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仲正昌樹『<<日本の思想>>講義』についてのメモ④―読書会のメモ

 先日の読書会で丸山眞男『日本の思想』(岩波新書、1961年)に関して、参加者の方から興味深い指摘があったので紹介しておきたい。この本の第4章は「「である」ことと「する」ということ」であり、この中で丸山は「「する」こと」の論理が「「である」こと」が重要な領域に過剰に浸透していくことを懸念している。たとえば、このような領域は大学や学問の領域である。読書会の際に、この懸念は当時の左翼勢力の動向も念頭に置いていたのではないかという指摘があり、なるほどと思った。『日本の思想』のもとになった文章や講演は1950年代の後半のものであるが、この時期の左翼勢力は共産党に与しない「新左翼」が登場して自らの主張を訴えるために直接行動を取ることが多くなっていた。これは「「する」こと」(直接行動)の論理が過剰になり、「「である」こと」(理論や思想)が軽視されるようになってきたとも言い換えることができるだろう。このことを考慮すると、丸山の懸念は当時の左翼勢力の動きを念頭に置いたもののようにも思われる。以下の記事で紹介したように、丸山は理論と現実の相互の関係性を重視していたので、この関係性が崩れることがよくないと考えていたのだろう。


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