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お母さんに会いたい「君たちはどう生きるか」

第二次大戦中の日本で、疎開した田舎で少年に起こる怪異。近年の宮崎駿作品の中で一番よかったと思います。本物の母と、双子の?妹の義母、そして性行為をする前の実母の少女時代に出会うという(笑)いろんな種類のお母さんが出てくるので、宮崎駿は自分が作った作品内でお母さんに会いたかったのだと思った。はっきりいうて変態だなあ、と思いながらも、母を亡くした自分は強く共感したし、男はどこまでも母命!みたいなところがあるので。それにしても、処女作ですか?ってくらい荒々しくプリティブな初期衝動が感じられて、私はとても好きでした。ふだんわれわれに害を及ばさない、セキセイインコやアオサギが、別の世界では凶悪な生き物なのがなんともいえずおかしみがあった。人の魂を食うでかいペリカンは戦闘機の暗喩だろうか。自然が人間社会を超越し支配するという世界観はニューエイジ的なので、海外で人気があるのも納得した。また、女性の描き方がとても生々しく(義母に出産前に強く拒絶される)こんな宮崎駿は初めてだと思った。大叔父から直人くんへのお言葉はまるで監督自身の若者たち(主にクリエーターでしょう)への遺言のようでしたが、最後彼は自分が魔法で作り出した世界に埋もれてしまうのも、夢半ばという感じでまだ満足してねえぞ俺は!という意気込み?怨念?を感じてよかった。勢いで作ってる感じもあり、まとまりがないといわれるのもわかる。国内評価が低いのも、ニューエイジ的なアート映画だから仕方がないのかもしれない。しかし、海外と比して日本国内でのこの映画へのあまりの酷評の多さは、日本人はもう映画そのものを吟味し鑑賞することができないのかもしれないな、という思いを強くした。自身の観察力の衰えを作品のせいにしてはならない。最後のスタッフロールは宮崎駿の手書きですか?なんか念がこもってますよね。。果たし状のような映画である。まあ宮崎先生はお母さんに会いたいだけだと思うんですけどね。

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