人は初期設定がイチバンだと思い込んでしまう
僕たちは日々、さまざまな選択を迫られています。どの服を着るか、何を食べるか、どの道を通って職場に行くか。
しかし、意外にも、私たちの選択は自分で決めたと思っていても、実は「デフォルト効果」によって大きく影響を受けているのです。
「デフォルト効果」とは、初期設定が人の意思決定に与える影響のこと。
例えば、新しいスマートフォンを手に入れた時、設定を変更するのは面倒だからとそのまま使い続けることが多いですよね。
これがデフォルト効果の一例です。この心理的傾向は、私たちが意識していないところで、日常のあらゆる選択に影響を及ぼしています。
この効果の強力さを示す興味深い事例があります。それは、ドイツとフランスの臓器提供希望者の割合の違いです。
2000年頃のデータによると、ドイツでは臓器提供希望者の割合が12%に対して、フランスでは89.9%という驚異的な数字が出ています。
この差は、臓器提供に対する国民の意識の違いから来ているのではなく、臓器提供希望カードのデフォルト設定の違いによるものでした。
ドイツでは「臓器を提供しても良い場合はチェックしてください」とあり、フランスでは「臓器を提供したくない場合はチェックしてください」と書かれていたのです。
つまり、フランスではデフォルトで「臓器提供する」とされていたため、多くの人がそのまま提供者になっていたわけです。
ビジネスの世界でも、このデフォルト効果は巧みに利用されています。
例えば、オンラインショッピングをする際、購入後のアンケートで「ニュースレターを希望しない方はチェックを外してください」というオプションがあると、多くの人はそのままチェックを入れた状態で進むため、ニュースレターの購読者数が増えます。
逆に、「ニュースレターを希望する方はチェックを付けてください」とすると、購読者数は減少する傾向にあります。
このように、初期設定を変更することなく、人々をある方向に導くことができるのです。
しかし、この力は責任を伴います。企業が提供するサービスや商品において、利益を追求するだけでなく、顧客にとって本当に有益な選択肢を提供することが重要です。
デフォルト効果を利用して顧客を誘導する際には、その選択が顧客にとって最善かどうかを常に考えるべきです。企業の良心が問われる瞬間なのです。
デフォルト効果は、私たちの意思決定に大きな影響を与える強力なツールです。
しかし、それを利用する際には、倫理的な観点を忘れずに、顧客の利益を最優先に考えることが求められます。
僕たちは、毎日の選択を通じて、この効果の影響を受けながらも、より良い決断を下すために、意識的な努力をする必要があるのです。
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