【読書感想文】 基礎から学ぶ認知心理学

きっかけ

UXは定義上とユーザーの感情や行動、嗜好を含む。

つまり、人間の心に関係している。

UXデザインをしていく上で、人間についてもっと知りたい、知る必要があると思い自分自身に課したいくつかの学問分野がある。

その一つが心理学であり、さらにその一つが認知心理学である。

ある個人が見たり聞いたりしたものに対して、どう思いどういう行動をとるのか、それが学問として究められているなんて本当にありがたい世界だ。

この本は網羅的に描かれていると思うので、そこまで内容としてはヘヴィではないところが良かった。


気づき

この本を通して一貫して感じたことは、
普段はうまく説明できない人間行動 のあるあるの存在を実験によって明らかにしたのが認知心理学なのではないか、ということ。

例えば妥協効果

つまり、評価が中間のものが選ばれやすい、ということだ。

2択であれば、それぞれ悩んで理由をつけて選択しがちだが、3択となればその中間が選ばれる確率が高い傾向にある。

つまり、人間は好みや論理的に考えて行った選択だと思っていても、実はそれは妥協効果により選ばされている可能性がある、ということだ。

ビジネスの立場でも消費者の立場だったとしても、これは知っておいて損はないと思う。


あとは、環境的文脈依存効果

これは学習環境とテスト環境が一致すると成績がよくなる、ということである。

要は、本番と同じ環境の中で練習した方が良い、ということになる。

プレゼンでもテスト勉強でもバンドのリハーサルでも本番と同じ状況を作った方がよい。

確かに言われてみればその方が良さそうだよね、と分かるのだが、誰かに説明しようとした時にうまく伝えられないことがあると思う。

そういったことに気づいて、仮説を持ち、検証を行った認知心理学者に敬意を示すとともに感謝したい。


また、言語隠蔽効果も中々おもしろい。

例えていうと、選択を迫られたとき人間は理由を見つけられやすい方を選ぶ、ということである。

具体的には、

・平均的な親

・収入は高く、社交的で、子供と親密、出張が多い、軽微な健康問題

の2者から「どちらの親権を認めるか」と聞くと、後者の割合が多く
「どちらに親権を与えないか」と聞くと、それも後者の割合が多くなる。

つまり、論理的に矛盾しているような結果がでる。

これを説明するのが言語隠蔽効果で、人間は自分や説明しやすい理由がある方を選びがちであることを実証した。


誰かに提案するとき恣意的に使うこともできるが、逆に問いを投げかけられているときは、しっかり問い自体を疑った方が良いとも言える。


人間は合理や論理的正しさだけで考えるわけではないし、なんなら正しくないとわかっていても必ずしもそうできるとも限らない。



やること

合理や論理はあくまで道具的なものなので、全ての人間が等しくうまく使いこなせているわけではない。

そのことを念頭に入れて、コミュニケーションをとることは必要だと思う。

もし、論理的にうまく説明できない人間の思考・行動があれば、それは心理学で研究されているかもしれない。

その違和感を大事にして、人間をそのまま捉えることで初めて Human Centerd Design の入り口に立てるのではないかと思った。

問い自体を疑って逆のニュアンスで捉えることで、自分にとって後悔のない選択をしたい。

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