつの存在であるのに、他の人格に憑依する感覚。統合されてるものがバラバラになる感覚。これは普段の世界では味わえない。ドキドキする。一人称で語り続ける名を持たぬ彼の中に降りていけばその世界が広がってる。

ひとりの人間の中には古代から続く遺伝子があるなんて説を持ち出すまでもなく、自分の中には恐らくまだ見ぬ自分が無数に潜んでいる。世間に褒められることもなく終る良きものから、一生出番がない方が良い代物に至るまで。

『ファイト・クラブ』ではラジカルかつネガティブなものを取り出してこれでもかと見せられる。やはり正気ではいられない。

なぜならば、それは自分の中にもあるものだから。嘘をつけない人は正気を失いやすい。正気を保つには自分自身さえもフェイクすることが必須だから。その仮面こそが人を生きやすくするパスポートだもの。

原罪を背負って生きるのが人類であれば、真正面から向き合えば狂気に至る。集団で背負っているからこそ、罪から目を背けられる。

ヤバい

ヤバい

生まれて初めて神を身近に感じた。

神は、狂気から人類を守る偉大なる〇〇だということが身に沁みた。

明日目覚めたらいつもの自分であることを祈る。

誰に?


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