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意図せずに食い倒れてしまう、それが大阪

2月12日、月曜日。
新幹線で新大阪から東京に戻る道中に、この3日間の食い倒れ日誌を忘れないうちに急ぎ記すことにする。

三連休初日の土曜日は、友人の家へ、生まれて数ヶ月の赤ん坊に会いに行く予定があった。お昼前に新大阪に到着し、ひとまず目先にあった551に向かう。チルド専門店とのことで、肉まんと焼売を購入。他に何を買おうかとうろうろしていたら、りくろーおじさんの店を発見。夫はしきりに「りくおじのチーズケーキ」と口にしていたが、行列がすごかったことと、手土産にバームクーヘンを買ってきていたので、帰りにお土産で買って帰ろうねと諭し、見送った。改札を出て引き続きうろうろしていると、またしても551に遭遇した。温かい料理をテイクアウトできる551ではないか。エビチリ、八宝菜、そしてチャーハンを迷わず購入し、知人の家へと向かった。道中で再びりくろーおじさんの店を目にし「りくおじ」と口にする夫に対し、申し訳なさで少々良心が痛んだが、先を急いだ。

2件目の551での注文時、20分かかりますけど良いですか、と店員に聞かれた。時間に余裕があったので承諾し、周りをぶらぶらしていたが、人混みプラス歩き疲れで少々ダウンした夫が、商店街の通りで歩みを止めてしまった。特にベンチがあるわけでもないので、壁にもたれかかって正気を失っている。早くテイクアウトして友人の家に向かわねばと思い、時間を確認すると注文してからまだ10分しかたっていない。
しかし、「中華料理は秒で提供されるもの」という認識を持っているため、果敢に551に戻ると、「○番のお客様〜」と店員さんが声を出しているではないか。それは私たちの番号ではなかったが、早く作ってくれると嬉しいな、と圧をかける意味で自分の番号を告げると、店員は奥に下がり我々の商品を持ってきたのだ。なんだ、とっくにできていたのか。つまり予想時間の1/2の時間でできていたのではないか。これが大阪流期待値コントロールか。早速大阪の洗礼を浴びた。

その後、友人の赤ん坊と初対面を交わしながら、551を堪能する時間を過ごした。夫は「かに道楽からのザビエル」と言って、両手を交差させ、5本の指をゆらゆらさせながら、赤ん坊の顔の前と自分の胸の前で両手を前後に動かすという動作を、赤ん坊に披露していた。赤ん坊は虚無、友人夫婦は失笑していた。私はというと爆笑していた。友人夫婦からはゲラだとツッコミを受けた。自覚はあまりなかったがそうなのかもしれない。

その夜は梅田でお好み焼きを食べた。商店街にある「美舟」という老舗で、ドラマでもとりあげられたことのある場所らしい。満席だったので、3番目で並んで待っていると、コワモテの店主のお爺さんが中から出てきて、結構待つよ、それでも良いなら並んで、と告げてきた。確かに、開店したのは18:00、我々が到着したのは18:30。そりゃ時間かかるよなと思って待っていると、あれよあれよとお客さんが出てきて、19:00前には入店できた。これもまた期待値コントロールか。嬉しいコントロールではあるが、してやられた、という気持ちになった。

2日目の夜は狂気じみた量の鰤しゃぶ鍋を食べた。2人前を頼んだが、あれはほとんど4人前だった。大きなお皿一面に広がる鰤の刺身がやってきて、これだけでもお腹がいっぱいになりそうなのに、大量の牡蠣と白子、さらにサービスで生エビが4本ついてきた。ちなみにデフォルトで鍋には大量の白菜、水菜、木綿豆腐、肉団子、豚肉が入っていた。これに〆でラーメンorうどんorご飯がついてくるという。さすがに海鮮だけでお腹がはち切れそうになったため、〆はお断りした。正直、2人でしたら一人前で十分だと思いますよ、と店員には言って欲しかった。しかしこれが大阪か。
恐ろしいことにこれで1人3500円くらいだった。これだけの量をこの安さで提供しているなんて、店主の近親者に漁業に従事した人がいる且つその近親者を恐喝しているのだとしか思えない。このお店に行くと梯子酒は叶わなくなるが、天下の台所を存分に味わいたい方は是非足を運んでほしい、梅田の「almario」というお店へ。

そんなこんなで迎えた3日目。朝からパンケーキ、ホットサンド、ミックスジュース、ブランチタイムに海老握り五貫。ランチは明治軒という老舗洋食店でオムライスをたいらげ、間髪入れずにクレープ屋さんに足を運ぶ。3時のおやつにりくろーおじさんの店、本店にてホールのチーズケーキを注文。流石に少しだけ食べてお持ち帰りにした。想定外に我々夫婦の腹を苦しめたのは、ホットコーヒーだった。ポットで提供されたのだが、1人3杯分は入っていたように思う。夫婦それぞれホットコーヒーを注文したため、これも1人だけ頼むので十分だったよね、と話した。2人とも最後の一杯分を残してしまった。お店を出たらりくろーおじさんがこっちをみて笑っていた。

その後、「わかな」のたこ焼きを食べ、新幹線の中ではテイクアウトしていた寿司を食べて現在に至る。脳の一部が破壊されてしまったのか、大阪に来てからずーっと永遠に何かを口にしていた。なぜなのか、理由を考えようとすると、りくおじの笑みが頭をよぎる。

次はもっと量に注意しながら大阪での最高の食体験をするんだ、と誓いを立てるが、果たしてうまく行くのか。わかったようでまだわかりきることのできない、大阪旅なのであった。




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