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Dreamer's cafeの出会い

南インド・オーロヴィル編-5

オーロヴィル中心部のビジターセンターには
Dreamer’s cafeというカフェがある。

時に出会いはあるものの、主に単独行動のわたしは昼下がりのカフェのカウンター席に座り、行き交うカラフルな民族衣装を纏う人々を眺めながら、ぼんやりとこんなことを思っていた。

『…なんだか誰かと話したいな。
ひとり旅って面白いけど、こういうとき寂しいよね。これ美味しいよねって分かちあったりさ、そういうことがしたいときって絶対あるわけですよ…。今、このタイミングで! ! なんだか誰かと今……今、強烈に話がしたい!!!!!!』

そもそも何で今ひとりなんだよー神様どうにかしてよ〜もう怒るよ!と蒸し暑さに埋れながら、八つ当たり気味に内心キレてもいた。望んだ一人旅をしている人間から勝手にキレられ、神様か何かもさぞお困りだったことだろう。

するとその瞬間、左の席に座っていたインド人の男性が突然、

「Hello, 君はどこから来たの?」

そんな風に話しかけてきたのだ。

…誰かと話したいと思ったまさにその瞬間の瞬間に見知らぬ隣の人が話しかけてくる。こんなことってあるのか…??! 

たしかに相当強く念じていたものの、あまりにタイミングが良すぎる…心の隙に現れた怪しいヤツかもしれない。驚き警戒しながら、彼と話し始めた。

それがオーロヴィルで1番印象的でお世話になった人物、やさしく思慮深いインド人・バス君との出会いだった。

話してみると彼は2才年下の男性でオーロヴィルの近くにある街・ポンディシェリーの出身、オーロビンド氏達が設立したインターナショナルスクールに通いながら育ったそう。オーロヴィル建設中の工事の手伝いをしていたこともあったらしく、オーロヴィルやDreamer’s cafeが好きな彼は度々コーヒーを飲みにカフェにやってくるのだという。

日本の俳優・浅野忠信氏らが出演しているsurvive style5+のDVDが好きだというバス君(マニアック…)は、日本に親しみを持っているようだった。

『英語で話すことに慣れているようだけど、
ヒンドゥー語とか他の言語を話したりはしないの?』

「え?基本的に英語だよ。」最初は彼の英語トークが聞き取りきれないことも多かったものの、つたないこちらの英語に対し彼はカースト制のことや様々な話題を根気よく話してくれた。

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Dreamer's cafeにいた猫

『オーロヴィルってインドの中では有名なの?』

「何ともいえないね。ある程度学びを受けている人や、ネットの情報で知っている人もいるけれどインドには沢山の神様がいて、それぞれの家庭がそれぞれの神様を信仰してるからね。

例えばサラスワティー(日本の弁財天)を信仰してたら、旅行先でもその系列の寺院に行く。そういう流れがあるから自分や家系が信仰している神様や存在のこと以外は、そんなによく知らないままだったりするよね。』

その土地で生きている彼ならではのことを色々教えてくれたのだった。

また、話の流れでオーロヴィルから無料ツアーが出ている車で30分程の所にある別のエコヴィレッジ・SADHANA FORESTへ行った話になった。

サダナフォレストは森林再生のNGOで世界中からボランティアが集まっている、初めは荒野であったことが信じられないほど豊かな緑が広がっているエコビレッジである。

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サダナフォレストの写真。食器を洗うとき複数のバケツに分けて水を使うことで節水していることの説明タイム。
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どうだった?と感想を聞かれたので、

『素敵な場所だと思ったよ。世界中から人が集まって、植林してエコヴィレッジを作り上げて…。でもツアーの最後に陰謀論みたいな内容のYouTube動画がスクリーンに延々と流れてね。

西洋社会が仕組んだ社会の闇を伝えなくてはって考えだったんだろうけど、内容的に今更に感じる部分があったのと、長く暴力的な内容で…この動画を観る時間は必要なのかなって思った。』

そう率直な感想を話した。
サダナフォレストの素晴らしい取り組みに対して少しドライな感想かもしれないけど、たまたまその日のツアー内で上映されていた最後の動画があまりにも長すぎた…。すると彼はこう話した。

「たしかに、何かを声高に主張することで
また新たな問題を作り出していることがあるよね。僕はそういうときに大切なのは、物事や対象に対しての静かなる理解と参加だと思ってるよ。
silent understandingとsilent participationだね。」

…silent understandingとsilent participationか。

今の世の中、何かを主張したり拡散することが前向きで社会的な取り組みだとされることも多い。とはいえ何でもそのまま主張すればいいものではない。と感じていたわたしにとって、そのふたつの言葉は脳裏に深く刻まれた。

話し相手を強烈に願ったところへ現れたバス君。(というか隣にいた。)に、短い期間とはいえとてもお世話になることになったのだった。

オーロヴィル編-6『小川のほとりでマイペース万歳。』へ続く。

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何度も聞き返したので、書いてくれたの図。

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