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日本橋に謎のビルを持つ男。(実は借りてる)-➂ビルに恋する5秒前編-

日本橋に謎のビルを持つ男。(実は借りてる)
a.k.a
TRAVELING ELEPHANT株式会社代表
梁 剛三 (りょう こうぞう) でございます。

今回でなんと第3弾で、このシリーズのラストとなるはず! (第1弾第2弾はコチラ)

ニューヨークでローカルベニューの魅力に出逢い、Airbnbを通じてストーリーファーストの内装デザインを学んだ僕が、今日本橋で一風変わったコンセプトビルディングのTHE A.I.R BUILDINGを始めるようになったきっかけを、この第3弾ではお話しさせて頂ければと思っております。

Dear,New York

ニューヨークでの刺激的だけど不安定な日常を捨て日本に戻ると決めたのは、二人目の子供が産まれたのがキッカケでした。

だってニューヨークで子供二人育てるって、そりゃもう大変なもんでっせ!

家賃高杉、駅にエレベーターはない、夜中にネズミ先輩の声が聞こえる、クソったれ大家マリオとの毎日の壮絶なバトル、中華料理店でチップ置き忘れて追いかけられる、夜中に鍵を忘れて締め出された時の絶望感…。

皆さんあんな街住むもんやないでっせ!

...まあ、おススメはするけど!

僕には家族を抱えてチャレンジャーとしてニューヨークで生き残る勇気も根性もありませんでしたが、本当に楽しくて、カルチャーの全てが体験できて、言うなれば大人が青春できる場所。矛盾してるけど出来ることなら、もう一度死ぬまでに住みたいなと思ってしまいます。(大家だけはマリオじゃないアパートに住ませて)

そんなこんなで、30代半ばで日本に帰って人生の再出発というコレはこれでスーパーハードモードに突入するオッサンが、またここに1人生まれたとさ。

1人旅×音楽がコンセプトのホステル

そうそう、日本に帰ったらそれをやろうと思ってたんですよ。

ストーリーのある部屋を作ったり、お茶屋さんリノベーションしてみたり、僕の場所作りへの想いは帰国する頃には妄想マックスハイテンション。

古いビルを借りて、ホステルをやるんだ。一階のカフェにはバリスタ兼プレイリスターがいて、かけ心地の良くて高音質なイヤフォンと、出かけていく街のイメージにあったプレイリストを渡すのさ。存分に街を楽しんで帰ってきた頃には、ホステルの地下から聞こえてくるギリギリまでミュートされたスネアドラムの音にプレシジョンベースのいなたいリフ。階段を降りれば、パーティの始まり。ベイベベイベベイベー、こっちへおいでよ!ダンシンオールザナイト。クモン、サキセホォン!全て忘れさせておくれMr.オクレ!!

あ...すみません、37歳、BMI27の小デブのおっさんが取り乱してしまいました...。お見苦しいところをお見せ致しました。謹んでお詫び申し上げます。

今でも語り出せば取り乱してまうほど、僕にとってはワクワクする構想なんですよね。

とはいえ日本に帰ってきたまだそんなに時間もたってないから、じっくり体制を整えながら3年以内には実現したいなあと考えていたのですが…運命とはこちらの準備とか全く無視してやって来やがるもんですね。

12月の晴れた朝に100%のビルに出会うことについて

今でも覚えてるんですが、世田谷の代沢にある木造アパートで単身赴任(?)していたとある夜、タマゴサンド界のキング、セブンイレブンのタマゴサンドを23時くらいにパクついていた時でした。

仲良くさせてもらってて、音楽ホステルのアイデアを共有していたオシャレ不動産屋S女史からショートメールが。

「梁さん、音楽ホテルにこの物件どうですか?日本橋なのでイメージと合うかわかりませんが」というシンプルなメッセージと共に数枚の写真が。

え、ウソ...。やだ...。好き

はっきり言ってこの写真と聞いていた条件だけで半分以上借りる事を決めていました。ちなみにこの時点で僕は日本橋に足を踏み入れた事すらなかったんですが、速攻メッセージを返信し12時間後には現地で100%借りる事を決めていました。

実際現地で見ると、これが写真以上に愛おしかったんですねぇ。古風なとこあるけど、それも魅力。身体(構造)の芯はとってもしっかりしていて、友達(お客様)いっぱい連れて来ても受け入れてくれそうな度量の大きさ。大きなビル群の中に凛とそびえ立つ彼女(ビル)に、気がつくと僕の心は奪われていました。

