水石鉄二(みずいし)

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水石鉄二(みずいし)

リアルでは話す仲間のいない文学の話をしたい! 記事の内容については転載等もOKです。(一応、引用していただけると嬉しいですが。) 小説もたまに。

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    今までに書いてきた読書に関するエッセイやコラムをまとめてみました。

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    色んな小説に関してエッセイを書いてみました。

  • 三島由紀夫シリーズ

    三島由紀夫作品の考察記事・解説記事をまとめました。 ラインナップは、 『金閣寺』全10章分(完結済) 『美徳のよろめき』 『豊饒の海』シリーズ(不定期更新) 短編小説などなど……。

  • エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』読書メモ

    エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』の読書メモをまとめています。(不定期更新)

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【掌編小説】パフェ攻城戦

※※ヘッダー画像は bluedaisy さまより  パフェというのは、城のように複雑な構造を持っている。  下地の層にはスポンジケーキやムースの石垣。  高級なものだと、ティラミス、タピオカ入り紅茶のムース、ミルフィーユ、苺のババロアと、4層にもなる。一世を風靡したスイーツたちが積み重なる様は、ローマの城壁のような歴史と伝統を感じさせる。  マンゴー、オレンジ、バナナ。器の外周はカットフルーツで彩られていた。中心にはホイップクリームで化粧したプリンの城。白鷺城よりは美しく

    • 私の読書日記~現状報告:2024/03/15

       今回は現状報告。 進行中・考案中の企画 まず、佐々木敦『ニッポンの文学』読書メモが遅れている件に関しては申し訳ありません。本格・新本格ミステリを通過しなかったために、ミステリ史がまとめられない状況で、有名処を拾っている最中です。  ウィーナー『サイバネティックス』とドーキンス『利己的な遺伝子』は、現代SFの作家に重大な影響を与えている科学書ということで、読んでも良いのかなと思い、読書メモ企画を考えています。  創元SF短編賞の精読について。創元SF短編賞はエンタメとし

      • 私の読書日記~今日について:2024/03/11

        この日になると小松左京「骨」という短編を思い出す。 地層と時系列の関係が逆転していて、浅い地層からは古い骨が、深い地層からは新しい骨が出てくるという設定があり、主人公の男が発掘作業を行っていく内に、古代・中世・近代の骨や遺物を発見しながら、最後には自分自身の骨を掘り出してしまうというホラーになっている。 この短編(短編集は1977年、初出は未確認)自体は東日本大震災と無関係である。しかしながら、作者(病死)は震災の同年に亡くなっていることから、私はどうしても作者と主人公の

        • 佐々木敦『ニッポンの文学』読書メモ02

          本シリーズは続きものです。前回はコチラ ▼ 第二章 「八〇年代」と作家たち 第二章では、80年代を代表する純文学作家が取り上げられる。具体的には、村上龍・高橋源一郎・島田雅彦・吉本ばなな(よしもとばなな)・田中康夫の5名である。自分にとっては「代表作しか読んでいない作家」であり、「デビューの経緯は聞き馴染んでいるのだけれども、語れるほどには読んでいない作家」でもある。私が第二章を語るのはとても気まずい。 ちょっとした年表(第二章)  ということで、最初に第二章に登場する

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        【掌編小説】パフェ攻城戦

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        • 夏目漱石『夢十夜』関連記事
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          佐々木敦『ニッポンの文学』読書メモ01

           佐々木敦『ニッポンの文学』(講談社現代新書)を読んだ際の所感を書いていく。読書メモなので、書きたいことを丁寧に整理しているわけではない。今回は、全体の構成の紹介とプロローグ、第一章まで。 全体の構成 全体の構成は上記のようになっている。  最初に、プロローグにて、著者は①「(純)文学」もSFやミステリのような一ジャンルとして扱うこと、②1970年代から2010年代前半までの文学史(小説史)を示すこと、を宣言する。  前半で紹介されるのは、70年代から80年代までの各ジ

          佐々木敦『ニッポンの文学』読書メモ01

          読書日記~20世紀約1,000冊分の年表:2024/01/31

           前回の記事では、20世紀(正確には1900-2000年)の小説作品約1,000冊を選んで、その年表を作成したことを報告した。配布したスプレッドシートのリンクは下に置くことにする。  20世紀の小説・約1,000冊分の年表を作成するのは大変だったけれど、仕事はまだ終わっていない。入れそこなった作品を加え、出典や書誌情報・備考欄の整備もしなければならない。(やらないまま公開してしまったのはすみません。)  さらに、19世紀の文学作品年表や平成・令和の小説作品年表にもそのうち

          読書日記~20世紀約1,000冊分の年表:2024/01/31

          20世紀の小説作品年表(ジャンル混合)ができました!

          20世紀(正確には1900-2000年)の小説作品年表を作成してみました。ジャンル混合なので、純文学やSF・ミステリなどに特化している方でも意外な発見があるかと思います。作業工程や補足説明は脇に置きましょう。まずは完成品をどうぞ。 小説作品年表(完成品)スプレッドシートのリンクをご用意しました。ぜひクリックしてご覧ください。 以下は年表を見る際の補足情報となります。 年表のテンプレート完成品にはその痕跡を残していないのですが、年表作成にはExcelの関数を利用しています

          20世紀の小説作品年表(ジャンル混合)ができました!

