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番外公演Vol.1『絶触』

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真情あふるる軽薄さのために(番外公演Vol.1『絶触』に向けて)

真情あふるる軽薄さのために(番外公演Vol.1『絶触』に向けて)

 いつも人間の条件の活動を気にかけてくださり、ありがとうございます。主宰のZRです。このnoteでお伝えしたいのは「次回公演では作り方を変えてみる」ということです。具体的には、「稽古開始時点であえて脚本を用意しない。その代わりに音楽のプレイリストから劇を作り始めてみる」ということです。このような作り方を取るのは演劇というもの、そして演技というものについて私が以下のように考えるからです。少し長めの文

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生まれつき体のない子どもたちについて:人間の条件『絶触』評(書き手:植村朔也)

生まれつき体のない子どもたちについて:人間の条件『絶触』評(書き手:植村朔也)

 舞台奥のスクリーンで、どこかのカップルがスマホで撮影したのだろう、プライベートな印象の、愛らしく緊張感のない映像が流れ始める。些細な生活のひとこまを間断なく映し続けるそれを、どのように観ればよいのかはわからない。愛しいと思えばいいのか。といってもその困惑は、他の家庭のホームビデオを見るときの、その受容者が持っていてしかるべき親密さから疎外されてある、あの隔絶の感情ばかりによるのではない。
 この

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ビニールシートに促される観劇態度:人間の条件『絶触』評(書き手:岩下拓海)

ビニールシートに促される観劇態度:人間の条件『絶触』評(書き手:岩下拓海)

人間の条件番外公演Vol.1「絶触」を拝見した。

滑り落ちそうな傾きの階段を気をつけて20数段降ると、暗くてジメジメした場所に辿り着く。その地下劇場は、地上の光と音から隔絶された場所にあって、ほの明るい照明が照らすのみだ。受付で靴を脱ぐよう指示され、涼しい足で席に座る。

「絶触」は、人間の条件の番外公演として位置づけられた公演で、恋人を失った男が黄泉の国まで追いかけて彼女に会いに行くという物語

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『絶触』を見て(書き手:緒方優紀乃)

『絶触』を見て(書き手:緒方優紀乃)

 今回の人間の条件は本番前にtwitterで恋人からみた女の短い映像を配信していた。個人的な話だが、私はあの作品を見て、とても不安な気持ちで劇場に向かっていた。あの映像に映る、女を愛おしいと思う主人公の目線があまりに苛烈に私に映ったためだ。そこに表現されている男にとっての女との思い出の価値の大きさだったり、それで人の胸を痛くさせたりするのは、あの映像の本当に素晴らしいところだと思う。だから、以下は

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