僕の反応を見ていたS女史はさぞかしニヤニヤしていたでしょう。これで決まりだと。コイツは借りるぞと。イージーだと。(まさかここからがオーナーさんとの8ヶ月に渡る交渉の始まりだとは知らずに…うふふ。本当に諦めずに頑張ってくれてありがとうございました。)

超えてくる物件のススメ

今では僕自身も不動産仲介業をしているので分かるんですが、事業用物件って雷に打たれたみたいに惚れ込んじゃう物件に出会う事ってあるんですよね。

普通は希望の条件が全て満たされる事が最良だと考えて探し始めるんですが、その中でふと

この物件は自分の思い描いていた理想を超えさせてくれるかもしれない。

そんな風に感じる物件への出会いっていうのがごく稀にあるんですよね。

店舗を始めようなんていう人は大概こだわりと自信の塊です。

俺はこういうかっこいいお店を作るんだ!」っていう理想がある人が、

この物件は俺のちっぽけなアイデアなんか遥かに凌駕するポテンシャルがある
そんな風に思うって相当でしょ?

僕にとってこのビルは正にそうでした。
日本橋なんて全然知らなかったし、そもそも結局ホステルやってないし。

ただただ目の前にある大きな可能性に純粋に恋に落ちたとしか言いようがない。

僕たちが不動産をお客様に提案する時も、良くヒアリングし、本当に譲れない事は何なのかだけをおさえたら、元々考えていたのとは違った角度からの提案も入れるようにしています。

割合にするとどうですかねぇ。自分の条件とは違うけど魅力的な物件に出会った時に、それを最終的に選ぶ人は何となくの肌感覚で1割くらいかなと思います。なのでもしかするとトリッキーな提案をする事はビジネスとしてはあまり効率的な事ではないかもしれないんですが、うまくハマった時のお客さんに新しいワクワク感を持ってもらえた時の嬉しさが忘れられず、非効率でもアレコレお節介で提案しちゃったりすんですよね。

結局調べていくとこの物件でホステルをやるのは旅館業法的にかなり無理がある事が判明。

いつもの僕ならその時点で諦めちゃうと思うんですが、このビルだけはどうしても自分が生まれ変わらせなければ行けないというある種の強迫観念にも近い想いが捨てきれなかったんです。

飲食店経営への不安

そこからはかなり頭を悩ませました。どうすればちゃんとお金を回していきながら、音楽ホステル案くらいワクワクする事が、このビルで出来るだろう。シェアオフィスにして他の人と共同で借りようか。儲かりそうな飲食ビジネスでもやってみようか。バカな事から現実的なアイデアまでかなり幅広く考えました。

考えれば考えるほど、初めにビルを借りて音楽ホステルをやろうと考えていた時の熱い想いが、少しずつ現実という貧血気味の世界に飲み込まれ、どんどんその温度が下がってくのが分かりました。

最後には「カフェとか自分でやっても、飲食のプロでもないし、そもそも飲食店をやりたかったわけじゃないし…自分に出来るわけない。殆どが一年も持たないなんて聞くし。やはりビルを借りるのはやめておこう」と、ビル自体を借りる事を諦める寸前まで行きました。

今考えると「お店を持つ」っていうことが自分の中でとても大きな事だったし、自分のまわりを見渡せばお店=飲食店の方ばかりだったので、自分もその人達が戦っているバトルフィールドに丸腰で飛び込むんだという不安感に視野を狭められていたんだと思います。

やっぱベニューでしょ

そんな僕にビルを借りる勇気を与えてくれたのは、まだ始めてもいない飲食店経営について相談していたニューヨークでフラフラ一緒に遊んでいて、一足先に飲食店経営で結構大きな成功をしていた友人のこんな言葉でした。

「てか梁くんて、飲食やりたいんすか?もっと空間を売るような事がしたいんじゃなかったんですか?」

...

...!

…ホンマや!(口癖)

日本橋のビルを借りる事が目的になって、それを使ってどう自分の価値観を社会に共有出来るか、もっと単純に言えば、どうあのビルで楽しむかという、僕自身が本当にやりたかった事を全く考慮しないアイデアしか出してなかった!

そんなちょっと客観的になれればすぐにわかるような事も分からないくらい、お金に縛られた発想に囚われていたのでした。

いや、言うまでもなくお金はめちゃくちゃ大事です!

