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『コンビニ人間』(村田沙耶香 著)

※ネタバレします。

【内容】
普通の人間の考え方がわからないまま生きてきた恵子は、コンビニのアルバイトをすることで、社会と繋がっていると感じる。
社会で都合よく生きるため、36歳となった恵子は、素行の悪さでコンビニやめさせられた男と同棲することになる。

第155回(2016年)芥川龍之介受賞作。


【感想】
「私は世界の正常な部品になった」という何だか、『銀河鉄道999』と『モダンタイムズ』の機械文明を呪ったようなパワーワードが、肯定的なこととして、主人公から語られるという歪な独白(?)が続く作品でした。

例えば…
子供の頃に、道で死んでいた小鳥を母親の所に持って行って焼き鳥にしようと行ったとか…
男の子同士の喧嘩を止めようと、彼らの頭にスコップを振り落としたとか…

同僚の顔の表情を真似ながら怒ると連帯感が生まれと感じ、「私は上手に『人間』出来ている」と感じる…
まるで人工知能が人間の感情というか感情的と思われる性質や行動を獲得するまでを描いているような自分語りが続いていくのを、好奇心半分、怖いものみたさ半分といった感じで、スルスルと読めました。
ここまでではないとしても、どこか理解できるし、誰もここまで突っ込んで書いていなかったリアリティを感じました。
そこから、ある種の人間論みたいなものになって行って、頭のどこかではわかっているけど、なかったことにしているようなものを見せられているような感じでした。
途中からは、ある種の怖いもの見たさもありうつも、そうしたことを楽しむエンタメ作品としても楽しめました。

芥川龍之介受賞当時、盛んに作者がメディアに出て喋っていたのを思い出しつつ、そのまんまではないにしてもこれある程度は本人のことなのだと思い、複雑な気持ちになりました。
こんなこと書いて、その後、どの面下げて今まで一緒に過ごして来た人と会うのだろう…
というか、これからの対人関係は大丈夫なのかなんて、余計なお世話なことなども考えてしまいました。

胸の悪くなるような胸糞の悪い男と暮らすとか、その男が不必要となってあっさりと捨てることを告げるのも、爽快感(?)のようなものもありつつも、なんともいえない気持ちになりました。

こんなにも狭い世界を描きながら、人間とか社会を深く描き、そして面白いという優れた作品ならではの読後感を味わうことが出来た作品でした。

https://bookmeter.com/books/11104585

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