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病名処方が多いからこそ薬剤師が活躍すべし(猪苓湯)

はじめに


風邪なら葛根湯
インフルエンザなら麻黄湯
鼻炎には小青竜湯
このような病名処方が調剤薬局にいると多いですね。
(病名処方でないと保険が効きませんが・・・)
病名処方のおかげで医師が処方しやすくなった漢方薬ですが、使い方を誤ると
「効かない」
「具合が悪くなった」
なんてことになります。
そこで薬剤師の出番です。

クリニックで医師と漢方について話をする間柄であれば、患者さんの状態から「血尿や皮膚の乾燥があるので猪苓湯ではなく猪苓湯合四物湯ではないか?」というお話が後日できるかもしれませんが、基本的に医師が判断した患者さんに対する見立てを処方箋調剤で確認する事はできません。
(こんなので疑義照会していたらいくら時間があっても足りないですし、診療の邪魔でクレームものですね)
ですから以下の記事は処方が間違っていないことを前提に、薬剤師が行うべき生活習慣の聞き取りと考え方について記載します。

膀胱炎による猪苓湯の処方

膀胱炎に猪苓湯


先日処方箋で猪苓湯を処方された患者さんが来店されました。
膀胱炎に対する処方です。

ここで質問です。
猪苓湯を服用するにあたって、最初に患者さんに聞き取りしなければいけない生活習慣はなんでしょうか?

猪苓湯と五苓散


猪苓湯のお話をするついでに五苓散と比較してみます。
猪苓湯と五苓散はともに5種類の生薬からなる漢方薬で、内3種類は同じ生薬が用いられます。
重複する3種類は以下の生薬です。
猪苓、茯苓、沢瀉
これはいずれも腎と膀胱の湿を除いたり、熱を冷ましたりする生薬。

2つの異なる生薬は各々以下の通りです。
猪苓湯
滑石:膀胱の熱や湿を取り除いて排尿を促す
阿膠:潤いを与え止血する

五苓散
白朮:脾を補い、水を乾燥させる
桂枝:湿熱を膀胱にあつめて利水する

どちらも利水作用のある漢方薬ですが、違いは
「膀胱の熱をとりながら利水するか」
「水が停滞していて溜まっている分を膀胱に集めて利水するか」です。

異なる2種類の生薬から読み取れるのは、「猪苓湯は五苓散よりも渇いている状態につかう漢方薬である」ということです。

薬剤師が聞くべき生活習慣


よって聞くべき生活習慣とは
「1日にどの程度水分は摂っていますか?」
となります。

「水分をいつもより多めにとって下さいね」というアドバイスも悪くはないですが、1日2リットル以上平気で飲む方もいらっしゃいます。
また、膀胱炎自体水分摂取量が少ない方に起こりやすく、すでに医師から水分摂取について指導を受けているケースが多いんです。
薬剤師として医師と同じ指導をしても
「そんなん病院で聞いたわ!」
と思われるともったいないです。

薬剤師がやるべきこと


今回のケースで薬剤師ができることは
・水分摂取量が足りないのであれば増やしてもらう
・医師の処方した猪苓湯の効果を最大限発揮してもらう
以上2点です。

「猪苓湯はおしっこを出させて膀胱炎を治す漢方薬なので、水分摂取量が少ないと効きません。」
こうお伝えしてはいかがでしょうか?
水分を摂る理由を「漢方薬が効かないから」と付加することにより、指導した生活習慣を守ることができアドヒアランスの向上を促すことができます。

まとめ


今回の患者さんは高齢で水分摂取を積極的に行わない患者さんでした。
さらには医師から水分摂取に対する指導も受けていませんでした。
排尿を促す漢方薬なのに身体の水分が足りないと効果は半減ですよね。
「漢方薬は効かない」
と実感される方が多いのは、漢方薬に合わせて適切なアドバイスを専門家ができていないことが原因の一つ
ではないでしょうか?
特に漢方薬は病名からの視点ではなく、薬からの視点でアドバイスを行う必要があります。
そもそも漢方薬は病名に対して処方されるものではないのですから。
薬剤師として、同じことを伝えるにしても医師とは異なる視点で患者さんとお話ししてはいかがでしょうか?

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