ここで本当に自分のやりたい事を追求するようになったせいで、むしろ今でも経営はカツカツですわ!(そりゃZOZO TOWN前澤さんのお年玉、リツイートしましたよ!!)

でも人間て本当に経済合理性第一では動けないもんだなと実感しました。おそらくビルを使って飲食で儲けられるアイデアを偉い人から教えてもらったとしても、何だかんだ理由つけてビルを借りていなかったんじゃないかと思います。

そうや、ワイはベニューをやりたかったんや。あの素敵な大人たちが集まって文化的交差点とも言える、あの空間をや!」

こんなんとか…

はたまたこんなんとか…

アーティストとお客さんの垣根が低い、ちょっと飲みに来たついでにライブミュージックやアートがあって、コミュニティが自然発生的に生まれていく場所。

今回はホステル出来なそうだけど、そこに入れるはずだったコンテンツまで諦める事はないんだと。

ふう、あぶないあぶない。

コストと言う名の悪魔に侵食されて、ビル一棟でたこ焼き屋でも始めてしまうとこやったで!(粉もんは儲かるって聞いたことあったし…)

その日からまたビルに向き合う姿勢を変えて、もう一度どんな空間にしたいのかをじっくりと考えるようになり、Artist in Residence という今のTHE A.I.R BUILDINGの骨格となるアイデアにたどり着いたのでした。

経営者でもなくアーティストでもなく、何者でもない自分が、唯一楽しんで出来る場所作りを通して出来る事。それはアーティストやブランド等、新しい価値観を発信してる主体を取り込んで、一緒に面白がりながら共犯になっていく事なんではないか。

僕は自分のお店を持つ。

でもそれは何屋さんでもなく、何屋さんにでもなれる箱。その「何か」を自分が信じた他人と作り上げていく。作っては壊す。また新しい変化が訪れて、それを受け入れる。

60年の歴史を吸い込んだこのビルに流動性という形容詞を染み込ませるのは大変な事のような気がするけど、死ぬまでこのビルとフレッシュな関係でいられるかもしれない。それはとてつもなくステキな事だろう。

どうやって収益を生むのか、人に何て伝えればいいのか。全く何も分からないまま、大きな不安と小さな確信を持って、僕は走り出す事を決めたのでした。

そう決心したちょうどすぐ後に、大家さんから貸してもいいという了承を頂きました。

よし、もう逃げられないところに来た…。

アーティストが棲みついたビル

人から褒められる能力なんて何1つない僕に出来ることといえば…。

スラムダンクしかない!!ギラッ

違うよ、全然違うよ。

ストーリーしかない!!!

正解。

こうして僕は、一目惚れしたビルが自分に語りかけてくれるストーリーを、文章におこしてTHE A.I.R BUILDINGを出発させました。

アーティストが棲みついたビル

これまた男のロマン臭が全開のテーマでして、その内容と言うのが...

と続けたいのですが本当すみません。ちょっと今回特に濃い汁出過ぎたので、次回第4話にて完結とさせてください! (まったく俺と言うやつはオシャベリが過ぎるぜ)

今回で最後っていってたのに…もうあかんやめます!って垂れ幕掲げて20年続いた。大阪のあの靴屋みたいなことしてすみません。


でもせっかくここまで読んでくれたわけだし、次回までもう一度だけお付き合い下さい!

ほな!

THE A.I.R BUILDING
WEB https://theairbuilding.com
Instagram https://www.instagram.com/theairbuildingFB https://www.facebook.com/theairbuilding

【場所】東京都中央区日本橋本町3-2-8 THE A.I.R BUILDING
【アクセス】銀座線「三越前駅」A9,A10出口から徒歩3分 / 総武線「新日本橋駅」6番出口から徒歩1分山手線「神田駅」東口から徒歩7分/日比谷線「小伝馬町駅」から徒歩7分 【営業時間】月ー金 11:00-23:00  土日祝 11:00-18:00

日本橋にある築60年のオフィスビルを、「Gilles(ジャイルス)というNY出身の架空のジャズミュージシャンが1970年代に住んでいた。」というストーリーを元にリノベーション。各フロアは特定の機能を持ちつつ、シーンに応じて様々な用途に変化する流動性を持つ。                B1 Music lab 1F Cafe/Bar 2F Artist Residence 3F Share Office 4F REAL ESTATE 5F Rooftop




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