私の読書日記~今日について:2024/03/11

この日になると小松左京「骨」という短編を思い出す。

地層と時系列の関係が逆転していて、浅い地層からは古い骨が、深い地層からは新しい骨が出てくるという設定があり、主人公の男が発掘作業を行っていく内に、古代・中世・近代の骨や遺物を発見しながら、最後には自分自身の骨を掘り出してしまうというホラーになっている。

この短編(短編集は1977年、初出は未確認)自体は東日本大震災と無関係である。しかしながら、作者(病死)は震災の同年に亡くなっていることから、私はどうしても作者と主人公の男の姿を重ねてしまう。瓦礫をどけていく内に自身の骨を発見してしまう小松左京が浮かんできて、だだその光景が残っている。

東日本大震災と小松左京の死は、「形而上学的な・大局的な悩みを持てる時代」の終わりを象徴していたかのようにも感じられる。そして、「骨」という短編が2つの出来事(事件)をどこかで結び付けているような気がするのだ。

【了】

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