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カウリスマキ版のTOKYOラブストーリー的なやつ「枯葉」

ハズレの少ないカウリスマキの中でも、すこし難癖のつく作品になってしまっているように思われた。

今作、過去作ではあんなに朴訥として喋らなかったのに人物が、結構ペラペラ喋ります。しかも朴訥とぺらぺら喋るんだよね(作内でもお前の悪いとこは喋りすぎなところだというセリフもあった)。

それに伴って、セリフの中の固有名詞の出し方がわざとらしい部分が散見され、興が削がれる感じがする。解雇を雇用主から通告された時に女性が法律の固有名詞?を持ち出すが、わざとらしすぎないだろうか。その後の同僚のやりとりも(やってやったぜみたいなハイタッチ的なやつ)なんだかわざとらしい。

映画館から出てくる時にホラー映画をみてブレッソンに似てるとモブが言うのもなんだか変だ。こんなホラー映画見にきてる怪しい風体の男がブレッソンを知ってるのだろうか(フィンランドではそうなの?)。

カウリスマキ特有の平板なセリフの演出と、女性の心の動き、犬の動作や事故の昏睡からの復活、といったカウリスマキにしては珍しい偶発的な現象(とわかってしまうくらいにわかりやすく作為的)との釣り合いが取れておらず、なんともチグハグな印象。

男の事故もあまりにも突然であり、それがまたわざとらしい(笑)不器用か!?物語展開のための事故なのが透けて見えてしまう。

監督は変化を求めていると思われるので
過渡期的な作品といえるのかもしれないが、作品単体で観ると問題が多い。

古いハリウッドのラブストーリーみたいな音楽が突然流れるのもなんだか白ける。内面のムードと外面が折り合ってない。

Perfect Daysと同じく、働く人の物語となっているが、最初から嘘ばかりのPerfect Daysのほうが、労働者のリアルを追求する枯葉よりも、内面のリアルさを克明に描けている点、映画というのは一筋縄ではないんだなと実感する。

あんなに大怪我して仕事は大丈夫なのか、こんなに労働者が虐げられてヤバい国で保障はどうなってるのか気になってしまい、ロマンチックな内容だがそれどころではない気がしてしまう。

というかむしろ社会保障を受けられるから、俺たちは幸せというラストなのか?それもなんだか白けてしまうんだが(笑)それを考えると、もしかしたら母国フィンランドの国民にむけた等身大の(笑)ラブストーリーと言えるのではないだろうか。わたしはフィンランド人ではないので、彼らの生きる社会の肌感覚がわからんし、わかりえるような演出でもなかったので、如何ともし難い。

カウリスマキが日本でテレビドラマを作ったらこんな感じになるかも、という作品だった。なんとも不思議な感じ。ストーリーと監督の資質が噛み合わないのか?

そもそも彼女は彼をどうして好きになったんだっけ?気まずい店で気があったから、にしてはなあ。運命の出会い!みたいな音楽が大袈裟すぎないか。カウリスマキってそんな監督でしたっけ。メロドラマみたい。いや、少女漫画か?この映画、フィンランドで国民の20%が観てるくらい大ヒットしてるらしい。なるほどね。東京ラブストーリーみたい、という感想もあながち外れてないみたい(笑)東京ラブストーリーは好きだけど。

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