          読書日記~現代小説のブックガイドは貴重:2024/01/24

           今日はリハビリがてら短めの記事を。 現代小説のガイドブック 酒井信『現代文学風土記』というブックガイドが面白かった。風土記と銘打つ通り、日本の小説を作品舞台となった地域別に180冊紹介する、という本だ。  この本では取り上げられている作家が幅広い。村上春樹や吉本ばなな・朝井リョウといった現代のメジャー作家はもちろんのこと、遠野遥や宇佐見りん・乗代雄介といった若手の純文学作家の小説も紹介されている。もちろん、大江健三郎や中上健次・筒井康隆といった大御所の作品もある。  

          読書日記~現代小説のブックガイドは貴重:2024/01/24

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)05

          ▼ 本記事はこちらの続きとなっております。 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)01 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)02 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)03 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)04  最後はミステリ・サスペンス小説から10冊選んでみました。〆は『そして誰もいなくなった』、不朽の名作です。多くは有名作・話題作ばかり並んでいるので説明不要かもしれませんね。(そうなったのは自分

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)05

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)04

          ▼ 本記事はこちらの続きとなっております。 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)01 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)02 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)03  歴史小説・時代小説や伝承・民話に取材したもの、偽史を題材にした小説などから10作品を選んでみました。本記事では、この中でも川本直『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』/マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』を紹介します。  まずは川本直『ジュリアン・

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)04

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)03

          ▼ 本記事はこちらの続きとなっております。 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)01 名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)02  2023年も色んなSF小説を読みました。特にSF御三家(星新一・小松左京・筒井康隆)以外の第一世代作家の小説を読めたのは大きな収穫だったように思います。特に面白かったのは光瀬龍『百億の昼と千億の夜』/広瀬正『マイナス・ゼロ』の2作です。 『百億の昼と千億の夜』を解説するのは難しいですね……。強いて言えば、熱

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)03

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)02

          ▼ 本記事はこちらの続きとなっております。  日本文学の中でも自分が素晴らしいと思う短編~中編小説・エッセイを選んでみました。その中でも、梶井基次郎「檸檬」/小島信夫「小銃」/石沢麻依『貝に続く場所にて』は、読むたびに『こんな文章を書けたら楽しいだろうな』と思わされる小説です。  森敦「月山」は『月山・鳥海山』(文春文庫)に収録されています。月山は山形県にあり、冬が近くなれば雪も積もるような場所です。雪山の描写は美しく、該当箇所を読んではささやかな恍惚感を得るのが私の楽し

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)02

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)01

          ※本記事は、下記の記事のコメンタリー(解説)となっております。 ※100冊すべてを平等に紹介することはできません。ときには、全く触れない本も出てくると思いますが、ご了承ください。  まずは日本人作家の純文学・現代小説から10選。自分は基本的に1925~1935年生まれの作家が描く戦後日本社会の虚無感や挫折感が好きでして、そういう雰囲気をまとった小説を選びました。  三島由紀夫『豊饒の海』というのは、本来は4部作のシリーズ名であって、『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰

          名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)01

          名刺代わりの小説100選・2024年版

          001.豊饒の海/三島由紀夫 002.深い河/遠藤周作 003.邪宗門/高橋和己 004.同時代ゲーム/大江健三郎 005.死霊/埴谷雄高 006.楡家の人びと/北杜夫 007.楽天記/古井由吉 008.告白/町田康 009.ナイルパーチの女子会/柚木麻子 010.学問/山田詠美 011.突囲表演/残雪 012.繁花/金宇澄 013.花のノートルダム/ジャン・ジュネ 014.重力の虹/ピンチョン 015.百年の孤独/ガルシア=マルケス 016.アブサロム、アブサロム!/フォ

          名刺代わりの小説100選・2024年版

          朝井リョウ『正欲』 140字の解像度で本作を語ることは難しい。世間には決して理解されない属性の人々の精神的な摩耗がクリアに描かれていると思う。無自覚に向けられる欲望のまなざしの描写も、薄ら寒さを覚えるほどに巧みだ。喉に小骨が引っかかるような読後感は、著者の目論見通りなのだろう。

          朝井リョウ『正欲』 140字の解像度で本作を語ることは難しい。世間には決して理解されない属性の人々の精神的な摩耗がクリアに描かれていると思う。無自覚に向けられる欲望のまなざしの描写も、薄ら寒さを覚えるほどに巧みだ。喉に小骨が引っかかるような読後感は、著者の目論見通りなのだろう。

          読了ツイート集:2023年5月

          ※必ずしもリアルタイムで読んでいるわけではありません。悪しからず。 1~1001.村上春樹『街とその不確かな壁』 今作が最後の長編小説になるかもしれない、という著者の晩年に対する覚悟をひそかに感じた作品だった。中期作品のファンタジックな世界観が帰ってきたことに興奮を覚えた。それと同時に、村上春樹の「老い」と「継承」という新境地も見えてきた。 02.小島信夫『アメリカン・スクール』 アメリカに対するコンプレックスをあまり持たないので、「アメリカン・スクール」で描かれるユ

          読了ツイート集:2023年5月