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俳句

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四季折々
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#月

【俳句】夏の月2句

【俳句】夏の月2句

はかなさを糧にまばゆき夏の月

夏の夜の月にくまなき心かな

*夏の夜の月と書いてから、芭蕉の「蛸壺やはかなき夢を夏の月」は昼間の月なのではないかとの疑念が生じた。明石、須磨を訪ね、源平ゆかりの地を見、壇ノ浦での二位の尼君たちの入水へと思いは及び、海の底に沈んだ数々の調度品が、漁師が準備中の蛸壺に重なる……これら全ては日のあるうちに起こったことだろう。短夜の月よりも、青空に消えかかる月の方がよりは

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【俳句】春の月3句

【俳句】春の月3句

冬と春ゆき違へども同じ月

あひ見えず月は涙におぼろかな

見えぬほど思ひまされる春の月

【俳句】いよよ冬3句

【俳句】いよよ冬3句

今宵より冴えざえとして明き月

ひと重づつ散りゆく寒き庭の色

日の浅き喉仏にこのマフラーを

【俳句】月と木星

【俳句】月と木星

月と木星ちよいと離れてよき塩梅

*一昨日は驚くほど近かった。昨日はちょうど良かった。

【俳句】月5句

【俳句】月5句

待宵に思はず会ひし笑顔かな

月明し鴉は時をあやまてり

盗びとの心うばふやけふの月

くもりなき心をどりの名月を

願はくば月の都にまねかれたし

【俳句】秋の夕3句

【俳句】秋の夕3句

書に暮れて眼鏡にちらと秋の夕

夕月夜声なきをちの閃光や

月と我へだつるもののなき夕べ

【俳句】朔3句

【俳句】朔3句

面影を月にたよらず探しけり

朔日や花野に立ちて影もなし

見上げても月の映らぬ涙かな

【俳句】初秋の顔3句

【俳句】初秋の顔3句

あかあかとやがて定まる月の顔

寝ながらに涙の乾く秋の風

蝉と虫おなじシフトにときめきて

【俳句】初秋スケッチ3句

【俳句】初秋スケッチ3句

雨が香ややがてとぶらふ白驟雨

潦よけて踊るや月もなく

雲隠れつかの間お色直しかな

【俳句】立秋3句

【俳句】立秋3句

秋立てど夏の名残りやそのままに

秋立つ日鴫沢くんと遊びけり

秋立つと言ひしばかりに月を待つ

*公園で出会った鴫沢くんという兄弟とお友達になりました。

〈参考歌〉
心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ(西行)
今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな(素性法師)

【俳句】晩夏の夜5句

【俳句】晩夏の夜5句

待ちわびし晩夏の望月引き入れて

懇ろに蝉鳴かぬ夜の語らひや

短夜や語り尽くせぬあれやこれ

十六夜の影に隠せぬ涙かな

襟なほす浴衣に月の移り香や

【俳句】惜春3句

【俳句】惜春3句

また来年つつじの蜜の午後三時

春紫苑かたぶく風の夕まぐれ

澄みそむる月見て春を惜しみけり

【俳句】朧月3句

【俳句】朧月3句

薄藍に影しみ出でて朧月

池の面につつましげなり朧月

大人への船出ひそけき朧月

【俳句】春の月3句

【俳句】春の月3句

三日月に木星金星つるし雛

また見れば木の間がくれの月おぼろ

梅が枝に淡く匂へる月の影