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香川県民に白いカレーうどんは受け入れられるのか

初めて武蔵溝の口駅に降り立った、11月19日日曜日。
溝の口。その名前は聞いたことがあるが、一体どんな街なのかは、降り立った後もさっぱりわからない。ただ、東急線と南北線が通るこの街は、人が多く賑いを見せている。なんとなく立川駅に降り立った時の風景を思い出した。

夕方から予定があるので、その前にランチを取ることにした。と言っても14:30である。期せずして、かなり遅めのランチとなった。

初めて降りる駅とはいえ路頭に迷うことはなく、目星をつけていた白いカレーうどんが看板メニューのうどん屋、「路じ」へと真っ先に直行した。

かなり昔に、恵比寿の「初代」というお店で白いカレーうどんを食べたことがある。今も賑わっているのかわからないが、その頃はメディアで取り上げられたこともあり非常に賑わっており、平日夜でも少し並んだ記憶がある。地元香川県を離れて今よりは年数が浅かったこともあり、正直なところ、白いカレーうどんに感動するほどの美味しさを感じなかった。普通のかけうどんに慣れ親しんで育った私にとっては、そもそもカレーうどんが少し邪道に思え、うどんというジャンルに含めてあげることができなかった。普通においしいが、カレーや白いふわふわしたものに埋もれた麺そのものがおいしいかどうか判別つかず、「おいしいと思うけどめっちゃおいしいとも言い難い、一回だけ食べたらいいや」、そんな曖昧な気持ちで店を出た記憶がよみがえる。

それなのに数年の時を経てまたこの白いカレーうどんを食べたいと思うとは。正直なところ、ランチタイムを外してしまったのであまりお店が空いていなかったこと、また、素直にうどんが食べたい気持ちだったこともあり、このお店をセレクトした。

そんなこんなでお店に到着した。駅からは3分ほどで、商店街のようなところに位置している。大通りをしばらくして左に曲がると、砂利が敷き詰められた日本庭園風の小道があり、その奥に木造建築のうどん屋、「路じ」があった。

一名ということもあり、すんなり入店。店内真ん中に大きなテーブルがあり、そこがおひとり様用のカウンター席となっているようだ。
端っこに着席し即座に白いカレーうどんを注文。うどん欲が高まっていたため、嬉々として待つ。

そこで気づいたのが、自分の座った席は、入り口のドアが開け閉めされるごとに冷たい風が入ってくる位置だったようだ。ランチタイム過ぎているというのにちらほらお客が入ってくるので、ドアが開け閉めされる度に寒さを感じ、「席を移動してもいいですか」と店員に伝えようかしまいか、悩んでいた。

とあれこれ悩んでいるうちに白いカレーうどんが到着した。ありとあらゆるメディアで目にしたことのある、白いムースが乗っかったうどん。
まだお水だけおいてある時代なら店員に席移動の申し出もしやすかったのだが、食べ物が届いてしまったので諦めることにした。

まずはスプーンで麺以外の部分を頂く。白い部分はじゃがいものムース。下にさらさらのカレールーというか汁がたんまり入っている。丁寧に二層のまま崩れないようスプーンですくい上げて飲み込む。う、うまいぞこれは。何よりこのムースがただものではない。ただじゃがいもをすりつぶしただけでは到底作り上げることのできない、外食でしか味わうことのない味がした。

次に肝心の麺をいただく。正直過去に恵比寿の「初代」で白いカレーうどんの食べたときのことを思い出し、あまり期待はせずにすすってみた。するとどうだろう、ありゃ、おいしい。ふにゃふにゃ麺では決してなく、わりとコシがある。私の許容範囲内、というかわりと好きなタイプの麺だった。やるじゃないか、路じ。

そんなこんなで食べていると、だんだん体が温まってきて、むしろ暑いくらいに感じ始めていた。気づけばドアの開閉が全く気にならなくなっていた。むしろ開いた時は涼しいなくらいに思い始めていた。ありがとう、白いカレーうどん。

そんなこんなで完食、ほぼ完飲。白いカレーうどんに対するイメージは完全に塗り替えられた。

様々なお店を開拓するのが好きなので、同じお店に何度も足を運んだり、お店の看板メニューを何度も繰り返し食べるタイプではないのだが、今回自分のそういったパターンをあえて崩し、数年の時を経てお店は違えど同じメニューを食したことは、自分にとって新鮮な経験であった。
新しいお店や食べ物を開拓したりするのは楽しいことだが、前に一度食べたことがある、といった食べ物と再度対峙することで、忘れていた過去を思い出したり、郷愁にふけることができる、と気づいた。

初めましての溝の口駅で、初めましてではない食との遭遇を通して気づきを得る、そんな一日であった。


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