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【第二十四回】何者にもなれなかった50男の物語

ある日晩飯を食っていた時
地元のチンピラとちょっと
揉めたことがあった

なんかウチらがうるさかった
とかそんな理由だったと思う

そのチンピラはぼくに30万
払えと言ってきた

まだ若かったぼくは頭に血が
上り二人は表に出た

頭かち割ろうと思いビール瓶を
持ってやる気満々だった

チンピラは電話しだした

「アニキ」
「トラブルです」

みたいなことを言っていた

ぼくはちょうどいいので替われと
アニキと呼ばれる人と話した

じつはそのアニキ
ぼくのビジネス仲間だった

彼は「なにやってんの~」
「危ないから気を付けて~」と言う

いやいや

なにやってんのと言いたいのは
こっちだよと一気に力が抜けた

その頃のぼくは慢心していた

まだ32歳位

若いし金もあった

自分のような能無しでも自営で
稼げるのにぼくより有能な人が
なんでサラリーマンなのか?

彼らが独立したら絶対に
ぼくより稼げるのに

そんな事をいつも言ってた

口から出まかせでなく心から
ぼくはそう思っていた

でもぼくは運が良かった
だけだったのだろう

そんな生活が3年ほど続き
ぼくは現状に飽きていた

社長は決算書を見る力が必要
だけどぼくが見れただろうか?

実際は全て会計士に丸投げ

数字なんて全くわからない

ということは会社の状態も
わからないから舵も切れない

たまたま資金が潤沢だったので
数字を見なくても会社は動いた

ただそれだけの話

ぼくは自分を過信していた

中国で生産した商品はどんどん
数が増えていった

それに合わせて仕入れ額も膨らむ

商品を輸入するのに金が足りない

台湾時代の友人の父が経営する
会社に輸入枠を借りていた

定期的に手形で決済していて
ぼくの会社はうまく回ってた

景気の良くなったウチをみて
社長はこう言ってきた

「輸入枠を現金決済してくれ」

ぼくは仕入れのバランスが崩れ
事業が回らなくなると訴えた

ところが現金決済しろの一点張り

よく観るドラマのようにガタガタ
震え「怖いです~」と言ったが
わざとらしいと返された

社長室に軟禁されたぼくは
そのまま席を立ち部屋を出た

追いかけてくると思ったが
彼らは来なかった

お互い平行線のままぼくは
取引先に相談した

取引先の社長は一言

「そんなんバックレちゃえ」

仕入れ金は俺が払うから心配
するなと言ってきた

そしてぼくは架空売上をたて
知り合いに全額送金して会社の
資金を空っぽにした

焦ったのは銀行だ

「社長!」
「入金が無いと不渡りが出ます」

そのころぼくは印旛沼でさぼり
銀行員と電話で話していた

「今一生懸命金策してるから」

結果不渡り2回を意図的に出した

知り合いの弁護士に200万で
自己破産手続きさせたが絶対に
騙されていたのだろう

自己破産で200万はないだろう

大方間に入った奴が中抜きして
バックを貰っていたと思う

あの時の世間知らずな自分には
本当に呆れてものが言えないな

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