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浮世絵のタコ料理を再現したら食べたことない味になった

『絵画で味わう江戸のさかな』では、魚料理が出てくるさまざまな浮世絵を紹介してきた。絵で味わう江戸の魚(肴)というコンセプトで続けてはきたが、やっぱり実際に食べてみたくなる

私は以前、江戸時代のレシピ(原文)をなんとか読んで当時の料理を再現するというチャレンジをやったことがある。その経験を活かし、今回は浮世絵に描かれたタコ料理を再現してみた

これが今回扱う『江戸名所百人美女 日本橋』(三代目歌川豊国)である。長火鉢で燗をつけた日本酒を、タコの煮物らしきものをつまみに味わっている女性の姿が描かれている。いかにも姐さんといった風情で、その佇まいは江戸の美人にふさわしい。左上のコマ絵には、歌川豊久が描いた日本橋の様子も描かれている。日本橋には当時魚市場があった。このタコも、きっと江戸前のものなのだろう。

末広恭雄 監修「魚づくし」より

江戸時代の料理書にはタコの調理法が複数紹介されており、中でも享保15年(1730年)に出た料理網目調味抄にはタコの江戸煮が紹介されている。これは、煎茶と酒でタコを柔らかく煮た後に、しょうゆと柚子で味付けした料理である(再現時には、林綾野氏の著作を参考にさせていただいた)。

煎茶と酒でタコを煮込んで美味くなるのか…?と思いながらもやってみた。作り方は簡単で、煎茶と酒を1:1で混ぜたものをタコが浸る程度に鍋にいれ、弱火でしばらく煮込む。そのあと、しょうゆと柚子をいれて10分ほどことことと煮詰めれば完成である。

煎茶と酒で煮始めた時は不思議な色をしていたが、しばらくするとタコの赤っぽい色が出てきて煮物っぽくなってくる。そこにしょうゆと柚子をいれると香りもよく、食欲が湧いてきた。

再現したタコの江戸煮

一口食べてみたが、これはうまい。煎茶と酒で煮たためか、味わいに奥行きが出ている。少し煎茶を濃く淹れすぎた気もしたが、しょうゆの染みた優しい味わいであり、酒にもあったことだろう。

江戸の魚食、楽しいではないか。引き続き史料や絵画を漁りつつ、その世界を味わっていきたいと思う。


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